伯爵と繋がり
レザースの協力を得てなんとか逃げる事に成功したアレイシャ達。
そのまま夜の川を渡りマスティンの街を目指す。
警戒しつつもその国境を越えマスティン領内へと入る。
そうしてヘーゼルに会うべくその屋敷を訪れていた。
「なんとか街には入れましたね」
「さっさとヘーゼルの屋敷に行くわよ」
「街の人に通報されないといいけど」
「油断はしないでおきましょう」
そうしてヘーゼルの屋敷へと向かう。
そこは帝都の本邸とは別の仕事場である別邸だ。
「アレイシャ殿、まさか本当に生きておられたのですか」
「ええ、それより」
「こっちも何かとあるのよね」
「だから、ね」
ヘーゼルはとりあえず屋敷の中へと入れてくれる。
そこでお茶を出してもらい今までの事を話す。
「そうでしたか、ヒルデ殿の行方を」
「ええ、あなたの名義で何かしらとやっていたのはすでに知っています」
「今彼女はどこにいるのかしら」
「我々はヒルデ殿に話を聞きたくて」
ヘーゼルの話では先日まではこの屋敷にいたという。
そして昨日一つ北にあるベルグザッツ領に行ったそうだ。
「ベルグザッツ?確かあそこって最近地底湖が見つかったって聞いてるわよ」
「お詳しいのですね、ヒルデ殿は水の買い付けに行くと言っていましたよ」
「水の買い付け…」
「やはり戦時中の国のために?」
ヘーゼル曰く国に少しでも食料や水を届けたいと言っていたらしい。
あとはお金を貯めてアレイシャの屋敷を買い戻す事を目標にしているそうだ。
アレイシャ達はすぐにでもヒルデのあとを追う事にしたい。
だが今は本国に追われる身である以上迂闊には動かない方がいいとも言う。
「それでも行くのでしょう?」
「ええ、私達はヒルデに話を聞きたいから」
「この馬鹿は結構な頑固だからね、そっちもなんとかしてくれるのかしら」
「すみません、彼女も口が悪くて」
ヘーゼルは国に上手く口利きをしておくと約束してくれた。
少なくとも伯爵の権限があれば追っ手を止めるぐらいは可能らしい。
とはいえ即日とはいかないそうで明日か明後日になるとだけ言ってくれた。
あとベルグザッツには国の調査隊も入っているという。
それは地底湖の水質などを調べる調査隊だ。
軍人でこそないものの通報される恐れはある。
なので追っ手を止めるまではこの街に滞在して待つべきだとヘーゼルは言う。
アレイシャ達もそれを承諾しこの屋敷に匿われる事となった。
「ああ、それと屋敷から出るのなら西の地区には行かないように」
「分かったわ、西の地区って街の警察の詰め所があるんでしょ」
「確かに手配中なら行かない方がいいですか」
「国の手配が解けるのを待つしかないわね」
そうして一旦はヘーゼルに保護してもらえる事となった。
手配が解ける明日か明後日には北のベルグザッツへと行けるだろう。
ヘーゼルはメイドに丁寧にもてなすように言い国への書状を書き始める。
アレイシャ達は今までの疲れを取るべく各自自由にする事に。
「ん、んー、やっと落ち着けるかしら」
「とはいえ気は緩められませんね」
「にしてもアナスティア、あんた乳デカすぎ、何食ったらそうなるのよ」
「私が知ってる限りだとシスターになったときも服がぱつんぱつんだったわよね」
エロイーズもそういう話は好きなようだ。
意外と下ネタなども平気なようにも見える。
「なら一緒にお風呂でも入る?」
「…面白いわ、秘密を暴いてやる」
そうしてアナスティアとエロイーズはお風呂に行ってしまった。
「あの二人はどうにも緊張感が足りないというか」
「それでも下手にピリピリするよりはいいんじゃない?」
アレイシャとセクネスも上着を脱ぎ少し楽になる。
そんなセクネスはアレイシャを大切に思っているようで。
「アレイシャ、今度はいなくなったりしませんよね?」
「それは分からないわ、でもいられるのなら…ね」
アレイシャの心はすでに決まっている。
巻き込んでもいいものか、それは最終的に彼女達が決める事。
自分を殺した者達への復讐。
それがアレイシャの答えであり目的。
アレイシャはあのときの人物を探し出すのだと決意を固めていたのだった。