天使の理由
銅龍の祠の調査は無事に終えたアレイシャ達。
そこで今回も本人である銅龍に出会う。
そしてここでもその気配を感じ取る。
白フードから何か聞き出す事は出来るのか。
「やっぱりあんたね」
「ほう、主が噂の天使様というものか、ほっそいのぉ」
「やかましい、それはそうと相変わらずのようだな」
「そうね、そっちもいちいち見にくる程度には暇なんじゃない?」
白フードは呆れた顔でこっちを見る。
とはいえ少しは物腰も柔らかくなったのか、殺気は感じない。
「あんた結構な憎しみを持ってる割に殺気とか感じないわよね」
「別に貴様達を憎む理由などないからな」
「同胞達も言っていたが、我らと同じく敵対心がなければ戦う理由もないか」
「それなのになぜ我々に突っかかるのですか」
白フードもアレイシャ達に興味はあるのだろう。
それにアレイシャの事にも気づいている様子だ。
あえて言及はしないが、その秘密には確実に気づいている。
それはそうと天使様についても訊いてみる。
「あなたはなぜ天使様なんて名乗るの?」
「そのままの意味だと言えばいいか?」
「まさか同胞達が言っていた人間でないものの感覚とは…」
「天使って事なの?」
とはいえその姿や顔は深く被る白フードとローブによって確認は出来ない。
だが言葉をそのまま解釈すれば、彼女は人間と天使のキメラ的なものになるのか。
それは分からないが、言葉のままというのはそういう事ではないのか。
少し引っかかっている疑問の答えはそういう事なのか。
「まあいいです、それはそうと以前聞いた針の事といい、意外と協力的なのですか?」
「別に敵対する理由もないからな、ただ教えられる事は教えてもいいだけだ」
「意外と親切ですね、もっと冷酷な人だと思っていました」
「全くだ、裏でやっていた事を考えても残忍とも思えん」
白フードは少なくとも無意味な争いはしないタイプのようだ。
だが以前の旅の途中で見た異形は確かに彼女が与えたもの。
望むなら力を与える、という事なのか。
いまいち読めてこない相手である。
「だがなぜお主はエメラダ教を憎む?その体に理由があるのか?」
「それはそのうちにでも分かる、あいつらが何をしているのかもな」
「それがエメラダ教の秘密ってわけね」
「そこは今は教えてくれないのね」
白フードはあくまでもそれを見て考えろと言いたいのか。
だが結局彼女の憎しみはエメラダ教にのみ向けられているのだろう。
「あなたは結局のところ人ではなくエメラダ教を憎悪している、そうですね?」
「それなのに人間を憎んでいるような言葉を選ぶのはどうなんだかのぉ」
「ふん、言葉なんでものはどんな言葉を選ぼうと勝手だろう」
「誤解を招くだけよ?言葉は難しいから」
とはいえ彼女の背景も少しだけだが見えた気がする。
白フードは自分で確かめろとだけ言い残し去っていった。
銅龍も白フードの事は一応伝えると言い残し去っていった。
アレイシャ達は廃墟を出て次の目的地を定める事に。
今日はもう日が落ちそうなので街で一夜を明かす事にした。
各自自由にした後そのまま夜が明けていく。
早朝に宿をチェックアウトして飛行船に戻る。
そこで次の目的地について考える。
「次は最後になるわね、金龍の信仰のある土地に行くわよ」
「長かった信仰巡りもこれで最後なのね」
「そうなりますね、そのあとはすべき事をすればいいかと」
「つまりヒルデの石化を治す時守の針を探しにいくのね」
とりあえずは金龍の信仰のある地へ行くのが先だ。
そのあとは時守の針を探しにいく事にする予定だが。
「とりあえずは金龍の信仰のある国へお願い、その後の予定はそれからよ」
「分かったわ、どこまでも付き合ってあげるわよ」
「アレイシャ様もお人好しですね」
「それでこそですよ、アレイシャは」
そんなわけで目的地は決まった。
最後の龍の神、金龍の地へと向かう。
「それじゃ行くわよ」
「ええ、頼むわよ、エイル」
「ここまで来たらどこまででも付き合ってあげるわよ」
「それが決めた事だものね」
そうして金龍の地へと飛び立つ。
金龍とはどんな龍なのか。
そして次の新たな予定も立てる事となる。