少年の夢
アラベルの国を旅するアレイシャ達。
現在は首都のダベラを目指して進む。
今立ち寄っているのは小国の一つバレザル。
首都に近づいているからなのか、自然と活気が増えてきていた。
「ここがバレザルよ」
「小国の規模も少しずつ大きくなってるわね」
「首都が近い証拠ですよ」
「それじゃ適当に見てくるから、留守番よろしくね」
そうして街を散策に出る。
相変わらずの貧富の差はあるが、それでも逞しく人達は生きていた。
「この国は貧富の差があるのに人は活気があるのね」
「アラベル自体そういう国ですからね、運がよければ富豪に拾われますし」
「だから意外とポジティブに生きられると」
「前向きで羨ましいものよね」
すると何やら声が聞こえる。
声がするのは裏路地のようだ。
少し気になるのでその方向へ行ってみる。
そこには長い木の棒で素振りをしている少年がいた。
「やっ!はあっ!」
「木の棒で素振りね、剣術の真似事かしら」
「でも真剣な顔よ」
「そこの少年、少しいいでしょうか」
ヒルデが少年に声をかける。
少年もそれに気づきこっちに振り向く。
「ねーちゃん達なに?俺に何か用?」
「剣術の真似事?」
「真剣にやっていたのでつい」
「筋はいいみたいだけど」
その言葉に少年が目を輝かせる。
「もしかしてねーちゃん騎士なの?」
「一応はね」
「この国で騎士という言葉を聞くとは」
「それよりその様子だと騎士に憧れてでもいるのかしら」
少年は言う、いつか騎士になって立派になるんだと。
そのためにこうして剣の練習をしているらしい。
「ふむ、筋は確かにいいですね、では少し手解きをしましょう」
「あら、セクネスも優しいのね」
「マジ!?よろしくお願いします!師匠!」
「師匠ですか」
セクネスが少年に手取り足取りそれを教える。
教会の騎士であるセクネスも人に教えられるようになったのか。
アレイシャとアナスティアもどこか嬉しそうだ。
セクネスの指導は厳しいが、少年は音を上げずについてくる。
「うん、その筋なら問題はないでしょうね」
「よっしゃ」
「私達は旅の途中だからすぐに行かなきゃならないけど」
「あなたなら立派な騎士になれる気がしますね」
少年はそれでも嬉しそうにしていた。
本物の騎士に指導してもらえた事が何よりも嬉しいのだろう。
「でも騎士になるにしてもどこの国かしら」
「確かに騎士制度のある国は複数と言うかたくさんありますよ」
「それは…今は考え中で」
「焦らなくていいですよね」
その少年はアレイシャ達にしっかりとお礼を言う。
口は少し悪いが礼儀は出来ているようだ。
「意外と礼儀正しいのね」
「母ちゃんが言ってた、騎士になるならきちんと礼儀をよくするんだって」
「お母さんも立派な人じゃない」
「子供なのに大したものねぇ」
少年も子供なのは確かなのか、少し誇らしげだ。
そんな少年を見て夢を見るという事の大切さを再認識する。
「さて、そろそろ行かなきゃ、いつか立派な騎士になるのよ」
「うん!ねーちゃん達も元気でな!」
「それでは参りますか」
「立派になりなさいよ」
そうして少年と別れ路地を出る。
すると時間的に日が落ちる時間になっていた。
今日はこの国で宿を取る事に。
エイルに事情を説明し、今夜はこの国で過ごす事に。
「この国の料理はスパイスの効いたものが多いわよね」
「そうね、肉なんかもスパイスでしっかり味付けされてるし」
「料理とは味覚を刺激するものがその人にとっての美味だという事ですよ」
「ヒルデさんらしいですね」
とはいえヒルデもメイドをしている以上料理にはそれなりに詳しい。
ちなみにヒルデの料理は豪快そのもので、味付けも豪快らしい。
ついでに盛り付けも豪快な所謂男飯だという。
そういう料理が得意なのもヒルデのらしさが感じられる。
「さて、そんじゃ肉肉」
「エロイーズも肉が好きよね」
「アナスティアが言いますか」
「ですよね」
そうして宿に移動して一夜を明かす事に。
明日も次の国を目指して空を飛ぶ。
ダベラまではもう少し。
首都に着いたときこの国の何を見るのかは今は分からない。




