紫龍の祠
紫龍の祠を目指し修練場を進むアレイシャ達。
順調に修練を突破し祠までもう少しのところまで来ていた。
修練自体はシンプルながらも多少面倒なものが多い。
それでも各自のスキルを活かして奥へと進む。
「扉が開いたわよ」
「はぁ、面倒だったらないわ」
「それでも行くのみですよ」
「そういう事ね、ほら、行くわよ」
そんな文句も言いつつ奥へと進む。
そして次の仕掛けが待っている。
「次は…燭台に火を灯せって事みたいね」
「火を灯すのに使う木の棒がありますね」
「なら私がやるわよ、待ってなさい」
「なら頼むわね」
ここはエロイーズが木の棒を使い次々に火を灯していく。
足は速いのでスムーズに着火して扉が開く。
「ほら、行くわよ」
「エロイーズも文句言いつつもいい人よね」
「クールでもなんでもないですし素直でもないですね」
「それが可愛いと思うんだけどね」
そうして奥へと進む。
そこには目的の紫龍の祠があった。
やっとという事もあり、調査を開始する。
こういうのはたまにはいいが、毎回は嫌である。
「それにしても修練場に祠を置くとは面倒なものですね」
「信仰の一環なんでしょうね、恐らくは」
「若者を大人として認めるため、とかでしょうか」
「そういう事をする慣例もあるって事よね」
それから少しして祠の調査を終える。
すると背後に気配を感じ取る。
そこにいたのは屈強な姿をした筋肉質の男。
どうやら彼が紫龍のようだ。
「お前達が我らの事を調べているという者達か」
「あなたが紫龍なのかしら、ずいぶんと強そうね」
「ゴリゴリのマッチョマンね、肉弾戦が強そうだわ」
「一応神様ですからもう少し丁寧に話してもいいのでは?」
紫龍はそれに対してガハハと笑ってみせる。
別にかしこまる必要はないとの事らしい。
紫龍曰く神様だからといって気難しくならなくてもいいとの事。
そういう豪放磊落な性格なのは見た目の通りなのか。
「でも神様も意外と友好的と捉えていいのかしら?」
「そうだな、神とて人と交流は持ちたいもんだ、多くの神はそう考えてる」
「そうなのですか?つまりもっと身近になりたいと?」
「なんか意外ですね、神は人を見守るものと思っていました」
紫龍曰く実は神はお忍びで人間界に行っているらしい。
当然人間に擬態しているので、神だと気づく事はまずないのだという。
それを聞いたアレイシャ達も驚いている様子だった。
とはいえ神が人の世界で暮らすのは何かと難しいらしいが。
「あんたが言う事が正しいなら実は神様はそこら辺にいるって事?」
「そこら辺にはいないさ、だが人間界に密かに行ってる神は意外と多いぞ」
「それは面白い話ですね、とはいえ見分ける手段が分からない以上接触は厳しそうです」
「そういう神様にも話ぐらいは聞いてみたかったのだけれどね」
そんな紫龍の話に関心を示しつつもやはり気になる様子。
紫龍が言うには別に神は人間を攻撃したりはしない、だが人の事は気にかけているとか。
だが下手に干渉してしまえば世界のバランスが崩れてしまう。
そんな事もあってなのか人の争いに介入する事は決してしないそうな。
「やはり神というのはそれだけ大きな力を持っているのですね」
「下手に干渉出来ないのもそんな力の大きさからよね」
「そういう事だ、でも神は意外と身近だって事は知ってていいぜ」
「なんかとんでもない事実を聞いた気がしますね、これは」
紫龍も人間は好きだという。
だからこそ下手に干渉せずに自由に生きているとか。
当然アレイシャ達にも敵対する意思がない限り手を出す事はしない。
それが神としての自覚なのだろう。
「ですがそれを言ってしまってよかったのですか?」
「どうせ喋ったって見分けられねぇだろ?なら問題ないさ」
「それはそれでね」
「気になる…本当に」
すると後ろの部屋から今回もその感覚を感じ取る。
あの白フードが出たのだろう。
「出たみたいだな、お前らも来い」
「今度こそ何か聞き出してやるわ」
「天使様、何者なのやら」
「聞けるといいのだけど」
そうして後ろの部屋に戻る。
今度こそ何か聞き出せるのか。
白フードの目的、それは彼女の過去に関係しているのか。