エメラダ教の裏側
一旦集落に戻ったアレイシャ達。
そこでとりあえず話をまとめる事に。
あのフードが天使様なのは確定だろう。
そしてエメラダ教の事も話してもらう事に。
「さて、話を整理しましょうか」
「まずはあのフードね、あいつが天使様なのは確かよ」
「あの、赤龍様の事もそうですが…」
「アタイ達は少しやる事があるだけさ、あんたは気にしなくていいよ」
赤龍は巫女を諭す。
巫女もそんな赤龍に何かを感じ取ったのか深くは訊かなかった。
「あの天使様は人間の作る宗教が下劣と言っていたわよね」
「まあ分からなくもないですけどね、とはいえ大宗派とカルト宗教は違います」
「大宗教だとエメラダ教とサファア教、あとはアメスト教の三大宗派ね」
「エメラダ教は世界に浸透してますね、サファア教は中部、アメスト教は東の国です」
そんな三大宗派の話。
そしてそこで気になるのがエメラダ教の話だ。
エロイーズはエメラダ教のスパイで人造魔眼を施されたという。
つまりエメラダ教には世界も知らない闇があるという事。
「それで、エロイーズ、あなたはエメラダ教についてどこまで存じていますか」
「そうね、あそこは孤児院という名目のスパイ育成をしてるわよ、私もそれ」
「つまり孤児を集めてそれをスパイに仕立て上げているっていうの?」
「三大宗派の中の最大宗派がそんな事してるって知れたら大変だろうに」
赤龍の言う事は尤もだ。
だがそれが知られない理由はきちんとあるらしい。
「主にエメラダ教が主流の国にはスパイが入り込んでて国を牛耳ってるもの」
「確かに宗教に国は関与出来ないという国際的な法律は存在します、まさかですね」
「そしてその秘密を漏らす事なく国の情報を集めてる、かしら」
「でもそんな事してどうするの?戦争でも起こそうとかかしら」
エロイーズもそこまでは知らないらしい。
とはいえ洗脳のようなものは基本的にされないという。
そのスパイ達は任務を遂行せずに逃げる事も出来る。
だがその事例は一つもないらしい。
なぜなら本部に知られれば人知れず消されるからだ。
エロイーズは元々は粛清担当なのである程度の自由が保証されているだけらしい。
「粛清担当、つまり世界を自由に行き来する権利があるのね」
「そういう事、国境を簡単に抜けられたのもそれよ」
「とはいえその人造魔眼も粛清をするためのものなのでしょうか」
「アタイからしたら魔眼を人工的に作っちまう方がおっかないよ」
赤龍もその技術には驚くしかない。
とはいえエメラダ教の闇を垣間見たのは確かだ。
そして今後の予定も確認する。
アレイシャ達は今後も龍の神の縁の地を巡る事は変わらない。
赤龍はこの地を安定させつつ目的のために今後も活動するという。
そんなこんなで話はまとまる。
今日はもう夕暮のため出発は明日にする事に。
赤龍は目的のためにもと言いさっさと立ち去ってしまった。
「赤龍様行ってしまいましたね…あなた達は今日は泊まっていってください」
「ええ、そうするわ」
「あまり歓迎はされてないですが」
「仕方ないわ、我慢するしかないわよ」
そうして巫女の家に今日は泊まる事となった。
その夜にアレイシャはエロイーズに今後の事を訊く。
「それで、あなたは今後も私達についてくるの?」
「もちろんよ、まあふらっと姿を消したら察してよね」
「それにしても人造魔眼ですか、見せてもらいたいものですが」
「なんにしても龍の神達とは今後も遭遇するでしょう、敵意を示さなければいいです」
ゼスフィもそんな龍の神達とは極力争いたくはないようだ。
死神の彼女でも龍の神の強さは理解している。
そして戦いになれば怪我も大きくなる。
向こうも敵対する考えはないと言っていた以上こっちもその意志は示さなければいい。
そのまま夜は更けていき出発の朝。
巫女に挨拶を済ませ早々に飛行船へ戻る。
「それじゃ次はどこへ行くの」
「東のチェンワ国に黄龍の信仰があるからそこに行くわ」
「チェンワ国ですか、まあ歴史研究と言って誤魔化しますか」
「あそこは何かと面倒な国だものね」
そうして飛行船はチェンワ国に向けて飛び立つ。
かつて通ったその国は何かと監視のある国だ。
上手く誤魔化して調べられるのだろうか。