島を進む
ヒルデの足跡を追うアレイシャ達。
現在は複数の島からなる国であるインダネスカを進む。
国境駅から国境への一番近いカルメンザン島へと上陸した。
その島を抜ければ次の島への船のある街へと到着する。
「なんとか一夜は明かせたわね」
「朝早くからで悪いけど次の島への船の出てる街へ走るわよ」
「そうですね、少しでも時間が惜しい」
「なら早いところ行きましょう」
そうしてベレンハタラの街を出る。
そのまま馬を駆りその道を駆け抜ける。
「この国は自然も残ってるけど都市部は開発もされてるのよね」
「だからこうして舗装された道があるのね」
「とはいえ首都、本国のある島へは今回は立ち寄りませんよ」
「目的はヒルデの足跡を追う事であって観光じゃないものね」
アナスティアも楽観的な性格ながら弁えてはいる。
それは正反対の性格のセクネスと一緒に育ってきたからなのだろう。
「それはそうとあんた達も気になってるんでしょ?」
「バイランダの線路に入り込んだ動物の死体ですか」
「あれをどこかから操ってた人がいるのよね?」
「まさか本国の人間?それともコレアム辺りが何かに感づいてスパイとか?」
結局それについては今は分からない。
とはいえ何者かが密かに動いていたとエロイーズは確信していた。
黙ってはいるものの恐らく帝都で賊に堕ちた騎士を引き渡したとき。
あのときに死んだはずのアレイシャが生きていた事を感づかれたか?
それを調べるために本国かコレアム辺りが偵察を送ったのかもしれない。
ルートを考えれば工場の街から無理矢理隣の国へ入りそこから動く。
そうすればアレイシャ達がアウスタリアに入った時点で先回りは可能だ。
ルートは分からないものの先回りして待っていたといったところか。
今はその視線は感じない。
恐らくすでに本国に引き上げたのたろう。
目的はなんだ?
それから思い浮かぶのは一つ、アレイシャの情報だろう。
死んだはずの人間が犯罪者を引き渡して去っていった。
それによりどちらかの国が証拠を押さえるべく偵察を飛ばした。
視線を感じなくなっているという事はあの線路でのときか?
なんにしてもどんな状況になっても動けるようにしておく必要があると思っていた。
「ここを駆け抜ければ次の街なの?」
「ええ、中継地点があるからそこで体力整えて夕暮れまでに一気に行くわよ」
「分かりました、では行きましょう」
「島一つ一つはそこまで大きくないのが救いよね」
そうして一気に駆け抜け中継地点の街へと入る。
そこはポスティラネックの街で小国カルメンザンの中央都市だ。
そこで軽い食事を済ませた後再び馬を駆り西へと走る。
ここからなら日暮れにはカルメンザンの西の港町ソンクランの街に着ける。
幸いその道は舗装されているので馬でも快適に走り抜けられる。
とはいえ少し道を遠くに外れればそこは密林が広がる。
この国は熱帯の国であり、手の入らない場所には熱帯林が広がっているのだ。
当然ながら未知の病原菌などもないとは言い切れないため油断は出来ない。
こういう気候の国では蚊がその病原菌を運ぶ事もあるからだ。
蚊はこのような気候の国では死因の上位に上がるほど危険でもある。
蚊に刺されて死んだ人間は現地人ですら多数いるのだから。
なんにしても密林に入らないように気をつけつつ一気に駆け抜ける。
そうして走っているとソンクランの街が見えてくる。
時間は日が落ち始める時間。
船には明日に乗るとして今日はこの街で一夜を明かす事に。
宿を確保した後街で食事を済ませる。
「この国も独特な食べ物が多いのね」
「東の国って基本的に文化が違うのよ、バルディスタはパン食でしょ?」
「確かにバイランダやチェンワ国などの国は米食ですよね」
「西は基本的にパン文化で東は多くの国が米文化なのよね」
そうして食事を済ませ宿で今日は疲れを取る事に。
明日は朝一の船でハナテラ島のビェンダへと渡る。
そこから島の北の港へ行き船に乗ればバルディスタ国境だ。
ちなみに道中でもヒルデの情報は得ている。
バルディスタに戻ったアレイシャ達の今後も考えつつ夜は更けていくのだった。