その命は闇に消える
ここはバルディスタ帝国。
その日騎士アレイシャに任務が下された。
それは辺境の谷に出る黒竜の討伐。
アレイシャは精鋭と信頼する副官、ネグルを連れその谷へと来ていた。
「ここがその谷ね」
「はい、ここに数日前から黒竜が住み着いているそうです」
一見すると静かなその谷。
だが次の瞬間耳をつんざくような声が響いた。
「来る、陣形を取れ!確実に仕留めるわよ!」
「はい!各自、定位置を取れ!」
次の瞬間大きな影が騎士達を覆う。
それは本物の黒竜。
並の騎士や冒険者では歯が立たない相手だ。
「怯むな!的確な攻めと守りに徹するのよ!」
「弓隊と銃隊は翼を!魔法隊は援護を!まずは地面に落とすのです!」
黒竜の炎をシールド部隊で凌ぎ魔法による援護と銃と弓による攻撃が始まる。
黒竜は次第に押され始めた。
だが黒竜を地面に落とせそうになった次の瞬間、アレイシャの胸を何かが貫く。
「…え?これは…あれ…は…」
「アレイシャ様!?黒竜の攻撃じゃない…誰が…誰がやった!!」
だが連れてきた部隊は全て黒竜に応戦している。
つまりこの場の人間ではない者がアレイシャを射抜いた。
「はぁ、はぁ…」
「アレイシャ様!後ろは!」
後ろによろめいたアレイシャ。
そのまま崖は崩れ谷底へとアレイシャは消えていった。
「アレイシャ様!クソッ!今は黒竜が先だ!各隊!怯むな!」
谷底へ消えたアレイシャ。
だが彼女は自分を撃った何者かを少しだが見ていた。
黒竜は討伐されたもののアレイシャは行方不明。
部隊は捜索を諦め国に帰還した。
国に戻り言い渡されたのはアレイシャの殉職。
そしてネグルの中隊長への特進だった。
これは歴史から忘れられようとした騎士の存在を証明する物語。