禁忌の死霊使い
一度は投獄されたがエロイーズの助力により脱獄したアレイシャ達。
逃げる最中追いつめられたときに謎の男の助力を得る。
そのまま帝都を脱出するアレイシャ達。
近くの森に身を潜めその男に話を聞く事に。
「ここなら追っ手も簡単には見つけられないでしょう」
「ええ、それよりあんた何者?私達をどうして助けたの?」
「それは聞いておきたいわね、見ず知らずの人を助ける理由も」
「何か打算でもあるのですか」
その男はアレイシャに興味を示したという。
アレイシャから感じたその魔力に関心があるらしい。
「それは…」
「何か言えない事でもあるようですね、別に深くは聞きませんよ」
「アレイシャから感じる魔力?」
「何か特殊な術とかかしら」
それはそうと男に名を尋ねる。
「私の名前ですか?レザースと申します」
「レザース…まさかあの禁忌に手を出して追放と指名手配されてる…」
「禁忌?それに指名手配って…」
「つまり何か禁じられたものに手を出してって事かしら」
レザースは好奇心を満たすべくその禁忌に触れたという。
先ほど見せた術もそんな禁術の一つ。
死体を兵として操る死霊術だ。
レザースはそんな禁忌に手を出し国を追放、全世界に指名手配されているという。
「あんた…よくも私達を助けるなんて真似を…」
「捕まえますか?私の首には80億の賞金がかかっていますよ」
「80億!?」
「金額からしてその罪の重さがわかりますね…」
だがエロイーズはレザースをあえて見逃すという。
彼は今後もイレギュラーな駒として動かせると踏んだからだ。
「おや、懸命なお嬢さんだ、では一ついい事を教えましょう」
「何かしら」
レザースが教えてくれるいい事、それはヘーゼルの今の居場所だ。
「あなた達は追われる身、ならば三つ北西にある小国に行くといい」
「三つ北西…それってバルディスタ二番目の都市のマスティンね」
「マスティン…そうか、そこにはヘーゼル殿の別邸がある」
「つまりヘーゼル様は今はマスティンにいる?」
レザースは今のままでは国に聞き入れてもらうのは無理だろうと言う。
それならヘーゼルの力を借りるのが懸命だと言う。
「ならそうするわ、いろいろ助かったわ」
「いえ、では私はそろそろ、あなた達も死なないでくださいよ」
そうしてレザースが立ち去ろうとしたとき一つ尋ねてきた。
「そうだ、人を探しているのです、白い和装の女性を知りませんか」
「白い和装の?もう少し詳しく言ってくれないと」
レザースが探し求める人らしい。
「そうですね、少し前時代的な感じのする女性です」
「すみません、我々は存じませんね」
レザースはならばもし見つけたら覚えておいて欲しいという。
それを伝えた後森の中へと消えていった。
「変わった人だったわね」
「80億の手配犯、禁忌に手を出した死霊使いね」
「それよりマスティンに行きましょ、ヘーゼルに会うのよ」
「そうですね追われる身である以上多少の無茶はしてみせます」
そうして話は決まった。
森を進みマスティンに続く道へと進む。
そのマスティンは三つ北西に行った先にある小国でバルディスタ二番目の都市。
主に貴族などの仕事の拠点とされる都市だ。
森を出れば見つかる事も覚悟しなければならない。
それを承知で森を抜け最初の国境の検問所へ。
「突破は無理ね、力で行く?」
「いえ、大陸の国境は必ず近くに川がある、危険だけど夜の川を渡るわよ」
「本当に危険な真似をするのね」
「エロイーズの力押しが通じないんですから仕方ないですよ」
そうして検問所を離れ国境付近の川の近くに潜伏する。
そのまま夜を待ち国境警備隊の動きを見る。
「見張りは三人、来る間隔は一時間、次が行ったら渡るわよ」
「了解よ」
「なんかスリリングね」
「仕方ないですよ」
そうして見張りが行った瞬間を狙い川を渡る。
今の季節は川の水温はそこまで低くはない。
なんとか川を渡った四人はそのままマスティンへの道を進む。
最初の小国セーベイトに入り夜に紛れて次の国境へ向かう。
街を利用は出来るだろうが見つからないようにしなければならない。
ヘーゼルになんとしても会うべくその危険な道を進むのである。