久しぶりの祖国
イハレアから飛行船で飛ぶ事二週間。
久しぶりにアレイシャはバルディスタの地に戻ってきた。
遺跡の事も気になるので皇帝に会えないか考える。
とりあえずは城の前まで行ってみた。
「やはり中に入るのは難しいのでは?」
「とはいえ遺跡の事も気になるわよね」
「無断で入れるとも思えませんし」
「どうすんのよ」
するとどこかで聞いた声が後ろからする。
そこにいたのはかつての同僚のネグルだった。
「お久しぶりです、アレイシャ殿」
「久しぶりね、そっちも元気そうで何よりだわ」
「そうだ、なんとかならないかしら」
「一応訊いてみますか」
そんなわけでネグルに遺跡の事を尋ねてみる。
無理は承知だが、なんとかならないものかと。
「先日発見された遺跡の事ですか?私に権限はないですが…一応中にどうぞ」
「中に入れてくれるのね」
「まあダメ元ですよ」
「一応話だけでも出来ればいいですが」
そうしてネグルに連れられ皇帝の私室に連れていかれる。
あとは話だけでもしてみればいいと言いネグルは仕事に戻っていった。
「失礼します」
「おや、久しい声だと思えばアレイシャではないか」
「お初にお目にかかります、エイル・フォン・レンネンカンプと申します」
「旅の途中で手に入れた飛行船の操縦士です、どうぞよしなに」
それも早々に遺跡の話を切り出す。
難しい話だとだけは思っておく。
「あの遺跡か、あそこは調査も難航していてな、第三層までしか進んでいないのだ」
「第三層…もっと深く先があるって事なのかしら」
「その可能性はありますね、我々も少し気になっているのです」
「立ち入りの許可を頂きたいのですが…無理ですよね?」
皇帝は少し間を置いて言う。
何があるかは分からない、命の危険を覚悟しているのなら許可を出そうと。
アレイシャ達はそれでもその覚悟を決めていた。
それに首を縦に振りその許可をもらう。
「そうか、ならば遺跡の入口にいる調査隊にこれを見せれば中に入れる」
「皇帝のエンブレム…本当にいいの?」
「皇帝のエンブレムといえば国内の機密施設にすら入れる言わばフリーパスですよ」
「旅立ち前の通行許可証といいなぜこんな大層なものを頂けるのですか?」
皇帝は以前の戦争でアレイシャに何もしてやれなかった事を悔いているらしい。
償いになるかは分からないが、その成長の助けになるのなら、という事のようだ。
死んだはずの人間が生きていた。
それは奇跡なのかは分からない、だがそれが皇帝のせめてもの罪滅ぼしなのか。
その気持ちも含めそのエンブレムを受け取る。
何かあれば力になる、ただし皇帝としてではなく私人としてだと。
「感謝します、では我々はその遺跡へと向かいます」
「遺跡があるのはあの日黒竜を討伐した谷だ、そこの谷底になる」
「なんか因果を感じる話ですね」
「何かに引き寄せられている、そんな感じもします」
とりあえずは遺跡に向かうのは明日からにして今日は一夜を過ごす事に。
そんな中ヒルデがあの人を呼ぶ。
「お呼びでござるか、ヒルデ殿」
「ああ、契約は残っていましたか、助かります」
「朧夜ね、契約は残ってて国に残るようにヒルデが言ったんだっけ」
「忍者って本当に存在したのね、本物ははじめて見たわ」
ヒルデは朧夜に今後も待機をして何かあれば力を貸すようにとだけ伝える。
朧夜もそれを承諾し契約が切れるまではいつでも呼んで欲しいと言い姿を消した。
「それにしても遺跡の場所があの谷だなんて…」
「あの日の事は今でも覚えています、生きていた事がどれだけ嬉しかったか」
「あたし達はなんだかんだで幼馴染なのよね、本当に」
「セクネスとアナスティアはアレイシャと古い付き合いなのね」
そんな二人との関係も長いものである。
アレイシャは二人を教会に預けその人生を変えた、二人の恩人なのだから。
「とりあえず明日遺跡へ向かいますよ」
「そうね、気になる事もあるもの」
「第三層以降は未知の世界、ね」
「気を引き締めないとね」
そうしてバルディスタ帝都での夜は過ぎていく。
遺跡には何があるのか。
天使様と名もなき龍の神、その謎は明かされるのだろうか。