酒の神
モナークに言われたネクタルを求めるアレイシャ達。
エイルの心当たりのある国には行ったものの、手がかりはなし。
だがヒルデが一つの国を思い出し、その国へとやってきていた。
その国はグルシュ、以前の旅では寄らなかった国だ。
「それにしてもなんでグルシュなの?」
「グルシュは実は葡萄酒が有名なのですよ、そしてバッカスに縁のある国でもあります」
「つまりここにいる可能性が高い、ですか」
「どうりで葡萄酒の有名な他の国で手がかりがないはずね」
とりあえず酒蔵などについての情報を集める。
それと有名な酒を造る職人の事なども訊いてみた。
「どうやら街一番の酒蔵に凄く美味しい葡萄酒を造る人がいるようですね」
「街の人もその人の葡萄酒はよく飲むって言ってたし」
「行くだけ行ってみますか」
「そうね、行ってみましょう」
そうしてその酒蔵に行ってみる事に。
言われた酒蔵は街の一等地。
そこは立派な建物で、ワインの匂いがする。
とりあえずは誰かいないか調べてみる事に。
「静かね、留守かしら」
「なんだ、客か?買い付けなら申し込んでない奴には売れないぞ」
「あなたがバッカスでしょうか?」
「見た感じお爺ちゃんね、というか酒臭いわ」
そこにいたのは小柄な老人だった。
彼が銀龍の言っていたバッカスなのか。
「あの、ネクタルってご存知ですか」
「ネクタルだぁ、それが欲しいってのか?なら現金で500億ぐらい払え」
「はぁ!?何よその金額!」
「お金はありますが、その金額は流石に持ち合わせていません」
その返事に対してバッカスは少し考える。
そして一つの条件を出してきた。
「そうだな、俺の言うものを集めてきたら造ってやる、出来るなら、だけどな」
「つまり交換条件ですか、それで何を集めるのか聞いてもよろしいですか?」
「ヒルデ、どうせ無理難題よ?」
「でも集めてきたらタダで造ってくれる、そう言いたいのね?」
バッカスはその反応にニヤリと笑う。
そして集めてくるものを教えてくれた。
「集めてくるものは神の桃、魔王の葡萄、竜のリンゴだ、集めてきたらタダにしてやる」
「そんなの聞いた事もないわね、どこにあるのかしら」
「集めてくればいいのね?ならやってあげるわよ」
「アレイシャ!またそんな無茶な…」
言われた三つの果物、それはどこにあるのかすら分からない。
それでもやってやるという覚悟はある。
情報を集める事になりそうだが、どこに行くべきか。
魔女図書館、それともミィアの魔王城、行けるところには行ってみるべきか。
その挑戦を受けて立つ事にしたが、不安もある。
無茶振りの連鎖とも言うべきこの課題をなんとしてもクリアすべく思考する。
「一応訊くけど、現存はしているのよね?」
「ああ、してるぜ、そいつは狂っちまうような美味しさなんだ」
「ふむ、ならまずは情報から集めるべきですかね」
「やってやるわよ、こういうの燃えるのよね」
エイルにもすっかり火がついたようだ。
負けず嫌いが多いという事もあり、挑戦から逃げるのは嫌なのだから。
バッカスもその無茶振りを受けて立ったその姿勢には少し驚いていた。
こいつらにどこまでやれるのか、少し気になっていたようだ。
「では探しに行ってきます、必ず集めてきますので」
「ギャフンと言わせて一泡吹かせてやるわ」
「精々探し回れよ」
「見てなさいよ、驚かせてみせるから」
そんなわけでその指定された果物を探しに行く事に。
神の桃、魔王の葡萄、竜のリンゴ、どれも凄い名前ではある。
一旦飛行船に戻りどこに情報を集めに行くか考える。
考えた結果今回はミィアの魔王城に行ってみる事に決まる。
本当にその情報はあるのか。
神、魔王、竜、それは伝承上の三竦みの種族。
魔王城で何か得られるといいとは思っている。
いっそ本人に聞くのも考える。
「それじゃ魔王城に飛ぶわよ」
「久しぶりの魔王城ね」
「私は初なので気になりますね」
「私もです、わくわくしますね」
そうして魔王城に移動する。
そこで何か得られるのか。
情報はやはり長命な種族に関する場所に限るものである。