荒廃した世界へ
幼馴染二人を救出したアレイシャ。
そのまま街へと戻る事にした。
賊を捕まえたという事もあり、正面から入る事に成功する。
そうして教会へと戻る。
「戻ったわよ」
「アレイシャ…それに二人も無事で安心したわ…」
「すみません、こちらの落ち度でした」
「あたし達がもっとしっかりしてたら…」
だがシスターはそんな二人を責める事はしなかった。
そのまま薬草を渡し部屋に移動する。
「それで、理由は聞かせてもらえるんですよね?」
「そうよ、行方知れずで殉職扱い、それが突然出てくるとか」
「そうね、あなた達になら話してもいいと思う」
そうして事情を説明する。
その話に二人は信じられないという顔をする。
「そんな…死んで、それで命を吹き込まれたって…」
「証拠に私の心臓の音を確かめたら?」
「…心臓の音がしない…では…本当に…」
その事実は二人にとって重いものだった。
死んだ幼馴染は生きる屍として戻ってきた。
それでも二人はそんなアレイシャを信じる、そして受け入れると決めた。
「本当にいいの?」
「当たり前です、どうであろうと…あなたは私達の幼馴染なんです」
「そうよ、だからあたし達は拒んだりしないわ」
その言葉が嬉しかった。
そして話は今後の予定へと移る。
「私はこのまま世界の今を見て回ろうと思う、危険は承知よ」
「ですが…それは戦場や危険な場所にも行くという…」
「一人でなんて無茶よ、こんなご時世なのに」
それでもアレイシャの決意は堅かった。
そして目的はそれだけではない。
あのはぐれ騎士の言葉、復讐をするのだと決めていたのだ。
「なら…私達も一緒に行きます、幼馴染を危険には晒せません」
「そうね、少なくともあなた一人よりは安全だと思うわ」
「…どんな危険な道だろうとついてくるのね?」
その言葉に二人は強く頷く。
そして二人を連れていく許可をシスター長にもらいにいく。
「そう、なら連れていきなさい、あなたは昔からそういう人だから」
「感謝します」
「あたし達はアレイシャの事を信じる、だから行くのよ」
「それじゃあ私達は早々に行くわ、このご時世、命は大切にね」
そう言って二人と共に教会を出発する。
だが手を握ったシスターはその手の冷たさにアレイシャの事を案じるしかなかった。
「戻りました、シスター長、今出ていった二人と一緒にいたの誰ですか?」
「ああ、エロイーズ、彼女はアレイシャ、あの二人の幼馴染です」
そのエロイーズというシスターはアレイシャという名に興味を持った。
国の内情は知っているようで、殉職したという事も聞いていた。
「あの、少しあの人を追いかけていいですか?」
「気になるの?でもあまり無理だけはしちゃ駄目よ」
シスター長は心配なのだろう。
とはいえそのエロイーズはどこか不吉な感じだ。
シスターをもう一人同行させれば少しは楽になるかもしれない。
そういう考えもありエロイーズに行く事を許可したのだろう。
その許可をもらいエロイーズは二人のあとを追う。
人手の事は承知だが、シスター長はそれでも信じる事にした。
一方のアレイシャ達は街の通りに移動し今後について話す。
「これからどうするの?行くにしても限られるわよ?」
「とりあえずヒルデを探そうと思うの、彼女に話が聞きたくて」
「それはヒルデブルクさんですか?」
ヒルデブルク、それはアレイシャの家の使用人だった女性だ。
アレイシャが一番の信頼を置いていたメイドでもある。
彼女なら何か知っているかもしれない、そう考えた。
「行先とか分かるんですか?」
「それは分からないわ、だから探すんじゃない」
「無茶苦茶言うわね、あなたそんな性格だったかしら」
なんにしても目的はそのヒルデブルクを探す事で決まる。
国内であれば幸い移動に支障はない。
近くの街なども含め国内をまずは探す事で決まる。
そうして三人は街を出てここから一番近い街へと移動する。
だがそこには非情な現実が待ち受ける。
今の世界が戦火の中だという現実はその心を締めつける事となる
そしてそんな三人をエロイーズは追いかける。
現実の理不尽さはここからなのである。