白い憎悪
白龍の祠を調べ終えたところで白龍に出会ったアレイシャ達。
そんな中またしてもあの気配を感じ取る。
それは今までも出会っているあの白フード。
何者なのか今度こそ暴いてやれるのか。
「貴様か、話に聞いている白フードは」
「今度こそそのフードを剥いでやるわ」
「出来るのか?人間風情が」
「人間風情?やっぱりあなたは人間ではない…」
白フードはその言葉からしてやはり人間ではないと感じる。
以前のエロイーズの早撃ちを簡単に避けた事からもそれは明らかだ。
「貴様はなぜ人間の宗教を憎む?人間そのものが憎いとでも言うのか」
「私は人間の手で人生を狂わされた、人間を憎んで何が悪い」
「つまり自分を滅茶苦茶にした連中への復讐という事でよろしいですか?」
「復讐だとしても相手が大きすぎるんじゃないの?」
白フードは自分の人生を破壊した人間、そして宗教を憎悪しているようだ。
だが人生を破壊されたというのがどうにも気になる。
そして人間ではないという事も分かる。
一体何が彼女にあったというのか。
「復讐を否定はしませんよ、ですがあなたはそれで満たされるのですか?」
「馬鹿を言うな、復讐とは満たされるためにするものだ、そんなの当たり前だろう」
「そうだな、貴様の言い分は間違っていない、だが無関係な人間も殺すのか?」
「復讐するのは勝手ですが無関係の人を巻き込むのは見過ごせません」
白フードの言う満たされるための復讐。
それは復讐という行為の真理であり、目的としては至極真っ当なものだ。
だが何が彼女にここまでの憎悪を抱かせるのか。
そんな中彼女は何を思ったのか、ある場所を教えてくれた。
「エメラダ教の総本山のラーナ、そこから北にある今は滅んだ街に行けば分かる」
「北にある滅んだ街?初耳ですね、そんなところに街があったとは」
「ヒルデが知らないって事は結構昔の話なのかしら」
「そこに貴様に関係する何かがあるというのか?」
白フードはそれ以上は言わなかった。
アレイシャ達も今は龍の神に関係するものを調べるのを先にした。
「それはそうと貴様、目的は本当に復讐なのか?」
「そうだ、そのために利用出来るものは利用する」
「今までに見たものもそんなものなのかしら」
「試すとか言ってたけど、あれは観察なのね」
とはいえ白フードに関する事情も少しずつ見え始めた。
人生を狂わせた宗教や人間への憎悪と復讐。
そして人間ではないという事。
だが神のような超常とも違うという事だ。
「ふぅ、無益な殺生をするのかしないのか曖昧な人ですね、あなたは」
「敵対心がない者を殺すほど愚かではない、だが敵対するのなら容赦はしない」
「そこは一応信念みたいなものはあるのね」
「ですがなぜ天使様などと…」
ゼスフィが気になっていたのは天使様という呼び名の事。
本物の天使ではないのはゼスフィも感づいている。
だが彼女からは確かに天使のそれを感じ取れる。
そもそも天使は地上に下りる事自体稀な存在。
神もそうだが超常の存在自体人間界では珍しいのだ。
天使ではない、だが天使のそれを感じ取れるジレンマだ。
「私は今後も目的のために動き続ける、止めたくば干渉するか?神よ」
「我々が干渉出来ないと理解していてやっているのか、賢い奴め」
「なんにしても話は分かりました、時と場合によってはこちらもそのつもりですので」
「ヒルデも宣戦布告って事ね、時と場合によっては、だけどね」
そうして白フードはそのまま姿を消した。
白龍も天使様の事は龍の神達で探ってみるという。
それだけ言い残し白龍も去っていった。
白フードの復讐、龍の神の復讐、それは何か哀しさを感じさせた。
「とりあえず村に戻りますか、今夜は村に泊まり明日次へ向かいます」
「次はここから一番近いのは北東にあるアマイグに地龍の信仰があるわ」
「ならそれにしましょ」
「そうね、少し遠いけどどこでも行ってあげるわ」
話もまとまり村へと戻る事となった。
その日は村に泊めてもらい、早朝に北東へと飛び立つ。
アマイグという国にある地龍の信仰、龍は色や自然で区分けされるのだ。