薄い雪の山を越えろ
ヒルデを追いかけその足跡を辿るアレイシャ達。
工場の街で聞いた銀山の街へ向かうべく山を越える事に。
この山は常に薄く雪が降るため少々冷える。
それでもその山越えを敢行するのである。
「うぅ~、流石に冷えるわね」
「我慢なさいな」
「アナスティアは元々薄着なんですから」
「それより早く越えましょう、夕方までには辿り着きたいから」
そうして山を登り始める。
少し登っていくと薄っすらとした雪化粧が顔を出す。
「滑るから気をつけてください」
「分かってるわよ」
「エロイーズって反抗的よね」
「というか口が悪すぎ」
そのまま山を少しずつ登る。
魔物も出るこの山を登るのも楽ではない。
「ふぅ、平気かしら」
「私は問題ないですよ」
「あたしはしんどーい」
「アナスティアは楽観的すぎるわよ」
そんな調子で山を登る。
すると何やら人の気配を感じ取る。
「む?君達は登山かな?」
「おっさんこそ何?登山なの?」
どうやら見た目からして登山者のようだ。
「とはいえ…そうね、あんた、戦争中なのに何してんの?」
「おや、鋭いお嬢さんだ」
「その格好…バルディスタの研究者!?」
「そのバルディスタの研究者が何をしているのかしら」
その登山者はバルディスタの研究者だった。
とはいえ争うつもりもないようだ。
「はぁ、そんな構えなくていいですよ、こっちも戦争で研究が手につかないのでね」
「そうじゃなくて、こんなとこで何してるのかと訊いているんだけど?」
その研究者は戦争で研究どころではないそうで、この国に避難しているという。
この山に来たのもちょっとした採取だそうだ。
「この国なら少しは研究も出来るかと思いましてね」
「なら…ある場所に行ってみない?」
アレイシャが提案をする。
恐らくそれは魔王城だろう。
「ある場所に?そんな場所があるんですか?」
「ええ、恐らく見てると思うしね」
「なんの事かしら」
「さあ…」
とりあえず少し外すと言いアレイシャは研究者を連れ岩陰へ。
「見てるんでしょ?」
「あの、何を…」
そして次の瞬間転送が始まる。
「ここは…どこなのですか?」
「付いてきて」
魔王城に着いたアレイシャはその研究者をミィアの下へ連れていく。
「お主、その研究者を妾に預けたいと?」
「ええ、いいかしら」
「あの、状況が飲み込めなくて…この子供は何なんですか?」
ミィアが軽く自己紹介をする。
「妾はミィア、魔王をやっておる、研究がしたいならここで働くか?」
「魔王…それで私に研究をさせてもらえると?」
ミィアは条件を提示する。
「ここの事を一切の口外をしない、そして妾に忠誠を誓う、それで好きなだけさせてやる」
「…分かりました、どうせ戦争でそれどころじゃない、それに乗ります」
ミィアはそれに妖しく微笑む。
「よかろう、望むものは好きなだけ言え、いいな?」
「は、はい、では後ほど必要なものをお伝えします」
そうしてその研究者はミィアの軍門に降った。
アレイシャはそのまま山に戻る。
「お待たせ」
「あれ?あの研究者はどこに?」
「まさか殺したとか」
「そんなはずはないでしょ」
事情はあえて伝えずにそのまま登山を再開する。
途中にある山小屋で少し休息を取り再び山を進む。
山小屋からは山を下りるだけなのであとはスムーズに進める。
「うわ、雪が積もってる」
「そんなもん解かせばいいのよ、燃えろ!」
「エロイーズってせっかちというか、豪快ですよね」
「クールになりたいのになんで熱い性格してるのかしらね」
そのまま雪を除去しつつ山を下りる。
そうして進んでいくと山の出口に到着する。
「やっと下りられたわね」
「銀山の街はこの先よ、そろそろ夕方だから」
「なら街で宿を確保して聞き込みは明日にしますか」
「それがよさそうね、疲れちゃったわ」
とりあえず山を抜け銀山の街へと到着する。
街は夕方の活気に満ちていた。
アレイシャ達は宿を取り適当に外食で食事を済ませる。
ヒルデについての聞き込みは明日改めて行う事になる。
だがここでもまたトラブルに巻き込まれるのである。
ヒルデに追いつけるのはまだ先になりそうだ。