白龍の炭鉱
雪男こと山の主とは争いは避けられたアレイシャ達。
そのままその足で炭鉱へとやってきた。
その炭鉱の中に白龍の祠はあるという。
妙なところに祠があると思いつつもその炭鉱へと足を踏み入れる。
「中も相変わらず寒いわね!」
「エロイーズはストレス耐性低いのね」
「流石にこの環境では誰だって口にしたくなりますけどね」
「ヒルデのストレス耐性強すぎよね」
とりあえず炭鉱の中を奥へと進む。
そこはこの季節は使われていないので静かに音だけが響いていた。
「ほんっと、雪国なんて…」
「エロイーズさんは少しはストレス耐性を身につけるべきでは」
「ヒルデは顔色一つ変えない辺り鋼鉄の女って感じよね」
「鋼鉄というより氷河の女みたいな」
ヒルデは確かに基本的に表情が薄い傾向にある。
単に感情を表に出さないだけと言うか。
それは過去に伝説の傭兵と言われていた名残なのか。
感情を表に出さず氷の女を演じているのか。
「そもそもエロイーズさんがスパイというくせに感情を出しすぎです」
「それはあるわね、スパイって普通は機械みたいに粛々とやるものでしょ?」
「うっさいわ、私だって人形じゃないっての」
「なんかスパイという割に感情豊かって分かりませんよね」
エロイーズはスパイという割に口が達者だし感情もガンガン出す。
口達者は相手を丸め込むのには必要なのかもしれないと言えばしれない。
「なんかエロイーズとヒルデを見てると本当に対極にあるって思うわ」
「氷の傭兵と炎のスパイ的な?」
「でもヒルデって火の魔法とかが得意なのよ、こう見えてもね」
「氷の中の情熱ですね、まさに」
そんな話もしつつ奥へと進む。
音だけが響く炭鉱はどこか不気味で静寂さが恐怖を煽り立てる。
そのまま奥へ進んでいくと祠を見つける。
これが白龍の祠だろうか。
「これが白龍の祠みたいですね」
「環境だからなのか冷気が液化してそのまま染み付いてるわね」
「腐らないのは祠が木じゃなくて石だからよね」
「この環境では木の祠なんて一ヶ月持たずに壊れますからね」
すると背後から何者かの気配を感じる。
振り返るとそこには少年が立っていた。
「なんだ、お前達が報告で聞いてた奴らか」
「あなたが白龍なの?見た目は若いのね」
「なんか緑龍はロリババアなら白龍はショタってなんなのよこれ」
「あら、可愛いと思うわよ?飴なめる?」
その少年が白龍なのは間違いなさそうだ。
とはいえその幼い少年が白龍というのも緑龍に続く驚きである。
「お前達は我らの事を調べているのだろう、それなら祠なんかより文献でも漁れ」
「それもいいんだけど祠に出向けば本人が出てくるかなと思ってるのよ」
「それでわざわざね」
「それはそうと白龍殿は話は聞いているのですね」
白龍も緑龍などから話は聞いているようだ。
この地の事も訊いてみる事にする。
「この地に豪雪を起こしているのはあなたなのですか?」
「そんな事はしてないぞ、この地は元々こういう土地だ」
「でも信仰のある村の人はあなたの加護とか言っていたわね」
「結局は信じるものの違いなんでしょうか」
白龍が言うには人間の世界に干渉する事自体禁じられているらしい。
特に自然などを操るのはご法度だという。
とはいえ加護自体は与えているのでそれが弱まると自然に異変は起きるらしい。
それが神の力の一部なのだそうだ。
「我はあくまでも信仰の強さに応じた加護を与えているに過ぎんからな」
「なるほどね、この国の寒さなんかは土地柄でその異変が信仰なのね」
「なんとなく神の力について分かった気がします」
「話は通ってるから対立の事はもう言うまでもないのね」
すると白龍が何かを感じ取る。
アレイシャ達もそれには覚えがあった。
とりあえず話は一旦置いておき外へと向かう。
白龍もそれについては気になっていたようだ。
「奴だな?」
「恐らくはそうだと思います」
「とにかく行ってみましょう」
「そうね、外に行けばいるはずよ」
そのまま炭鉱の外へと向けて進む。
そこに待つのはあの白フードなのだろう。
白フードは一体何をしたいというのか、それを聞き出せるのだろうか。