風龍の祠
風龍の祠を目指し山を登るアレイシャ達。
山小屋で一夜を明かし早朝に再び祠のある七合目を目指す。
とはいえ強い風の音で眠れなかった者もいるようだが。
そんな土地柄なのか、この山の風は強い。
「さて、では七合目を目指しますか」
「ヒルデってどこでも寝れるわよね、羨ましいわよ」
「私なんて風の音で眠りが浅いってのに」
「昔傭兵をしていたという事ですし、どこでも眠れるように訓練されているとか?」
それはそれとして登山を再開する。
山小屋を出て七合目を目指して歩き始める。
「相変わらず風が凄いわね」
「流石は風龍の土地というだけはあるのでしょうね」
「そうね、この風の強さも風龍の存在を示しているのかも」
「神の力というのは信仰の強さに応じてその強さが変わりますからね」
ゼスフィの言う通りなら土地に直接的な影響が出るのか。
彼女自身死神という事もあるからなのか、それには敏感なのか。
なんにしても神の力と信仰の強さには密接さがあるようだ。
今思えば戦争の時もコレアムの宗教の話は聞いた事があった。
それも開戦に影響していたのかは定かではないが。
信仰というのは強くなるほどに人を盲目にし狂わせるものなのかもしれない。
そんな事を考えつつ六合目に到達する。
もう少しで祠のある七合目だ。
相変わらず道を塞ぐ木のような岩をぶっ飛ばしていく。
そうしてしばらく歩き七合目に到達する。
「ここが七合目ですね、近くに祠があるはずです」
「あそこじゃないかしら」
「恐らくあれでしょうね、行ってみましょう」
「この風は本当になんとかしたいけど」
そうしてその方向へ進むとそこには山林の中に祠があった。
とりあえずそれの調査をする事に。
「ここは洞窟の中じゃないのね」
「今までは基本的に屋内でしたからね、屋外もあるのでしょう」
「でも屋外だとこの風だし、削られたりしちゃわないの?」
「一応神の祠ですからそう簡単に壊れるような事もないと思いますよ」
そんな話をしつつ調査を進める。
それからしばらくしてその調査を終える。
そしてその直後いつものようにその気配を感じ取る。
後ろを振り返るとそこには細身の優男が立っていた。
「君達か、僕達の事を調査しているというのは、それに死神もいるというのは本当か」
「あなたが風龍なのね」
「なんかチャラそうね」
「一応神様ですし言葉は選ぶべきでは?」
まあそれはさておき風龍もアレイシャ達の事は聞いているようだ。
そして天使様についても話は聞いているようで。
「それにしても死神が人間についているとは、一人も死んでいないのも意外だね」
「確かに私が関わると不幸が起きるとは昔から言いますよね」
「でもゼスフィは前からずっと一緒だけど危険に遭遇した事も特にないわよ?」
「死神というのが本当かどうかは気になっていますけど」
そんな中ヒルデが少し質問をする。
それは手袋の下にある石になった手の事。
「そうだ、この手の事について何か存じませんか?」
「石化した手?魔力の残滓を感じるな、恐らくそれをやったのは天使だろう」
「天使?でもこの世に天使なんているの?」
「あの白フードなのかしら」
風龍の話では天使はいるという。
だが何者かに捕らえられそれを知る人間はまずいないそうな。
恐らくヒルデの手をやったのはその捕縛から逃げた天使。
人を恐れヒルデを敵と判断し襲い、それに抵抗したヒルデの手を石にしたのだろう。
ヒルデは顔は見ていないと言う。
風龍が言うには天使が逃亡し潜伏していたところにヒルデが遭遇したという事らしい。
「治療は可能なのでしょうか?」
「ふむ、だとしたら時守の針というものを探すといい、それを使えば治せるはずだ」
「時守の針?なんなのよそれ」
「でも治療手段はあるのね、よかったじゃない」
手袋をはめ直した直後に今回もその気配を感じ取る。
どうやら祠から少し離れた場所のようだ。
「出たか、行くぞ」
「今度こそ正体を暴いてやる」
「彼女の事も気になりますしね」
「天使様、秘密も気になるものね」
そうしてその方向へと向かう。
今度こそ何か聞けるのか。
天使の存在は何か関係があるのだろうか。