雪男の正体
白龍の祠のある炭鉱を目指すアレイシャ達。
その道中では強烈な吹雪が襲いかかる。
そんな中噂の雪男の事も気になっていた。
姿を見せたらそれの正体も暴いてやるつもりで前へと進む。
「寒いわね!」
「今さら何を言ってるんですかね」
「ヒルデはストレートよね」
「それがヒルデらしさではあるんだけど」
なんにしてもその炭鉱のある方へと歩く。
すると遠くからかすかに何か声のようなものが響く。
「ねえ、今の聞いたわよね」
「ええ、小さいけど確かに何か雄叫びみたいなのが」
「噂の雪男かしら」
「危険は承知です、声の方へ行けば炭鉱に行けるはずですから行きましょう」
そうして炭鉱の方向と一致する声のする方角へ進む。
歩くにつれ声が少しずつ大きくなる。
そのまま歩いていると声が聞こえなくなった。
だが今度は足音らしきものが聞こえるようになる。
「何かが近づいてきますね」
「まさかとは思うんだけど」
「そのまさかよね」
「ええ、というかもうすぐそこに」
気づいたらすぐそばに巨躯の生き物が立っていた。
これが雪男なのだろうか。
「あのー、何かご用ですか?」
「オマエタチ、イイニオイスル、ナニカクイモノモテルカ」
「いい匂い…もしかしてこれ?」
「それって干し肉よね」
するとその雪男らしき生き物は干し肉を要求してきた。
渡せば襲われないかとも思ったので与えてみる事に。
「どうかしら」
「ウマイ、オマエタチイイヤツ、オデ、キニイタ」
「はぁ、それであなたは一体何なのですか?」
「見た目は毛皮がゴワゴワだけど」
その大きな生き物はこちらの言葉は理解出来ているようだ。
少しカタコトの言葉で話してくれる。
「オデ、ヤマノドウブツタチノボス、アイツラニクイモノ、クワセル」
「つまり山の動物達を束ねる存在ですか」
「でもなんで雪男になったのかしら」
「見た人が勘違いしただけなのかしら」
どうやら雪男ではなく人の言葉を理解出来る亜人のような種族のようだ。
本人が言うには人間達を襲うつもりもなく勝手に勘違いされたそうな。
それに安心したのかアレイシャ達もほっと一息である。
そんな中彼?は山の動物達が冬は食べ物に困るので下りて手に入れていたという。
それを雪男だの白龍の守護者だのと勘違いが大きくなったらしい。
元々人を襲う事はしないためそうなったのだろう。
「それはそうと種族的には大型の亜人種なのかしら」
「うーん、雪男ならそれで通じるんじゃない?」
「コノチイキ、サムイ、クイモノ、スクナイ、ダカラニンゲン、モラウ」
「地域特有の事情なのね、人里で食べ物を分けてもらうっていうのも」
その生き物は元々食べ物が少ないから人間に分けてもらいたくて山を下りるそうな。
冬が長い国特有の事情なのだろう。
「ならこれでいいなら持っていって、大したものじゃないけど」
「オマエ、イイヤツ、カワリニコレ、ヤル、オデニハ、イラナイモノ」
「これは…まさかスノウダイヤモンドの原石ですか、これ一つで凄い大金になりますね」
「スノウダイヤモンドって雪国でしか採れない凄く希少な宝石よね」
その大男は自分には必要ないものとしてスノウダイヤモンドを山ほどくれた。
ヒルデ曰くその数で市場価値に換算すると高く売れれば5000万ぐらいにはなるとか。
大男は食べ物のお礼としてその貴重なスノウダイヤモンドの原石をたくさんくれた。
獣達のボスという事もあってか、人間には貴重なものでも必要ないのだろう。
「ソレジャ、オデ、ヤマニカエル、クイモノタスカッタ、ゲンキデナ」
「…悪い奴ってわけでもなかったみたいね」
「宝石は帰ったら換金ですね、今はそれより白龍の祠のある炭鉱に行かねば」
「ですね、夜になったらそれこそ命の危険がありますから」
そうして炭鉱に向かって再び歩く。
大男の事は事情だけ話す事にはした。
「あ、見えてきたわよ」
「今は昼前ですか、なんとかなりそうですね」
「それじゃ急ぎましょう」
「ですね、時間には余裕を持たねば」
そのまま炭鉱へと向かっていく。
思わぬ形で大金になるものを手に入れたアレイシャ達。
日が落ちる前に炭鉱ですべき事を終わらせるのだ。