天使が憎むもの
地龍の谷で調査をしていたアレイシャ達。
そこで地龍に出会い勧誘を受けるもその気はない事を確認する。
そんな中今回も例の感覚を感じ取る。
例の白フードが来たのだと思い外へと出る。
「やっぱあんたなのね」
「貴様らは相変わらず神について調べているのか」
「ええ、とはいえ神様については不確定ですが」
「それより噂の白フードはあなたね、少し話しましょう」
白フードはフードを深く被っていて顔を窺い知る事は出来ない。
だが声からして女性であるとは分かる。
「あなたは宗教を憎んでいると言いましたね、人体実験でもされたのですか」
「エメラダ教は確かに裏で何かとやってるけど、それについて知ってるのよね?」
「そうだな、私はそんなエメラダ教の闇によって生まれたものだ」
「つまりやっぱり何かあるのね、人間の業ってやつかしら」
白フードの言うエメラダ教の闇。
それについてはエロイーズも知らない事なのだろう。
以前言っていた滅びた街。
そこに白フードに関係する何かがあるのは確定だとヒルデは踏んでいる。
「少なくともそこまでの憎悪に繋がるからには壮絶とか凄惨とかそういう事かしら」
「以前滅びた街と言っていましたね、それはあなたに関係していて確定ですか?」
「そうでなければ教える理由もないだろう」
「つまりやっぱり何か酷い事をされているのよね」
白フードがされた事。
それは恐らく想像よりも遥かに凄惨な事か壮絶な事なのだろう。
ここまでの憎悪を抱かせるに至った何か。
エメラダ教の過去に関係する深い闇なのだろうか。
「それと滅びたという事は過去形よね?少なくとも今はそれはやってないと」
「そうでなければ過去形にする理由になりません」
「そうだな、それは過去の話だ、エメラダ教が昔やっていた事の話だな」
「要するに人造生命体とかそういうものって事でいいのかしら」
確かに人工的に魔眼を作り出す技術をエメラダ教は持っている。
それだけでも相当な技術力を有していると窺い知れる。
だが天使様の言う言葉からはそれ以上の闇が垣間見える。
恐らくは人工的な魔眼などとは比べ物にならない何か。
「貴様らは最終的に何をする気だ?私を討つか?エメラダ教を滅ぼすか?」
「そんな大層な事をするつもりはないわね、世界を変える?本気でそんな事が出来るとでも?」
「アレイシャはこう言ってるわよ、つまり大層な真似はしないって事よ」
「少なくともこの人間達にそんな大層な事が出来るとは私も思わないもの」
地龍もそれは理解しているからなのかその言葉には賛同しかねるようだ。
なのでアレイシャ達は勝てない喧嘩はしないのだろう。
とはいえ今後何かしらが起こる可能性は考えている。
だからこそ龍の神や天使様という勝てそうにない相手に喧嘩は売らないのである。
「そういう事よ、あんたも龍の神も私達の管轄外って事ね」
「我々はあくまでも興味があるから調べている、ただそれだけです」
「この子達はそう言っているわよ?天使様」
「なら勝手にすればいい、だが闇に触れたとき闇が追いかけ始めるという事を忘れるな」
天使様のその言葉は忠告なのだろう。
その闇というのがさっきも言った滅びた街の事なのだろうとは思う。
喧嘩をしたくなくとも闇に触れたとき闇から喧嘩をふっかけてくるのかもしれない。
エロイーズが同行していてエメラダ教の闇に触れるという事の意味でもある。
「私はあくまでも見ているだけだ、だが闇は触れた相手を飲み込むという事を理解しろ」
「エメラダ教の闇、あなたがその闇を詳しく話さない理由かしら」
「別に知ろうとも思いませんが、興味はあるだけですよ」
「人間の業、それがその闇なのね」
天使様はそれだけ言い残しそのまま去っていった。
地龍もその人間の闇については仲間に話してみる事にすると言い去っていった。
「とりあえず私達も撤退かしら」
「次の信仰の地も調べないといけないしね」
「では街に戻りますか、一晩泊まってから発ちましょう」
「戻るぐらいで日暮れだしね」
そうしてアレイシャ達は荒野の街へと戻る事に。
次の信仰の地はどこになるのか。
アレイシャの言った言葉は傲慢ではないという事の意思表示なのか。