騎士団の今
騎士団長への接触を試みるアレイシャ達。
その日の夜を待ち騎士団長を待ち伏せる。
ヒルデの話では夜に教会で礼拝をしているという。
それを狙い教会を張り込む。
「さて、どうしたものかしら」
「本当にここから出てくるのかしら」
「情報ではそうなっていますが」
「…感づかれないようにね」
そうしてしばらく張り込んでいると人の気配がする。
そこから出てきたのは騎士団長その人だった。
「待って」
「私に何か用…君は…まさか…」
「あなたなら存じているはずですよ、騎士団長閣下、ダルコ殿」
「少しお話があります、お付き合い頂けますか」
それにダルコは素直に従う。
騎士団長たる者、相手を見る目はあるという事か。
「それより、なぜ君が…アレイシャ殿は死んだと…いや、死体が確認されていないか」
「少し事情があるのよ、それより今の騎士団の現状が知りたいの」
「アレイシャ様は騎士団に簡単に戻れるような身分でもないので」
それに対しダルコは周囲を確認する。
人の目や耳がない事を確認した上でその口を開く。
「騎士団は今はなんとか落ち着いている、だがある奴に利用されている、か」
「そのある奴って?」
ダルコの話ではエラヌという男が皇帝に取り入っているらしい。
表向きは亡命者で情報提供と称している。
だがそれならなぜ戦争を止めようとしないのかと不信感を抱いている。
アウグスタからの連絡を密かに受け騎士団も水面下で動いているそうだ。
「私は今は命令に従っておく、だが機を見て一気に行動に出るつもりだ」
「つまり騎士団と軍による内乱?」
「でもこっちも工作員の存在は掴んでる、それを一気にって事かしら」
ダルコも悟られないようにやっているため詳細は言えないそうだ。
だが戦争を引き起こしたのは確実にその敵国の工作員だと確信している。
それはそうとアレイシャの事にも触れてくる。
「それよりもだ、君は三年も死亡扱いでの行方不明、どこに身を潜めていた?」
「それは言えないの、ご免なさい」
ダルコはそれに素直に引き下がる。
「だが君が生きていたというのはとても強いカードになる、言葉はあれだが」
「別にいいのよ、国内の反コレアム派に利用されたって感づいてたから」
「とはいえ問題はその時期ですね、いつになさるつもりですか?」
ダルコの話では近いうちにコレアム軍の指揮官が変わるらしい。
そこからは戦況と判断して動くという。
「だけどそんな簡単にいくの?」
「そうだな、皇帝がどこまでなのか、それ次第だろうな」
「でも皇帝は何も知らないとも思えないわ、それなら戦争なんかするの?」
アナスティアの疑問は国内の情勢を知らないわけがないという事。
知っていた上で戦争に踏み切ったのかという事である。
「私としても疑問は残るんだ、皇帝が簡単に懐柔されるとも思えない」
「やはり知っていて…いえ、もっと何か考えがあっての…」
なんにしてもダルコとアウグスタはすでに結託している。
国内の工作員を一気にあぶり出すのはそう遠くないという。
「そうだ、アウグスタが日が隠れる日にイチョウの森で動きがあるって」
「日が隠れる日にイチョウの森?その日は日食か、寧ろチャンス…か?」
「何かあるのですか?」
ダルコの話ではコレアム軍の指揮官が変わるのがその日らしい。
つまり動くのに最適な日はその日、と考えたのだ。
「アレイシャ殿、君は言われた通りイチョウの森に行け、国内は我々に任せろ」
「何かしらの策が閃いたという事ね」
「では我々はそっちに注力します、そちらは任せていいのですね」
ダルコの考えが確かならその日に確実に動きがある。
最大のチャンスはその日に訪れるという事になるのだろう。
「あまり長話は危険だ、私はそろそろ」
「待って、私が以前いた部隊は今は?」
ダルコはその事は事が片づいたらネグルに聞けばいいとだけ言った。
そうしてダルコは騎士団の宿舎に戻っていった。
なんにしても騎士団と軍、それは水面下で動いている。
アレイシャ達はアウグスタに言われた通り日食の日を待つ。
その日に備えアレイシャ達も出来る限りを尽くそうと決めたのだった。