チーズが好き
イハレア国内を旅するアレイシャ達。
現在は首都を目指し北上している。
そんな中この国の名物などにも触れているわけで。
イハレアはやはり美味しものが多いのだ。
「ねえ、ヒルデ」
「なんでしょうか?」
「ヒルデ、そんなにチーズ買い込んでどうするのよ」
「確かにヒルデさんはお酒が好きですし、分からなくはないんですが」
ヒルデは元々酒をよく飲むし、酒にも強い。
屋敷で過ごしていたときに強い酒をどんどん空にするのをアレイシャは見ている。
「せっかく本場に来たのですからチーズの食べ比べですよ、何か問題でも?」
「…ヒルデって私ほどではないにしても食べる方よね」
「そうですね、エイルさんに比べれば少ないにしても、結構食べますか」
「ヒルデは酒飲みだものねぇ、酒の肴ってやつかしら」
どうやらヒルデは好き嫌いはないが好みはあるらしい。
その中でも特にチーズには目がないと本人は言う。
イハレアはチーズを使った料理も多い国。
そして店で売られているチーズも他国に比べ圧倒的に種類が多い。
そんな国に来た以上ヒルデも内心ウッキウキなのだろう。
街にあるチーズの専門店で片っ端から買い漁っていた。
「私は乳製品はお腹がゆるくなるから駄目なのよね、チーズは好きなのに」
「ふふ、私はチーズと聞くと目が光る程度にはうるさいですが」
「チーズマニアなのかしら、ヒルデって」
「私はチーズよりピザとかパスタの方がお腹が膨れるからいいわ」
エイルはお腹が満たされる事を優先するようだ。
とはいえヒルデはチーズマニアとでも言うぐらいにはうるさいのだろうか。
「ちなみによく本などで描かれる穴あきチーズはエメンタールチーズと言うのですよ」
「そうなの?あの穴あきチーズってそういう名前なのね」
「ピザとかに使われるのはカマンベールとかチェダーよね」
「チーズって実際種類ってそんなにあるものなのかしら」
ヒルデ曰く本場のチーズは知られていないだけで相当数があるらしい。
一般的に知られているチーズの他にも無数のチーズがあるという。
「チーズとパスタは本場ではそれこそ凄い種類があるのですよ」
「へぇ、それでヒルデはチーズマニアだと」
「マニアなんですかね」
「でもチーズの種類ってそれこそ50じゃすまないって聞くわよ?」
エイルもそれなりの知識はあるのか。
とはいえヒルデのチーズへの情熱は本物のようだ。
ヒルデの意外すぎる一面を見たアレイシャだった。
だがそれも微笑ましいと少し安心していた。
「チーズはそれの種類ですがパスタの場合は調理法も含めた種類よね」
「そうなの?つまりパスタは乾燥したやつと調理法で合算するのかしら」
「一般的にはそうしてカウントされます、似たようなものでも形状で名前は違うので」
「でも具体的にどう違うのかがよく分からないんだけど」
アナスティアの素直な疑問。
そこは簡単にエイルが説明してくれる。
「スパゲッティってあるでしょ、あれより細いやつをスパゲッティーニと言う感じね」
「細さだけで名前が変わるなんて凄いわね」
「ちなみにニョッキもパスタの仲間です、あれは小腹が空いたときに嬉しいですよ」
「本当に種類が豊富ね、面倒というか国の凄さというか」
ヒルデとエイルはもはや先生状態である。
だが二人のそんな講義も何かと勉強になるので悪くなかった。
「調理法では面白いものでスケベニンゲンというスープパスタがありますよ」
「スケベニンゲンって、その名前考えた奴問い詰めたい名前ね」
「あと間違えやすいので漁師風がペスカトーレ、船乗り風がマリナーラ、覚えておいてね」
「なんか二人の話が凄いためになるわね、流石と言うべきなのかしら」
そんなチーズとパスタ講座だった。
勉強になったものである。
「今日はここで宿を取りますし、実食を兼ねて学びますか」
「あら、いいわね」
「食の勉強もたまにはいいかしらね」
「そうね、たまにはそれも悪くないわ」
そうして宿を取るこの小国でそれを学ぶ。
その日の夜はヒルデとエイルのチーズとパスタの実食授業になった。
ヒルデのチーズ好きは知識としても蓄えられている。