暗闇の中の瞳
砂龍の祠の調査は終えたアレイシャ達。
そこで今回も本人である砂龍に出会う。
そして今回もいつものようにその気配を感じ取る。
白フードの瞳には何が映るのか。
「やはり貴様か、噂に聞いている白フードよ」
「相変わらず様子を見にきたのね」
「貴様らも暇そうだと思ってな」
「あんたがそれを言うの?」
白フードもそんな皮肉を言いつつもアレイシャ達が気になるのか。
とはいえそのフードの下は窺い知れない。
「ふん、龍の神も意外と暇そうではないか」
「そうだな、我らとて復讐のための準備に忙しいのだ」
「それはそうと相変わらず顔は見せてくれないのですね」
「そんな深々とフード被ってたら目が悪くなるわよ」
どうでもいいような事をぶつけるアナスティア。
だが白フードはフードの中からその眼光を見せる。
それは鋭いというより、どこか悲しげな眼光。
その瞳は何を見ているのだろうか。
「貴様はやはりただの人間には見えんな、人間と別の生き物の力を感じる」
「それ他の龍の神様も言ってたわよね?人間と別の生き物?」
「やはり神を相手にしては隠し切れんか、とはいえそれについてはいずれだ」
「つまりあなたは複数の生物を結合した存在という事ですか?」
砂龍の言う人間とは別の生き物の力。
つまりはキメラ的な何かという事になるのか。
本人もそれは認めたのだが、今は明かそうとしない。
明かすときが来るとしたらそれは以前言っていた滅びた都市でなのか。
「でもあんた焦らすわよね、そんなに私達を驚かせたいの?」
「貴様の秘密は大層なものだと感じるがな、違うか?」
「私の秘密か、それは時が来れば明かしてやる」
「やはりエメラダ教が関係している秘密なのでしょうか」
白フードの憎しみの矛先はエメラダ教だ。
その秘密を知っているわけだし、その当事者だと思われる。
過去に彼女がエメラダ教に何をされたのか。
そこがターニングポイントなのだろう。
「まあいいわ、でも焦らされるのもイライラするのよ」
「言われているぞ、とはいえ我々もその実態までは知らんがな」
「ふん、人間の業というものはどこまでも深いものだ、そうだろう?そこの女騎士」
「私?何を言っているのかさっぱりね」
白フードはやはりアレイシャの秘密に気がついている。
死して蘇生させられた生きる屍であるという事に。
それについてはエロイーズも知らないわけだが。
とはいえ白フードにはいつ感づかれたのか。
「やれやれ、つまり貴様はその人間の業によって生まれた、そう言いたいのか」
「それ以外にあるというのか」
「人間の業ですか、それはどこまでも深い深淵ですよ、私はそう思います」
「ヒルデらしい言い方よね」
白フードの言う人間の業。
アレイシャの事に感づいているからこその言葉なのだろう。
それは同族を見る目なのか、それとも。
瞳の先に何を見ているのか。
「まあいい、時が来れば全て話してやる」
「それがお前の覚悟か?」
「ならそのときまで待ってやるわ」
「ですね、焦る必要はありません」
それだけを言い残し白フードは去っていった。
砂龍も白フードの事について少し気になるようで、調べると言い去っていった。
アレイシャ達はそのまま遺跡を出て街に戻る。
今日はこの街で一夜を明かすとして、次の目的地も決める事に。
「次の目的地はどうしますか?」
「ここから少し遠いけど、銅龍の信仰の国があるからそこに行くわよ」
「銅龍ね、ならどこへでも飛ばしてあげるわよ」
「それにしても地図にチェックつけてるけど、あと少しよね?」
今確認出来る限りではあと数ヶ所といったところか。
次の銅龍と恐らく最後になるであろう金龍。
そしてあと一ヶ所ぐらいといった感じである。
それとヒルデの手の石化を解く時守の針も探す事も忘れないように。
「では明日の早朝にその国へ飛びますよ」
「分かったわ、それじゃ今日は休みましょう」
「お腹空いたしたまには外食しましょうよ」
「いいわね、そうしましょうか」
そんなわけで今日は少し贅沢をする事になった。
エイルの大食いで店が泣いていたのは言うまでもない。
銅龍とはどんな龍なのだろうか。