幻の酒
ネクタルに必要な材料を揃えたアレイシャ達。
それらを持って再びバッカスの下を訪れる。
今度こそネクタルは手に入るのか。
とりあえずは手に入れたものを渡す事にした。
「お、お前らじゃねぇか、頼んだモン持ってきたか」
「ええ、言われた通り持ってきたわよ」
「これでネクタルを作っていただけるのですよね」
「こっちだって暇じゃないんだから」
とりあえず手に入れた果物を見せてみる。
その反応はというと。
「どうかしら」
「ほー、まさか本当に持ってくるとは大したもんじゃねーか」
「それで作ってくれるのかしら?」
「約束は守ったわよ」
それを一通り見たあとでバッカスは約束通り作ってくれるという。
神とはいえ、こういうのは信頼が大切とも言う。
それはつまり商売に大切なのは信頼という事なのだろう。
酒を造って売っている、それは信頼の上で成り立つのだと。
「そんじゃ今作ってきてやるよ、少し待ってな」
「お酒ってそんな簡単に造れるものなの?」
「神というだけはあるので、魔法のように造れるとか?」
「でも酒蔵があるわよ?」
それはともかくバッカスはそれを持って奥の部屋に行ってしまった。
よく分からないが、少し待ってみる事に。
酒蔵の中はデリケートなものという事もあり入れない。
バッカスは酒の神、やはり何かしらの特殊な技能でもあるのか。
それからしばらくしてバッカスが奥の部屋から出てくる。
その手にはネクタルの酒瓶があった。
「おう、出来たぜ、こいつが幻の酒って言われるネクタルだ」
「これが…確かに立派な代物ね」
「でもどうやって造ったの?普通お酒を造るには何かと手間と手順があるわよね?」
「やはり酒の神は伊達ではないという事ですか?」
バッカスは豪快に笑い自分は酒の神だと豪語する。
どうやって造っているかは秘密だが、酒の神をなめんなよ、と。
「それとその瓶の他にもう一本造れたぜ、せっかくだし飲んでみねぇか?」
「それはいいですね、まさかネクタルを生きているうちに飲めるとは」
「ヒルデはお酒が好きだものね」
「なら私も飲んでみたいわ」
そこにエイルも混ざってくる。
必要なのは一つなので、もう一つはその場で飲んでみる事に。
バッカスが栓を開けてくれて、そこからはとても甘く芳醇な香りがした。
バッカス曰くネクタルは果実酒の仲間なのだという。
つまり甘みの強いお酒で、果実の甘さが強いらしい。
製造法は秘密だというが。
「これは…とても甘くて飲みやすいですね、それなのに凄く喉に感じる味です」
「とても甘いのに嫌にならない味だわ、果実酒の仲間なんだから当然だけど」
「だろ?こいつを造れるのは俺だけだからな、感謝しろよ」
「甘いお酒もあるのね、私はお酒は詳しくないけど」
そうしているうちにネクタルを一瓶飲んでしまった。
もう一つの瓶はモナークに頼まれたものとして持っていく事になる。
その無茶振りに今回も応えてやったとドヤってやるつもりらしい。
とはいえモナークはこれで時守の針を渡してくれるとも思えない。
次は何を要求されるのか。
それでも時守の針をもらうまでは何が何でもそれに応えてやる覚悟だ。
「あー、それとこいつを持ってけ、うちで造った最高級ワインだ、褒美のつもりだぜ」
「おや、それは感謝します」
「まさか本当に持ってくるとは思ってなかったのかもね」
「そんな気もしますね、まさかという感じです」
褒美としてバッカスから自分の作っている最高級ワインをもらった。
それにはヒルデも嬉しそうである。
酒の神が造った最高級ワイン、それが美味しくないわけがないからだ。
バッカスにお礼を言い、モナークの下に戻る事に。
次は何を言われるのか、それでもやってやるだけだと覚悟を決める。
ヒルデの手を治すためにも負けられないのだ。
「それじゃモナークのところに行くわよ」
「ええ、頼むわね、エイル」
「それにしても飛行船も少しメンテナンスが必要かもしれませんね」
「そっちも考えないとですね」
そうして飛行船はモナークの家のある都市へと飛ぶ。
ついでに飛行船のメンテナンスも検討する事に。
次の無茶振りは何を言われるのだろうか。