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懐の深さ

次の小国であるマスリアにやってきたアレイシャ達。

首都に近づいているだけあり、人の数なども増えてきた。

先日飛行船をもらったときもそうだが、この国の金持ちは懐が深い。

少しぐらいならお金を騙し取っても怒らないような人達である。


「さて、マスリアよ」

「どうもね、そんじゃ少し見て回りますか」

「すっかり悠々自適ね」

「まあいいんじゃない」


そうして街の散策を開始する。

この国は桁違いの金持ちがいる一方で貧しい者は徹底して貧しい一面もある。


「この国って二面性が強いわよね」

「そうですね、貧しい民はそれこそ底辺の生活です」

「それだけ成功した場合の人生が違うという事なのね」

「私達もそういう過去がありますからね、分からなくはないです」


セクネスとアナスティアもバルディスタでは孤児だった。

それをアレイシャに拾われるまでは生きるだけで精一杯だった。


だからこそ世界に楽園などないという事も理解している。

それでも生きていく事に必死なのだという事も。


「ですが貧しい民にお金を与えるのは愚行ですよ、あれを見てください」

「あれは…貧民と富豪ですか?」

「なんか揉めてるわね」

「何かあったのかしら」


どうやら貧民が富豪相手にぼったくりを仕掛けたらしい。

だがその富豪はそれを笑顔で買い取り、その貧民に言う。


君を豊かには出来ないが、君を働かせる事は出来ると。

この国ではそういった富豪が気に入った貧民を使用人として雇う事もあるらしい。


実際富豪の家で働く使用人は貧民出身の者も多いそうだ。

お金があるからこそ出来る器なのだろう。


「凄いのねぇ」

「あれがこの国の現実なんですよ、豊かだからこその懐の大きさです」

「でもお金を与えないで使用人として雇うのね」

「それだけこの国の富豪は余裕があるという事ですか」


そんな現状を見たセクネスとアナスティアはこの国らしさを感じていた。

孤児院などがあるわけでもなく、働けるのなら富豪に仕える。


当然給金もいいので、正式に雇われる事もあるらしい。

それでも貧民は生まれてしまうのが世の中の皮肉なのだろうか。


「まあいつの世も時代も平等なんてものは幻想という事です」

「だからこそ富の分配って事なのね」

「職を与える、それがその人のためになるから、ね」

「お金を与えても人は働く事は決してない、と」


貧民に現金を与えたところで貧民は堕落するだけである。

それなら農耕などの技術を指導した方がいい。


貧しい国が貧しいままの理由はそこにあるという。

民が働かない事に加え、人口だけは増えていく。


そうした結果貧しい民だけが増えていく。

それが貧困国を貧困のままにしている理由だとヒルデは言う。


「世の中とは貧しさを利用した商売もあるぐらいですからね」

「結局は本人達にその意思がないだけよね」

「ですね、貧しさとはそういう事です」

「悲しいものね、この国は恵まれた方だわ」


とりあえず街の散策を再開する。

街の商店では使用人が屋敷で使う食材の発注などもしていた。


使用人は主に洗濯や料理などの身の回りの世話をする。

富豪もお金はあるものの、独り身の人が不思議と多いのがこの国らしい。


結婚は人生の墓場という事なのだろうか。

お金は腐るほどあるのに、独身の富豪が多い理由なのか。


そんなこの国の一面に人間の醜さも垣間見えた気がした。

束縛されるなら生涯独身でいい、そんな理由なのかもしれない。


「この国のお金持ちは独身貴族が多いんですよね、不思議なものです」

「多分それって金目当てで寄生しようとする女が悪いんじゃない?」

「女性はそういう生き物なのですか?」

「まあそこは国の価値観なんじゃない?」


なんにしてもこの国の富豪の事情だという。

お金はそれこそ死ぬまでに使い切れない金額だ。


それなのに独身の富豪が異様に多い不思議。

やはり世の中愛より金なのだろうか。


「さて、戻るわよ」

「次の国に行かなきゃだしね」


そうして飛行船に戻る。

そのまま次の小国へ向け空に飛び立つ。


首都のダベラまではもう少しかかりそうである。

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