大食らいの怪物
聖龍について調べるアレイシャ達。
現在は祠に向かっているのだが、気になる話も。
話に聞いた食べ物を要求する魔物のようなもの。
遭遇した場合に備え食べ物を所持して祠を目指す。
「本当に食べ物を要求する奴なんて出るのかしら」
「食べ物を与えれば危害は加えないそうですし、一応様子見ですね」
「そうね、まあ平気だとは思うわよ」
「食べられたりしませんよね」
流石にそれはないとは思いたいものだ。
とはいえ万が一襲われた場合に備え戦闘態勢は取っておく。
「土砂崩れがあったのはこの先よね」
「みたいね、所々に砂が散ってるし」
「土砂崩れがあったのも大雨のせいですか、自然には勝てないものですよ」
「流石に自然に勝ったらどこの神様ってなるものね」
そうして歩いていると土砂崩れがあった場所に到達する。
見事に土砂に道が塞がれていてこのままでは進めない。
そんなわけで爆薬の出番である。
崩れた土砂の近くに爆薬を置き火をつけそのまま距離を取る。
大きな轟音と共に土砂がふっ飛ばされる。
これで先に勧めそうである。
「土砂程度なら一撃ですか、流石ですね」
「爆薬ってやっぱり効くのね」
「発破しちゃえばイチコロよね」
「あとは噂のあれね、気をつけて進むわよ」
発破した土砂を越えて先へと進む。
祠があるのはこの道の先にある隣の森の中だ。
祠が近づいたそのとき、何かの気配を感じ取る。
そしてどこからか声が聞こえる。
「くれくれ、食べ物くれ」
「こいつがそれなの?」
「おっきいわねぇ、なんなのこいつ」
「食べ物を要求しているようですね」
明らかに大きなその肢体。
どこか丸っこくずんぐりむっくりなその体に威圧される。
「くれくれ、食べ物くれ」
「本当に食べ物を要求してるわね、どうするの?」
「下手に機嫌を損ねるのも怖いですよ」
「…何か希望でもありますか?」
言葉は通じるっぽいのでヒルデが希望を聞いてみる。
するとその大きな奴は注文をしてきた。
「ほうれん草をくれ」
「ほうれん草ですね、これでいいですか?」
「言葉が通じるのね、というか普通に人語を話してるし」
「何なのかしら、この子」
指定されたほうれん草をあげるとそいつは美味しそうにそれをバクバクと平らげる。
そして満足げな顔をしていた。
「食べ物アリガト、お前達いい奴、じゃあな」
「行っちゃった、結局何なの?」
「さあ?でも悪い奴には見えませんでしたね」
「もし拒否してたらどうなってたのかしらね」
それについては考えても仕方がない。
そんな中話を思い出す、それは食べ物を与えれば襲わないという事。
つまりあの大きい奴は食べ物の匂いを嗅ぎ分けられるのだろう。
そして食べ物を持っている冒険者や旅人を狙って声をかけていたと思われる。
食べ物を与えた人は助かっているが、拒否した人はどうなったのか。
恐らく言うまでもない事になっていたと思われる。
「あれの要求を拒否したら恐らく襲われてお陀仏ですかね」
「満更でもないから困るんだけど、ヒルデの話は」
「でもやっぱり気になるじゃない」
「私は餌になりたくないですからね」
フィセアの真剣な目はあれだ。
人魚という事もあって、餌にならないかという事でもある。
流石にそれはないとは思いたいものだが。
それでもあいつが拒否した人を襲っている可能性はある。
少しゾッとしつつも先に進む事に。
あのくれくれの怪物は結局なんだったのかは分からないままである。
「そういえば大雨があったって事は、今は雨季なのかしら」
「雨季ではないと思いますよ、この地方の雨季は秋頃ですから」
「でも季節外れの大雨とかってあるものよ、自然なんてそんなものだもの」
「ですね、春に雪が降るなんて事もありますから」
そんなこんなで祠に向かって改めて進む事に。
やはりヒルデは説明役なのだと改めて思っていた。
「祠までもう少しよ」
「ならさっさと行きましょ、雨は降らなさそうだし」
「大雨があったのならしばらくは雨はないでしょうし」
「この先ですね、行きましょう」
そうして祠のある森が見えてくる。
聖龍とはどんな人物なのか。
今回も遭遇はあると思いつつ先へと進んでいく。