草原から荒れ地へ
ヒルデの足跡を追うアレイシャ達。
蓮泉の街で一夜を明かし早朝に再び南へ向かう。
ヒルデが向かったというチガットはチェンワ国の南部だ。
そこまで行き情報を得た上でそれを決める事とする。
「それにしてもこの蓮泉も小国にしては栄えてるのね」
「仮にも小国だからね、そりゃそうよ」
「とはいえチェンワ国自体いい評判は聞かないですからね」
「そうね、そういう国なんだって事よ」
馬を南へ走らせるアレイシャ達。
この進路を進むとチガットの前に小国の観担に入る事となる。
「ここを真っ直ぐ行くと次は観担ね、そこを抜ければチガットよ」
「分かったわ、なら今日はその観担を目指すわよ」
「ですね、そこまで行くのを目標にしますか」
「なら話は決まりね、行くわよ」
そうして馬をその観担へ向けて走らせる。
走っているうちに景色が変わってきている事に気づく。
チェンワ国は内地の砂漠化がどんどん広がっていて南部にも広がっているらしい。
それにより蓮泉より南はすでに砂漠化に飲まれつつあるそうだ。
エロイーズもそんな砂漠化を政治家が止める気がないと言っている。
このままいけばチェンワ国は30年以内には滅ぶだろうとも言う。
そしてそれにより懸念されるのが難民問題である。
チェンワ国は大国故に小国も含めるとその国民の数は極めて多い。
それが近隣の国に大挙して押し寄せる。
それが意味する事をアレイシャ達も理解していた。
「チェンワ国が仮に滅びたら近隣の国で受け入れなきゃならないのね」
「そうよ、しかもチェンワ国の国民はその民度でも有名だから」
「そういえば以前バルディスタで観光のチェンワ人を見ましたね」
「あたしも見たわ、マナーなんてないようなものだったわよね」
チェンワ国民はマナーを守らない事で知られているらしい。
とはいえ大金を落とす故に邪険にも出来ないのが現実だという。
そんなチェンワ国民は貧富の差も激しく北部の方は相当な貧困らしい。
それが出稼ぎで首都の方に出たりするため家にはほとんどいないそうだ。
「チェンワ国ってそれだけの事情があるのね」
「ええ、小国も本国が管理する悪政だしね」
「もはや小国ですら本国に飲まれている、ですか」
「世界のルールにすら逆流してるのね」
だがそれでもチェンワ国はその料理の美味しさは世界でも有名だ。
アレイシャ達も蓮泉で食べたものの美味しさは確かに覚えている。
とはいえアレイシャ自身は味を感じなくなっていてそれを隠しているが。
セクネスとアナスティアも蓮泉で食べた料理の味には感動していた。
リーズナブルなのにあんな美味しい料理が出る。
それはチェンワ国のお国事情だとエロイーズは言う。
高級なものはそれこそ恐ろしく値が張るのもチェンワ国の料理だそうだ。
その一方で大衆食堂などは安いにも関わらずその味は本物なのだ。
そこは腐っても大国としての文化なのだろう。
この料理をなくしてはいけないとエロイーズは言う。
「それで観担までもう少しかしら」
「あと少しよ、日暮れ前には到着出来るはず」
「なら一気に駆け抜けてしまいましょう」
「そうね、はあっ!」
そして走っていると観担との国境が見える。
そこで馬を降り検問所でエロイーズが上手く交渉する。
なんとか検問所は突破出来たためそのまま観担へ。
そこは首都ほどではないがそれなりに発展している国だ。
とりあえず宿を確保し少し街を見て回る事にした。
観担の街、それはチェンワ国の中の小国では発展している方になる。
とはいえ本国からの指示もあり下手な政治的主張は出来ないらしい。
「でも大国だからこその格差なのよね」
「ですね、大国に限らず平等などというのは無理なのでしょう」
「そもそも世の中の仕組みを知ってたら平等なんて言えるわけないのにね」
「エロイーズが珍しくいい事言ってるわね」
そうして街を散策し明日の出発に備えておく。
観担から南へ走ればチガットだ。
チガットとバイランダの国境がある場所までもう少し。
ヒルデは恐らくバイランダへ向かったはず。
チガットでそれを確かめ次の地へと進むのである。