赤龍の信仰
火山の様子を見るべく洞窟へ向かうアレイシャ達。
村の北側から出てしばらく歩くと火山の麓へ到着する。
そこで集落でもらった護符を身につける。
あとは洞窟の中へと進んでいく。
「ここがその洞窟なのね」
「祠は奥の方です、行ってみましょうか」
「そうね、万が一噴火したら私達だけじゃなく島そのものも沈みかねないわ」
「火山のエネルギーを甘くは見られませんからね」
とりあえずは洞窟を奥へと進んでいく。
護符の力が働いているからなのか熱は一切感じず、寧ろ快適である。
「本当に暑くないですね」
「ですが気をつけてください、万が一護符が破れでもしたら死にますよ」
「おっかない事言うな!」
「ヒルデは危機管理なのかは知らないけど、ストレートよね」
そのまま洞窟を進む。
火山の中というだけはあり、溶岩がその下には見えている。
もし落ちれば問答無用で死ぬだろう。
足元に注意しつつ奥へと進んでいく。
「足場は広いとはいえ流石に怖いわね」
「落ちたら骨も残らず溶けるわ、これ」
「火山の中を進んでいるわけですからね」
「ヒルデさんは煽りすぎですよ」
なんにしても奥に進むしかない。
危険と隣り合わせの洞窟を奥へと進む。
「祠はまだなのかしら」
「洞窟はそんな広くないと思いますよ」
「だったら慎重に急ぐわよ」
「矛盾してますけど、その言葉は覚えておきますか」
奥へと進むと何やら声が聞こえる。
どうやら巫女が祈りを捧げる声のようだ。
アレイシャ達もその声の方へと向かう。
そこには巫女が祠の赤龍神に祈りを捧げていた。
「少しいいかしら」
「えっ、えっと、みなさんは…」
「少し調べ物です、あなたが集落の巫女ですね」
「祈りは通じそうかしら」
巫女はその事情を説明する。
話では火山の様子は少しは落ち着いてきたらしい。
「でも完全ではないのよね」
「はい、ですが祈りを捧げれば赤龍神様は必ず聞いてくれると信じています」
「信仰心を力に、そういう事ね」
「恐らく不特定多数の信仰より少数の歴史的な信仰心の方が大きいものかと」
するとどこからか声がした。
その声は後ろから。
振り返るとそこには立派な肢体の女性が立っていた。
ゼスフィだけでなくアレイシャ達もそれが赤龍神だとすぐに分かった。
「あんた達が龍の神について調べてるって変わり者かい」
「あんた…赤龍神よね」
「ここにいるという事は私達を見ていたの?」
「こ、この方が赤龍神なのですか?」
巫女も本物の姿に驚きを隠せない。
赤龍神はその言葉を続ける。
「おっと、戦う理由はないだろう?どうしても戦いたいなら相手になるけどさ」
「…それでこの島の様子でも見ていたのですか?」
「この島の人達の様子を見る限り信仰は歴史がある、違うかしら」
「あ、あのっ!火山を落ち着かせていただけませんか!」
その巫女の言葉に赤龍神はそれを承諾する。
火山の活動についても信仰心の強さがそれを左右するらしい。
龍の神は自然や生命を司る存在。
信仰心の強さでその活動も左右されるという。
「で、では…」
「火山の活動は鎮めておくよ、この島の奴らがアタイを信仰してる以上は応えるさ」
「火山は一安心ですね、それはそうと天使様について何か存じませんか」
「龍の神達もそれを知らないって言ってたの、私達もそれは気になってるのよ」
赤龍神も天使様については知らないとだけ返す。
そんな中赤龍神が何かを感じ取ったのか、野暮用だと言い姿を消した。
「行っちゃった、何かを感じてたっぽいけど」
「でも火山の活動は落ち着きました、集落に戻りましょう」
「そうですね、集落に戻って少し何か食べましょう」
「それでは戻るとしますか」
そうして洞窟を出る。
だが洞窟を出たとき何か違和感をアレイシャが感じ取る。
「この感じ…何か変な…赤龍神が何かを感じてた…行ってみるわよ」
「巫女さんはここで待ってるか先に戻りなさい」
「どっちでも構いませんが危険な香りがしますので」
「は、はいっ!」
そうしてその感覚のする方へと向かう。
赤龍神も感じたその違和感。
龍の神ですら知らなかった天使様とは何者なのだろうか。