天使様の謎
エルベリア国内を旅するアレイシャ達。
昨日の夜に教会の地下で見つけた死体の山。
そして天使様を崇拝するという謎の男。
言われた通りに再びその地下へと向かう。
「さて、行ってやるか」
「ですね、エイル、そちらは任せましたよ」
「ええ、任せておいて」
「それじゃ行きましょ」
そうして再び教会の地下へと向かうアレイシャ達。
あの男から天使様について今回こそ聞き出してやるつもりだ。
「にしても天使様ってなんなのよ」
「分からないわね、あの神像らしきものに関係してるの?」
「恐らくは、あの神像は…」
「それを聞くのはあとでですね」
そしてあの神像のあった広間へとやってくる。
そこにはザムエルもきちんと来ていた。
「お待ちしていましたよ」
「律儀に来てるなんていい奴ね」
「なんにしても、きちんと話して頂きますよ」
「やるのかしら?」
ザムエルは少し間を置いて言う。
天使様はこの世界を救うのだと。
そのために仲間を集めていると。
自分はそれに賛同した一人にすぎないとも。
「世界を救う?大層な事を言うのね」
「いけません、あの人はそんな高尚なものでは…」
「高尚だろうとなかろうと関係などありませんよ、私はそれに賛同したまで」
「つまりただの賛同者、そう言いたいのですね」
ザムエルは自分はただの賛同者でしかない。
それはその天使様に惹かれたという事なのだろう。
「今までも賛同者達と戦ったのでしょう?ならば私とも戦えますね」
「上等ね、なら相手してやるわよ」
「天使様についても聞き出してあげましょうか」
「悪しき神に心酔する愚者、覚悟してもらいますよ」
そうしてザムエルはその異形の手を使い襲いかかる。
今までと同じようにその能力は人間のそれではない。
アレイシャ達もすぐさまそれに応戦する。
人は変わってもパターンは然程変化はないのが今までの戦いで学習している。
「ほらほら!」
「全く、エロイーズ!」
「分かってるわよ!」
「パターンは読めているのですよ!」
ザムエルはアレイシャ達の的確な攻めにも対応してくる。
とはいえ特にアレイシャとエロイーズは慣れたものである。
ゼスフィもだがパターンが読めていれば対応などいくらでも出来る。
それでも油断しないようにだけしつつザムエルを崩していく。
そのまま戦いを続けるアレイシャ達。
長期戦に持ち込めば相手は力に飲まれる事も知っている。
相手の攻撃をしのぎつつ戦いを続けていく。
そして時間がある程度経過したとき。
「ぐうっ!?」
「やはり人間などにその力はすぎたるものなのですよ」
「さて、消える前に言いなさい、天使様って何者なのかしら」
「吐いて頂きますよ」
だがザムエルはその名を言おうとしない。
それでも天使様への忠誠だけは示していた。
「ふふ、私ごときがあのお方の名前を語るなど…おこがましいのですよ…」
「名前を聞いていない?それとも…」
「ならばせめて天使様の事を少しでも…」
「言ってもらおうかしら」
だがその事については語ろうとはしない。
そしてそのまま力に飲まれて消えていった。
「あぁ、天使様…私はあなたを信じて…」
「力に飲まれましたね」
「結局天使様については謎のままなのね」
「それよりゼスフィさん、この神像について何か聞かせて頂けますか」
ゼスフィ曰くこの神像は名もなき龍の神らしい。
名もなきという事からその理由も訊く。
ゼスフィが言うにははるか昔に名前を剥奪され神の世界を追放されたのだそうだ。
そして人間界に堕天した龍の神は復讐を企てた。
龍の神がなぜ天使様を名乗るのかは分からない。
だが恐らく崇拝する天使様はこの龍の神なのだという。
「とりあえず今後の事も考えますか」
「そうね、戻ってからきちんと考えなきゃ」
「次の国にも行かなきゃだしね」
「では今後についてもきちんとまとめておきましょう」
そうして宿に戻り今後についても考える事に。
とはいえゼスフィの言う龍の神というのがやはり引っかかるのは変わらない。
神の世界を追放された龍の神の復讐劇に自分達も巻き込まれているのだろうか?