湖の乙女
オルレアンの聖剣を求めるアレイシャ達。
魔女に聞いた話では北の田舎にある森林地帯という。
譲り受けた魔封瓶を使えば霧を晴らせるというが。
とりあえず言われた通りにやってみる事にした。
「ここがその森林地帯かしら」
「今は霧は出ていないわね」
「先に進んでみる?」
「そうですね、まずはそうしないと始まりません、参りましょう」
とりあえずは森の中に足を踏み入れる。
少し歩くと視界が悪くなり始めた。
「これは…」
「どうやら話に聞く霧が出始めましたね」
「瓶を使いますか?」
「もう少し進んでからにしましょう」
確認をしてからという事になり、一旦はそのまま進む事に。
少し進んで、その霧の力を確認する。
「気づいてる?」
「ええ、同じ場所を堂々巡りしていますね」
「それがこの霧のせいって事よね?」
「瓶を使ってみますか?」
霧の確認は済んだため、瓶を使ってみる事にした。
瓶の栓を抜き傾けてみる。
すると瓶に霧がどんどん吸い込まれていく。
そしてあっという間に森の霧が晴れてしまった。
「凄いわね、魔女の道具って」
「これで先に進めるかしら」
「とりあえずは進んでみれば分かる事ですよ」
「ですね、進んで確認するのみです」
そんなわけで先に進んでみる。
しばらく歩くと少し涼しさが漂ってくる。
水の清涼感のようで、湖は近いのだろう。
それから少し歩いてその湖に到達する。
「ここがその湖みたいね」
「剣なんてどこにあるのかしら」
「あそこにあるあれじゃないですか?」
「湖に浮いてるようにも見えるけど…」
とりあえず剣を取りにいってみる事にした。
とはいえ湖の深い部分にあるようで泳がねばならないようだ。
「どちら様でしょうか、ここに来れるとはただの人ではありませんね」
「えっ?誰?どこに…」
「まさかとは思いますが」
「聖女ですかね」
そこに現れたのは美しい女性だった。
だが彼女は透けているようで、それが霊体だと分かる。
「ここに来たのは剣を求めてきたのですか?」
「そうよ、別に泥棒ってわけでもないんだけど」
「信じてもらえますかね」
「信じてくれなくてもいいけれど」
だが彼女はアレイシャ達を泥棒とは思っていないようだ。
剣を何に使うのか、それだけは教えて欲しいという。
一応事情を説明する事にした。
その反応はといえば。
「なるほど、時守の針の交換条件にこの剣を持ってこいと言われたのですね」
「ええ、それで来たんだけど」
「剣は別に差し上げても構いません、ですが交換条件に食べ物をください」
「食べ物ですか?何が欲しいんでしょうか」
彼女が要求した食べ物は現代のお菓子だそうだ。
生前は食べ物にも困るような時代、なので現代の食べ物が食べたいと。
そこで当時まだ価値の高かったお菓子がいいと。
何か持ってないかと相談してみる。
「お菓子なんて持ってるの?」
「大層なものはありませんが、これぐらいなら」
「これで満足してくれるかしら」
「一応渡してみましょうか」
とりあえず手持ちのキャロットケーキを渡す。
その反応はどうかというと。
「んー、美味しいですね、これなら満足です」
「結果オーライかしら」
「みたいですね、よかったです」
「それでなんですが…」
彼女は嬉しそうにキャロットケーキを食べている。
それはそうと本題に戻る。
剣は持っていっていいそうだ。
彼女自身この湖に縛られる地縛霊だとか。
なので剣を持ち出してくれればその鎖が断ち切れ成仏出来るそうだ。
それを承諾して剣を譲り受ける。
「それでは確かに受け取りました」
「はい、私もやっと本当の意味で神の下へ行けそうです」
「この湖に縛られていた、剣のせいなのかしら」
「この剣は私の生きた証、ですがもういいのですよ」
そうして彼女は笑顔と共に消えていった。
本当の意味で天に召されたという事なのだろう。
「とりあえず剣は手に入れました、持っていくとしましょう」
「ですね、次は何を要求されるやら」
「あの賢者様の事だからこれで終わるわけないわ」
「とにかく戻りましょうか」
なんとか剣を手に入れる事には成功した。
湖の乙女は幸せそうに消えていった。
複雑な何かがそこにはあったのだろう。