象と笑顔の国
ヒルデの足跡を追いバイランダを西へ走るアレイシャ達。
今はバイランダの小国ナケーンソナンに来ている。
ここで今一度ヒルデについての情報を集める。
恐らくここにも寄っているのは確実だろうとし聞き込みを開始する。
「どうだった?」
「駄目ね、収穫なし」
「あたしもね、寄ってるとは思ってるんだけど」
「もう少し聞き込みをしてみますか」
そのままもう一度聞き込みを開始する。
すると思わぬ場所の情報を得る。
「象園にそれらしき人が訪ねてたらしいわよ」
「象園?確かにこの国は象をよく見るけど」
「なんにしても行ってみましょ」
「ですね、何か掴めるかもしれません」
そうしてその街にある象園に向かう。
そこは曲芸などに使う象を飼育する場所だ。
「あの、以前ここにヒルデという人が訪ねてきませんでしたか」
「ん?んー…ああ、来てたね、二年前ぐらいか」
「その人は何をしに来ていたのかしら」
「その人を探しているんです」
ヒルデはなんでもバルディスタで子供達に象を見せられないかと交渉したらしい。
だが戦時中の国での公演は難しいと園長もきっぱり言ったらしい。
ヒルデはそれでもなんとかならないかと食い下がったという。
園長は条件として戦火の薄い地域でならという条件を出したらしい。
ヒルデはそれで条件を飲みバルディスタの東の地域で公演の依頼を出したという。
園長もそれを承諾しバルディスタの東の村で一座の公演をしたらしい。
そのときの契約書も残っていて確かにヒルデとヘーゼル伯爵のサインがあった。
ちなみに依頼をしたのは二年前だが公演は一年前、その空白が気になる。
「多分そのヒルデさんはバルディスタで何かしてるかもな」
「やっぱり戻ってるのね」
「結局無駄骨…でもなさそうね」
「ヒルデさんはバルディスタに戻ったで確定ですね」
園長は戦時中の国だからこそ子供達の笑顔を覚えているという。
ヒルデとヘーゼルには感謝しているし一座もいい経験になったと言っている。
バルディスタに行くなら西のこの国二番目の小国ネンテグリーにまずは行けと言う。
そこからなら国境への高速鉄道が出ているからだ。
馬で走った場合はその南西からの迂回になる。
この国の本国であり首都のベンコルはそのネンテグリーの北らしい。
この世界では自治体の事を小国として管理する仕組みがある。
それにより首都が本国、所謂国の最大都市とされる。
そして地方の都市などは小国として扱われ独自の統治を許されている。
なんとかの国のなんとか地域ではなくその地域が小国として扱われるのだ。
そのため小国とは言い方を変えれば地方自治体に当たるのである。
小国とは一言で言っても土地の広さは様々だ。
大きめの小国は他にも小規模の集落や街が領地にある事も多い。
そうして本国と小国によって国土が形成されるのがこの世界だ。
「とりあえずネンテグリーに走りましょう、そこから国境よ」
「そうね、とはいえ馬をどうするの」
「鉄道に馬を乗せるのは興奮させるかもしれませんね」
「とはいえインダネスカは鉄道もあるけど馬なしじゃキツいわよ?」
ならばネンテグリーで馬を別の手段でインダネスカ国境へ運んでもらおうと考える。
幸いノルスタニアでお金は手にしているのでそれぐらいは可能だ。
一旦はネンテグリーに行き馬は別の手段で国境へ。
アレイシャ達は鉄道で国境へ行きそこで馬を回収してインダネスカ入りである。
「話はまとまったし、とりあえずはネンテグリーに行きましょ」
「ええ、では出発ですね」
「お金はあるのが幸いってとこよね」
「そうね、運がよかったわ」
そうしてネンテグリーに向け馬を走らせる。
去り際に街の人達から笑顔で見送られる。
比較的近い国が戦争をしているのにこの国の民は微笑みを忘れない。
それは微笑みの国とも言われるバイランダだからこそだろう。
そんなこの国の民に敬意を表しアレイシャ達はネンテグリーに向かう。
熱帯の国だからこそ馬で走るとその風がとても気持ちいい。
ヒルデはバルディスタに戻ったとみて確定だろう。
アレイシャ達はその後も考えつつ駆け抜けるのだった。