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幻惑の森

準備が整い東にある工場の街へ向かうアレイシャ達。

その道中には幻惑の森がある。

だが磁鉄鉱のコンパスを手に入れているため迷う心配はない。

ヒルデを見つけるまでは諦めないのだから。


「ここが幻惑の森ね」

「ええ、でもこの磁鉄鉱のコンパスがあれば問題ないわ」

「さっさと抜けてしまいましょう、時間も惜しいです」

「そうね、早いところ抜けるわよ」


そうして森を進み始める。

その森はそこまで深い森ではないが、魔物などが出るので油断は出来ない。


「この森はなぜ磁場が狂っているのですか?」

「んー、諸説あるけどよく言われるのは特殊な力のせいとか」

「特殊な力?」

「そんな力が働いてるとしたら大変よね」


なんにしてもこの森では何かしらの原因で磁場が狂っている。

それにより方向感覚を狂わされ迷うのだという。


「でもまさかアレイシャと旅をしてるなんて不思議」

「そうですね、死んだと言われ行方すら分からなかったのに」

「…でも世間的には故人でいいわよ、どうせ歴史からは消えてるし」

「死んだ人間が生き返る、そんな話があったら神への冒涜になるのかしら」


エロイーズも尤もな事を言う。

とはいえあのハイフスという科学者は死体に命を吹き込む研究をしていた。

科学とはまさに神への挑戦なのかもしれないと、アレイシャは思う。


「それにしてもさっきから妙な気配を感じませんか?」

「セクネスも気づいてたのね」

「何者かが私達の近くにいるわね」

「何者か…つけられてたとか?」


すると茂みから何かが飛び出してくる。


「うぅ、コロシテ…クレ…」

「こいつは…」

「バルディスタの兵士?でもなんかおかしい」

「まさか…」


恐らくアレイシャの思っている通りだ。

ハイフスによって命を吹き込まれた戦死者。

それが彷徨っているのだろう。


とりあえずその兵士を眠らせてやる事にした。

アレイシャはその兵士の胸に剣を突き立てる。


「アリガ…トウ…」

「一体なんだったんですか」

「まるで死体が生きてるみたいな…」

「少し待っててもらえる、すぐに戻るから」


そう言ってアレイシャは森の茂みの中へ。

そこで魔王城へ転送する呪文を唱える。

そのままハイフスの下へと向かう。


「ハイフス、あなた何をしているのよ」

「おや、久しぶり、怒ってるみたいだけど」


相変わらずの態度である。

アレイシャはさっきの話をする。


「ああ、私は戦場で死体を密かに回収して研究に使っている、それだけさ」

「だからってあれはあまりにも酷いんじゃないの」


ハイフスは淡々と言う。


「そうだね、確かに私は酷い人間だ、でも君を殺したのは誰なのか、分かってるかな?」

「それは…なんとなく察しているけれど…」


ハイフスは人間の醜さも美しさも知っている。

その研究が決して褒められなくてもその研究をやめるつもりはないと言う。


「私を責めるのは勝手だ、好きなだけ罵ればいい、だが研究は続けるよ」

「分かったわ、なら今後あなたの実験台に遭遇したら私が殺す」


ハイフスもそれでいいのだと言う。

冷酷になれない人間に大きな何かは成せない、それが彼女の信条だ。


アレイシャは不満げな顔をして森へと戻っていった。


「アレイシャ?どこへ行っていたの?」

「少しね、それより森を抜けるわよ」

「なんなのかしらね」

「なにかあるんでしょうか」


そうして森を進み森の出口に到着する。

するとそこには奇妙な石像があった。


「何かしらこれ」

「こいつは…壊れてるわね、多分神像だと思うけど」

「神像?なぜそんなものが?」

「うーん、誰かが捨てたのかしら」


とはいえ持ち運ぶには少々大きい。

修理すれば、とは思うがこんな場所に巡礼があるのか。

一応近くの街、工場の街でこの神像についても訊いてみる事にする。


そのまま森を抜ける。

そこには川がありその先に工場の煙が見える。


アレイシャ達はその街へと進む。

ヒルデの行方をなんとしても知るためにも諦めるつもりはない。


だが工場の街で思わぬトラブルが起きようとは今は知らない。

ヒルデについての情報は何か得られるか、それを信じるのみだ。


アレイシャの複雑な心境は今は押し込め進むのである。

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