物流の要
北東の国への国境を目指すアレイシャ達。
とりあえずは足がかりを得るべく流通都市へと向かう。
そこはこの国の物流の要であり最終的なチェックポイントだ。
そして国境へ向かう前に王都にも寄ろうと考えている。
「ここが流通都市なのね」
「ええ、今は戦争中だから厳しくチェックされたし」
「とはいえ国境を抜けられたのはエロイーズのおかげですよ」
「全くよね、強引ではあるけど」
とりあえず都市の中を見て回る。
隣国が戦争中という事もあり他の街以上にその監視の目は厳しい。
「やっぱり厳戒態勢よね」
「当たり前でしょ、戦争の難民とかにテロされたら大変じゃない」
「難民問題は戦争中だからこその問題ですよ」
「バルディスタも他国に逃げた人がいるって聞いてるものね」
バルディスタとコレアム。
その二国は泥沼状態の今どちらも困窮している。
国外へ逃げた民も少なからずいるらしい。
だからこそ両国の国境はそんな難民に対して厳しい対応を取っている。
「この国に逃げるのに今だとかなり厳しいのよね、お国柄で」
「製造大国ですからね、下手に難民を受け入れてテロとか考えられますから」
「東の国への国境もかなり厳しいって聞いてたわよ」
「国内は戦争、他国へ避難しようにもそのチェックは厳しい、ね」
なんにしてもヒルデについて何か情報を探す。
北東の国境へと向かったのならここでも何かしているはずだ。
「どうだった?」
「話だと国境へ向かうのに王都まで行ったって」
「やっぱりですか」
「王都への鉄道は二年前と比べてもチェックが厳しくなってるのよね」
二年前と今では状況も違う。
年月の経過により戦争の状態も変わり、それにより目も厳しくなっている。
「あと流通センターに寄ってたそうよ」
「流通センターに?そういえばあそこは他国へ荷物の輸送も出来たわね」
「つまり何かを送っていたと?」
「可能性はあるわね、一応行ってみましょう」
何か分かるかと思い流通センターへ向かう。
そこは国内の大規模な運搬の他に個人の荷物を他国へ輸送もしてくれるらしい。
「ここが流通センターね」
「とりあえず訊いてくるわ」
「ええ、何か分かったら教えてください」
「それにしてもヒルデはお金を貯めてるって何に使うのかしら」
それから少ししてアレイシャが戻ってくる。
「何か分かった?」
「なんか荷物をバルディスタに送ってたそうよ」
「荷物を?つまり手持ちを減らしたという事でしょうか」
「かもしれないわね、この国の技術ならそれも出来るだろうし」
バルディスタに荷物を送った。
恐らく手持ちのものを減らすのに使ったのだろう。
そしてその足で王都へ向かったと思われる。
「その荷物はバルディスタの私の家が所有する倉庫に送られたって」
「アレイシャの家の?ですが家は取り潰されて…」
「それに所有者のおじ様とおば様もそのときはもう亡くなってたはずよ」
「つまり倉庫は所有者が変わってるのよ」
その時点ではすでに所有者は亡くなっていた。
つまり何かしらの理由で誰かに所有権が譲渡されているのだろう。
ヒルデがそこに送ったというのならそれは信じるに値する人間なのか。
「なんにしてもそれぐらいね」
「うーん、お金を貯めてるならやっぱりお金になるようなもの?」
「それぐらいしか思いつきませんね」
「まあいいわ、それじゃ王都に向かうわよ」
その足で王都への鉄道の駅へ向かう。
だが何かトラブルがあったらしく出発が遅れているという。
「見た感じ人のトラブルですね、それも他国の人間の」
「戦争で逃げてきた難民かしら、いい迷惑よね」
「対処してるみたいだし少し待ちましょ」
「こういうときは人間性が出るものよね」
それから少しして騒ぎを起こしていた人は駆けつけた警察に連れていかれた。
どうやらバルディスタの難民だったらしい。
国境の警備と検問が厳しい今不法に国境を越える者も少なからずいるという。
運行を再開した鉄道にチケットを購入して乗り込み王都へと向かう。
王都には知り合いもいるはず、アレイシャはその知り合いに会えないかと考えていた。
そうして鉄道は王都へと向かうのである。