隔絶された地
黄龍の信仰がある地の調査に向かうアレイシャ達。
だが条件として現地民との接触は禁じられている。
それは国が不都合としてこの地を隔絶しているからだ。
とりあえずは現地入りしその調査を開始する。
「ここがその黄龍の信仰がある地ですか」
「首都に比べると本当に酷いわね、荒れてるとかそんなレベルじゃないわ」
「軍人の監視もあるわね、私達も見られているし」
「とにかく行くしかないわ、変な真似はしないのよ」
そうして龍の神を祀ってある場所を調べる。
場所はどうやら村の外れにある鉱山のようだ。
「見たわよね」
「ええ、住民達が凄い痩せ細っていたわ」
「これがチェンワ国という国ですよ、国土が広いからこそです」
「さらにこの土地は隔絶されてるからよけいになのね」
そんな現実を直視しつつ鉱山へと向かう。
その鉱山では国のためにという事で鉱夫が今も働いているらしい。
そうしてしばらく歩き鉱山へと到着する。
そのまま中へと進み祠があると思われる場所を目指して歩き出す。
「酷いもんね」
「でも声をかけたらこっちも何かとされますよ」
「悔しいですね、本当に」
「今は我慢するしかないわ、我慢して進むのよ」
奥へと進んでいくアレイシャ達。
鉱山は作りも不安定で落盤を起こしても不思議ではなかった。
危険は承知の上で鉱山を進むしかない。
それはチェンワ国の闇を象徴する光景でもあった。
「本当に酷いわね、なんなのここは」
「チェンワ国の歴史には大虐殺は付き物ですからね」
「そうね、過去にもそうした大虐殺は何度か起きているもの」
「嫌なものですね、人間の闇の深さを感じます」
ゼスフィですら引いてしまうその闇。
それがチェンワ国の歴史なのだろう。
そうして歩いていると祠が見えてくる。
だが祠の周囲に人は見えない、国の監視があるため信奉も難しいのか。
「これがその黄龍の祠ね」
「国からの締め付けなのでしょうね、なかなかに汚れています」
「少し綺麗にしましょうか」
「せめてそれぐらいはね」
とりあえず祠を綺麗にする。
掃除を終えると背後から声がした。
「お前達か、我らを調べているというのは」
「あなた、もしかして黄龍かしら」
「わざわざ顔を見せたのですね」
「それにこの地の事はあなたはどう思っているのですか?」
黄龍は言うまでもなくそれを嘆いていた。
だが民の心の中からは信仰は失われていないらしい。
国の目があるところでは言えないものの、その感謝は伝わっているとか。
それでも人の世界に干渉出来ない事が悔しいとも言う。
「神は人の世には干渉出来ぬ、死神、お前はそれを自ら破ったのだな」
「ええ、私は恩義に報いるために掟を破りました」
「でもやっぱり失われないものってあるのね」
「密かにその祈りは捧げられているようですね、それだけでも大したものですよ」
黄龍もそんなこの現実に少しは安堵していた。
自分達の力になるのは信仰心の強さだからである。
やはり神というのは信仰の強さがその力に影響するのか。
元々の高い能力がさらに高まるそれこそが信仰心なのだろう。
「なんにしても国も下手には動けはしませんよ、監視が出来る精一杯でしょう」
「外国からの目を気にしてる国に今の時代そんな真似は出来ないものね」
「そうか、人間にもそういった体裁を気にするからこそ出来ない事もあるのか」
「そうね、だから少なくとも監視されるだけで殺されたりはしないはずよ」
黄龍もそれだけは安心なのだろう。
だがなんにしてもチェンワ国の非道さが消えるわけではない。
それだけは変わらないし国が考えを改めるとも思えない。
黄龍もそれを見守るしかない事だけは悔しそうにしていた。
そんな中黄龍が何かを感じ取る。
それを確認すると言い外へと行ってしまったためアレイシャ達もそれを追う。
「やっぱり出たのかしら」
「どうかしら、とにかく私達も行くわよ」
「ええ、急ぎましょう」
「天使様、ね」
そうして鉱山を出るアレイシャ達。
黄龍が感じ取ったのはやはり天使様なのだろうか。
天使様とは結局何者なのか、それを暴いてやりたいとも思っていた。