故郷の景色
別世界に行く事については決まったアレイシャ達。
その世界に行く前に故郷を見ておきたいと、バルディスタに戻っていた。
そこで今までを改めて思い直す事に。
久しぶりの故郷の地はどこか懐かしくも不思議な気持ちになったようで。
「ここね、今では私の家ではないけれど」
「アレイシャ様はこのままでよろしいのですか?私のお金で買い戻す事も出来ますが」
「あたし達も何か恩返しがしたいわよね、そうでしょ?」
「ええ、今の私達があるのはアレイシャのおかげですから」
セクネスとアナスティアはアレイシャへの恩義は今でも忘れていない。
貧しい生活から引っ張っていってくれたその恩は忘れられるわけもない。
「今はいいの、買い戻すとしてももっと先にしておくわ」
「かしこまりました、ではそのときまで私は共にあります」
「それにしても復興はまだ完全ではないんですね」
「そうね、バルディスタとコレアムの戦争は3年もやってたんだもの」
戦争の背景については過去に聞いているので、ある程度の仕方なさはある。
とはいえそれにより国は疲弊したのも事実。
皇帝は国を守るためにあえて戦争に踏み切ったのも事実。
国内の売国奴や内通者をそれにより一掃したと聞いている。
皇帝もしてやったりだが、その代償も大きかった。
国の復興が完全に終わらないのもそんな犠牲の上にあるものなのである。
「そういえば世界中で戦争が起きてたって聞いてたけど、そっちはどうなったのかしら」
「情勢についてはどこも沈静化しつつあります、バルディスタに続いたものかと」
「それについては私も聞いてたわよ、なんかエメラダ教が上手くやったみたい」
「つまり世界の戦争を一気に解決してしまったと、エメラダ教ってなんなのかしら」
エロイーズが言うにはバルディスタが攻勢をかけた事に続いたらしい。
エメラダ教は世界中にそのスパイを送り込んでいる。
役割は主に国の安定と情勢を保つ事。
国政などにも入り込んでいて、工作をしているという。
もちろん国の重役になどなれるわけもない。
だが最低限国のトップに意見が言える立場になり戦争を終結させたという。
どんな教育を受けた連中なのかはエロイーズがよく知っている。
つまり世界中の戦争を終結させた発端はバルディスタらしいという事だ。
「でもそれだけの事をやれてしまうエメラダ教の力は恐るべきものですね」
「仮にも世界最大の宗教だもの、裏で知らないような事やってんのよ」
「そんな一宗派にそこまでの組織力がある辺り、流石は世界最大の宗教よね」
「裏では様々な工作を世界規模でしている、もはやどっちが本当の顔なのか」
エメラダ教は天使様の件もそうだが、裏であらゆる事をしている。
国に入り込み国政に意見を言ったり、残虐な実験まで。
エロイーズでも知っているのは一部だけで、全容は知らないという。
そんなエメラダ教が世界を裏から操っていると考えると背筋が寒くなるばかりだ。
「エメラダ教の法王はどんな人なんですか?私は新聞記事で読んだ事がある程度なので」
「私も詳しくは知らないけど、慈悲深くてそれでありながら悪魔のような人らしいわ」
「なんか凄い表現ですね、まさに聖者と悪魔の顔を持つ人って感じです」
「実験やスパイの養成など表からは見えない顔が見えましたからね、恐ろしいものですよ」
エメラダ教の法王はそんな全てを超えたような存在にも見えるとエロイーズは言う。
だがだからこそ多くの信者から信仰を集めているのだろうとも言う。
ヒルデ曰く人は大きな何かに依存する生き物だそうだ。
なぜ依存するのか、それは心の拠り所を欲するかららしい。
自分が安心出来る場所、それが宗教であり同時に人を騙す手口にもなる。
心の拠り所を求めた結果生まれたものが宗教だとヒルデは言う。
「さて、明日には別世界に発ちます、ゆっくり体を休めておきますよ」
「ええ、こっちには簡単に戻ってこられる保証もないから準備とかもするのよ」
「とりあえず日持ちする食料とか睡眠に使う道具とかかしら」
「それについては今から揃えに行きますか」
そうして物資を調達して準備を整える。
明日は別世界への旅立ちの日。
まだ見ぬ世界はどんな場所なのだろうか。