国境前の足止め
ヒルデの後を追いインダネスカを目指すアレイシャ達。
ネンテグリーの高速鉄道を利用すべく街の駅で準備を整える。
馬は一足先に輸送専用の鉄道で国境へと移送した。
本人達も国境へ向かうべく鉄道を待っていた。
「この様子ならなんとか国境までは行けそうね」
「ええ、でも結局は戻る事になるのね」
「問題は戻ってから、ですか」
「そうね、すんなり事が運ぶとは思わない方がいいかも」
そうしているうちに鉄道の準備が終わる。
発車までもう少しあるので少し自由にする事に。
「それじゃ時間には間に合わせるのよ」
「分かってるわよ、任せなさい」
「エロイーズってもうクールでもなんでもないわよね」
「本人はクールになりたいようですが」
そうして鉄道が発車するまでは自由になる。
少し駅の構内を見て回る事に。
「にしてもあんた、本当に私を知ってて利用してるのね」
「あら、あなたこそ私に利用価値があるって分かってるから同行してるのよね?」
アレイシャとエロイーズはお互いに利用価値がある事を理解している。
死んだはずの騎士様と中央教会のスパイだ、もはやその腹の中はドス黒い。
セクネスとアナスティアには知られていないその黒い思惑。
とはいえそんな黒さの中にもお互いを信じているというのはあるのかもしれない。
「さて、あんたも気づいてんでしょ?」
「そうね、駅に入ってから何者かに見られてるわ」
二人は駅に入ったときから何者かの視線を感じていた。
それを知らぬふりをして泳がせてある。
流石に人が大勢いる街の中で騒ぎは起こせないからだ。
その視線を飛ばしているのは街の人に扮装した何者か。
とりあえずは知らぬふりを貫き通す事にする。
そうして鉄道の発車する時間になるのだった。
「さて、なんとか無事にインダネスカ国境へ行けそうね」
「そこを抜ければバルディスタ、戻る事になっちゃったわね」
「ノルスタニアからアウスタリア、そのままバイランダでインダネスカね」
「そこからの次の予定を考えておかないといけませんね」
そうしているうちに鉄道が発車する。
インダネスカ国境までは整備された平地を走るのみだ。
鉄道は何事もなく走っていた。
だがそこで思わぬ足止めを食う事となる。
インダネスカ国境駅まであと少しのところで突然線路に動物が入り込む。
列車は急停車したものの動物はその場を動かず一時的に立ち往生を喰らう。
「動物が線路に?」
「少し見に行ってみましょ」
「駅で感じた視線の人物の仕業?何が目的かしら」
「周囲の警戒を怠らないのよ、いいわね」
そうして鉄道を降りてその現場を見る。
「こいつなんなんだ?おい!どけって!」
「…腐臭?この獣から?」
「少しいい、…せあっ!」
「これは…この獣は死んでいます、死体が動いていた…」
アレイシャが獣に剣を振り下ろすと獣はその場に崩れ落ちた。
その獣は何者かが操っていた死体だった。
獣はそのまま骨も残らず溶けて消えてしまった。
明らかに不自然な進路妨害、それをやったのは駅で感じた視線の主か?
なんにしても列車に戻り運転を再開する。
そのあとは何事もなかったかのように国境駅へと到着したのだった。
「さて、国境駅に着いたわね」
「馬は一足先に着いているはずよ、確認して受け取りましょ」
「そうしたらインダネスカへと入国ですね」
「それじゃ行くわよ」
そうして一足先に着いていた輸送列車に確認を取り馬を回収する。
そのまま街を歩き国境の検問所へ。
バルディスタの戦争の関係で検問は厳しいものの、そこはエロイーズに任せる。
エロイーズが上手く話をつけ国境を通る許可をもらう。
そして国境を越えインダネスカになんとか入国した。
とりあえず一番近い小国の街へと向かう事に。
「インダネスカは複数の島からなる国、国境駅から船で移動よ」
「一番近い小国はカルメンザン島ね、そこのベレンハタラよ」
「分かりました」
「ここからは少し長くなりそうね」
そうしてインダネスカを抜けるべく船に乗る。
複数の島を馬と船を使い移動しつつバルディスタ国境へ向かう。
バルディスタへ戻る国境への道は近いようで遠いのである。