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熱帯の国

アウスタリアからチガット、そこからバイランダへと入ったアレイシャ達。

その国は熱帯の国であり高い湿度が特徴の国だ。

チェンワ国の乾いた気候から一転し熱気が襲う。

だがそれでもヒルデを追いかけるべくその足跡を辿るのであった。


「ピスラナークって果物とかよく見るのね」

「この国は気候からして果物の栽培に適してるのよ」

「そうそう、だからミックスジュースは果物の味そのものよ」

「とはいえそれも今は余裕があれば、ですけどね」


ジュースを飲みたそうにするアナスティアだが今は情報が先だ。

街の市場などで情報を集めてみる事に。


「ヒルデさん?そういや二年前ぐらいにそんな人が来てたな」

「やっぱりなのね、彼女はこの国で何をしてたの?」

「あたし達その人に会わなきゃいけないのよ」

「覚えている限りで構いません」


果物屋の店主は当時の取引記録を見せてくれた。

そこにはヒルデがヘーゼルの名義で果物を大量に購入した記録があった。


「なんかバルディスタが戦時中だから食料の確保だってさ」

「つまりヘーゼル名義で食料を本国に?」

「ノルスタニアではお金を貯めててこっちでは食料、何がしたいのかしら」

「分かりません、ですが悪い事に使うとは思えませんね」


店主曰く他に果物の栽培方法を訊いてきたという。

バルディスタの土地ならりんごやオレンジなどの柑橘類がいいとアドバイスしたとか。


「ヒルデは何をしたいのかしら、国に技術でも伝えるつもりなの?」

「俺には詳しくは分からん、でも何かしらの目的があるのは確かだと思うぜ」

「アレイシャのメイドは何を目的に動いているのかしら」

「私に訊かれても困りますよ」


なんにしても店主にお礼を言い店でマンゴーを買ってその場をあとにする。

外国では高級果物のマンゴーだがこの国では一般的な果物で安く手に入る。


他にも外国では高値で売られる果物の多くがこの国では安く売られている。

それは果物の栽培に適した環境だからこその値段だろう。


「それにしてもマンゴー美味しいわね」

「バルディスタだとこの国の倍はするんですから」

「それがバルディスタの半額で買えるとか本場は凄いわね」

「それにしても暑いわね、喉が渇くわよ」


エロイーズは喉が渇いているようなので近くのパーラーに移動する。

そこで各自好みの果物でミックスジュースをオーダーする。


キンキンに冷えたその甘いジュースはまさに癒やしの味である。

この国では店の店員に使用する果物を伝えてそれをジュースにしてもらう。


店の商品棚にあるものから好きな果物のミックスジュースがオーダー可能だ。

アレイシャ達も当然好みの果物を伝えてジュースを作ってもらった。


「はぁ、癒やされるわね」

「果物のそのままの味よね、本当に美味しい」

「マンゴーなども躊躇なく使えるのは魅力ですよね」

「飲み物も飲んだしヒルデの行き先も訊かなきゃ」


改めてヒルデの向かった先を訊いて回る。


すると果物の農園の人からヒルデが苗を分けて欲しいと言ってきたと聞けた。

その話のついでに行き先も訊いてみた。


どうやら西へ向かったという。

西にあるのはインダネスカというこの国と似た気候の国だ。


その国からさらに西に行くといくつかの小国を抜けバルディスタへと戻る。

つまりヒルデはその道を使いバルディスタへと戻ったと見るべきか。


アレイシャ達は農園の主にお礼を言いその場をあとにする。


「西ですか、今から走れば道中の小国には日暮れには入れると思いますよ」

「なら決まりね、西にある小国のナケーンソナンまで走るわよ」

「ええ、それじゃさっさと行くわよ」

「西、結局戻る事になるのかしら」


そうして街を出て西へと馬を走らせる。

熱帯地域なので馬を走らせる際の風を切るのが実に気持ちいい。


そのまま西へと全力で馬を駆る。

アレイシャ達は結局バルディスタへと戻る事になりそうだ。


バルディスタに戻ってからは一からやり直しになるのか。

なんにしてもヒルデの情報が少しでも欲しい。


バルディスタに戻ったら無理を承知でヘーゼル伯爵に会えるかと考える。


アレイシャ達のヒルデを追う旅路は再スタートになる事になるのだろうか。

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