魔王に与する失踪者
コレアムが戦争に至った理由について調べるアレイシャ達。
とはいえそう簡単にいくはずもなく調査は難航する。
朧夜の報告とシスターの報告から国の内部に取り入った者がいる事は確定している。
問題はそれをあぶり出す方法なのである。
「どうしたものかしらね」
「戦争中ですし城に簡単に入れてもらえるような事もないですし」
「教会の力を借りるにしてもあたし達じゃ不審者よ」
「手配こそ解かれていても顔は割れてしまっていますからね」
そうして考える。
帝都に留まっていても何も得られないのか。
「そのときの関係者とか接触出来ないかしら」
「ふむ、だとしたら軍本部にでも出向いてみますか?」
「入れるんですか?」
「今は軍は戦場にほとんど出払ってるわよ」
ヒルデの話では軍が出払っているからこそだという。
司令官にさえ接触出来れば最低限でも聞き出せるそうだ。
「なら行ってみましょ、その軍本部はどこなの」
「この帝都のある首都から西に三つ行ったところにあります」
「分かりました、では時間も惜しいのですぐにでも」
「私は少しやる事があるから先に行ってて、すぐに追いつくから」
アレイシャのやる事。
それは魔王城での情報を得られないかという思惑。
ヒルデ達を先に城門前で待つように言い別行動となる。
街の路地裏に移動したアレイシャは転送の呪文を唱える。
「さて、聞けるとしたら…」
そのまま研究室へと向かう。
「ハイフス!ハイフスはいるかしら!」
「おや、久しぶりだね、何か困り事かな?」
アレイシャは事情を説明する。
「なるほど、コレアムからここに来ている関係者はいないか、と」
「ええ、いないかしら」
ハイフスは少し待つように言い一人の研究者を呼ぶ。
どうやら彼はコレアムからスカウトされた者らしい。
「彼はノースコレアムの元兵器開発者だ、少しは話も聞けると思うよ」
「えっと、何が聞きたいんですか?」
「待って、ノースコレアム?それってどういう…」
彼は国の事情も話してくれた。
コレアムは元々シビリアンコレアムという一つの国だった。
それが戦争により南北に分断される。
一般的にコレアムと呼ぶ国はサウスコレアムと本来は言うらしい。
ついでに言うとそのサウスコレアムは国ではないのだと言う。
シビリアンコレアムの南部を武力で不法占拠しているに過ぎないと。
「それでバルディスタとの戦争の経緯は国のトップ、大統領の失脚です」
「つまりそれが引き金?要するに軍部の暴走とかかしら」
彼が言うには大統領が内乱により失脚し軍部が政権を握ったという。
それにより反バルディスタの勢力がそのまま内通者を使い戦争へと走らせたという。
ちなみにサウスコレアムにはノースコレアムの工作員が多数入り込んでいるという。
それにより政治や軍部に親ノースコレアム派を増やし飲み込もうとしている。
ノースコレアムは恐怖政治の国で別の大国が危険視しているそうだ。
戦争に走らせたのは親ノースコレアム派と反バルディスタ派の合致かららしい。
そんな彼もミィアに拾われなければ処刑されていたはずだと言う。
もうあの国に帰る事はないだろうとも言う。
「それで結局はその強硬派の思惑の一致って事でいいの?」
「そんなところです、思想を利用してそそのかしたんですよ」
つまりは根底にある反バルディスタという思想。
そして国内の売国奴達による扇動。
それに加え内通者の外患誘致。
そうした理由から戦争に至ったのだという。
「戦争を終わらせるなら勝つよりコレアムを滅ぼした方が早いかもしれませんね」
「なんにしても話が聞けてよかった、それじゃ私は戻るわ」
そうしてアレイシャは仲間の下へ戻っていった。
「神がいるならコレアムを作った事を呪いたいものですね」
アレイシャは城門に急ぎヒルデ達と合流する。
「遅いわよ」
「ご免なさい」
「なんにしても軍本部に参りますよ」
「行きましょう」
そうして帝都を出発し軍本部に向かう。
場所は西に三つ行ったところにあるバウムビッツ。
軍本部に行くのはヒルデに伝でもあるからなのか。
軍本部で何か得られるのだろうか。