墓地に隠されしもの
レザースの用事を片付けたアレイシャ達。
そのあとはヒルデに連れられ帝都に向かっていた。
帝都のある場所に行くそうだが、それは教えてくれない。
そうこうしているうちに帝都に到着、ヒルデのあとをついていく。
「ここですね」
「ここは墓地?」
「こんなところに何があるのかしら」
「ですが帝都に共同墓地があるのは知っていました、今は戦時中ですし」
なんにしてもヒルデに連れられそのあとをついていく。
ヒルデに連れてこられたのは墓地の奥にある何かありそうな洞窟だった。
「ここは…」
「共同墓地の奥にこんな場所があったんですね」
「何があるのかしら、少し冷えるんだけど」
「この先ですよ」
その奥には鎖で繋がれた女性がいた。
身なりはそれなりにいいようで、何か違和感を感じる。
「ヒルデさん、また来たんですか」
「ええ、あなたには死なれては困るのでね」
「あの、この人は」
「こんなところに監禁?」
彼女はヒルデが二年前に見つけたらしい。
最初に聞いた話からして何百年とここに鎖で繋がれているとか。
「彼女達になら話しても大丈夫ですよ」
「私は…タナトスなんです、名前は…忘れてしまいました」
「タナトスってあの死神よね?それがなんでこんなとこに鎖で繋がれてるのよ」
「そうね、少なくともお伽噺の存在の死神がなんで?」
ヒルデもそれは分からないという。
だが本人から聞く限り何百年と繋がれているらしく、死神というのも本当なのかと。
「昔の事なんて忘れてしまいました…でも、もう一度外の世界が見たい」
「この鎖を強引に引きちぎってもいいんですが、私一人では手に余るんですよ」
「それで私達を連れてきたの?」
「つっても死神なんて解放して本当に平気なのかしら」
ヒルデの話では死神と言いつつも根は善人のようだと言う。
アレイシャは解放してもいいのではと言うが、エロイーズは慎重になる。
セクネスとアナスティアも確証が持てるまでは解放には慎重になるべきという。
死神という事もあり水も食料もなくとも死ぬ事はない。
だが何百年と繋がれている事もあり衰弱しきっている。
ヒルデが密かに食料などを運んでいたそうだ。
「うーん、なら今は保留にしない?後日結論を出してまた来るとか」
「私は…どうでもいいです、無駄に人を死に至らしめるのは好きではありませんから」
「あたしは好きにすればいいと思うけど、解放してからの処遇の話になるわよ?」
「私もアナスティアと同意見です、処遇の事も考えないといけませんからね」
セクネスとアナスティアの言う処遇。
解放した彼女に行く場所などないだろう。
仲間にしてもいいが人数が増えすぎても目立ってしまう。
今は復讐という目的がある以上大人数にはなれないのだ。
「なら…目的が終わってからで構いません、力を貸せと言えば力を貸します」
「そうね、なら今は保留よ、少し時間はかかるけど、必ず迎えに来るから」
「分かりました、ではお辛いかもしませんが必ず迎えに戻ります」
「ご免なさいね、辛いだろうけど」
彼女はそれでも待っていると言った。
この洞窟は幸い墓地の奥にある人目につかない場所だ。
国も今の現状ではここに来る事もないだろう。
今はアレイシャの目的を果たすのが先。
そうしてアレイシャ達は一旦その洞窟をあとにする。
タナトスだという彼女を自由にするのはそれからである。
「さて、イチョウの森に行く日まではもう少し時間はありますが」
「日食の日よね?今日からだとあと三週間ってところよ」
「今の騎士団の現状が知りたい、私が死んだ事になってからどうなったのか」
「それはいいけどどうやるの?騎士団は軍と同じく帝都には最低限しか残ってないわよ」
今の騎士団の現状を知る方法。
やはり騎士団長に直訴するか?
だが生きていたと知れれば何かと騒ぎになるだろう。
「騒ぎは起こしたくないし…」
「なら夜ですね、夜なら可能かと」
ヒルデの言うように夜ならあるいは。
それもあるので今夜街に出てきたところを狙おうと考える。
騎士団の今を知りたい。
アレイシャはあのときから何が変わったのかを知りたい。
とりあえずは夜を待つ事となるのだった。