敵の行方
エロイーズの細工により追っ手をなんとか回避したアレイシャ達。
だが敵の工作員はその技術により再び闇の中へ。
今後について改めて相談をするアレイシャ達。
復讐すべきその相手はどこに隠れているのか。
「今後はどうするのかしら」
「そうね、やっぱり諦めきれないわ」
「だとしてもあの様子じゃ簡単にはいかないわよ」
「ですね、少なくとも同じ顔が他にもいると踏むべきです」
コレアムのスパイ技術の一つである整形手術。
それは世界の医療の中でもコレアム独自のものだとエロイーズは言う。
「まあ私はどこまでもつきあってあげるわよ」
「とはいえこのままでは…」
「そうよ、下手に殺したりしたら手間が増えちゃうわ」
「国内に工作員が潜り込んでいる事が確定している以上、ですよね」
戦争が終わらない理由。
それは工作員が内部から糸を引いているから。
だがアレイシャは戦争の終わりよりも復讐が目的だ。
そのための犯人をあぶり出す方法を考える。
相手は恐らく騎士団に潜伏している。
そして騎士の多くは戦場だ。
やはり戦場に出るような馬鹿はしていないだろう。
国内の相手を誘い出す方法。
先日の事もあり相手の警戒心は高まったはずだ。
アレイシャの事も当然伝わっているはず。
「やはり誰かの手を借りますか?」
「それは最終手段にしておきたいわ、出来るだけ自分達でやりたい」
「とはいえどうすんのよ、国の内部には簡単には入れないわよ」
「ええ、教会を頼ろうにもそんな簡単な話ではないかと」
考える、とにかく考える。
すると一つ方法を閃く。
それは人を利用して内部に入らせる事。
危険は承知だがそれなら内部も多少は見えてくる。
「ですが誰を利用するのですか?」
「ならエメラダ教の人間とか」
「エロイーズもずいぶんと…それだわ」
「まさか本当に?」
エロイーズが中央から派遣されたのなら他にもいる可能性がある。
それはエロイーズと同じ中央からのスパイだ。
そのシスターがいたとしたらそれを利用する事は出来る。
幸い今は帝都に滞在している。
それを出来ないかと考え教会に向かう。
そこでエロイーズがあるシスターを呼びつける。
「はい、なんでしょうか」
「あんたに頼みがあるのよ、聞いてくれる?」
「あのシスターを利用するんですか」
「みたいね」
エロイーズがそのシスターに説明をする。
彼女はそれを了承した。
城に礼拝で行った際に内部の人間を調査すると。
だが同時にエロイーズに忠告もする。
「でも忘れてはいけませんよ、私達の本来の目的」
「分かってる、だから今回だけね」
「話は決まりね」
「城に礼拝で行ったときに内部の様子を見る、ですね」
そうして一旦教会をあとにする。
彼女からの報告を待つべく少し帝都に滞在する事に。
一方のアレイシャは少し席を外すとして外に出ていった。
エロイーズは彼女を追いかける。
「…私の家もこんなになって」
「ここがあんたの家なのね」
エロイーズはその屋敷を見て言う。
今は物資の保管庫として使われるその屋敷。
そこはかつてを過ごした家であり思い出が詰まる場所。
だが自分が死んだ事で親を失い家も失った。
その悔しさは確かにある。
だからこそ自分を殺した人間をこの手で殺してやる、そう誓った。
「あんたが何をしようとも私は構わない、でも死んだら許さないわよ」
「それはお互いにね、大切な駒なんだから」
死んだはずの騎士と中央教会のスパイ。
そんなお互いを利用する関係の二人にあるもの。
それは信頼でありいつでも捨てていいという暗黙の了解。
そんなエロイーズはなぜスパイなどしているのか。
「私ね、ある国の孤児なの、教会に保護されてそう教育されたのよ」
「ふーん、教会が孤児を拾ってスパイに」
エロイーズもスパイとしての英才教育は受けている。
だがその心の根底にあるのは生まれた国への憎しみなのだという。
「私は祖国を許さない、だからいつか目にもの見せてやる」
「そういうところはお互い様、なのね」
アレイシャとエロイーズ。
二人は共にその憎しみが生きる糧である。
そして国の内部の報告でその実態を改めて知る事となる。