首都前の確認
エルベリア国内を旅するアレイシャ達。
首都を前にした小国に現在は来ている。
ここで首都前に出来る確認をしておく。
首都で待ち受けるものは何なのだろうか。
「ん、んー、次はいよいよ首都なのね」
「そうなるわね、特に何もなければいいけど」
「平気だと思うわよ、多分」
「だといいのですが」
そんな中街の散策を開始する。
やはりこの国は海に面しているからなのか潮風を感じる。
「でも表向きは平和なのね」
「表向きは、ですよ」
「どんな国でも犯罪は必ず起こります、よほどの独裁国家でもない限り」
「ヒルデの言う通りね、それは私もよく分かっているわ」
犯罪は必ず起こる。
人は生きるために悪にも善にもなるのだろう。
ヒルデはそんな犯罪も多数見てきたという。
エイルも軍属時代にそんな犯罪を幾度となく見てきたらしい。
「よくある金持ちは悪い奴で平民や貧民は善人などというのはお花畑な創作脳ですよ」
「実際は貧しい人の方が教養のなさから悪い事を悪いと思わなかったりね」
「そんなものなのね、現実って」
「ただ必ずしもそれに当てはまるわけではないんですよね?念の為」
ヒルデ曰く結局は教養が物を言うのだという。
貧しくても裕福でもきちんとした教育さえ受ければ人格は養われる。
貧しい人間はそんな教養を養うためのお金がないため結果として悪に見えるらしい。
裕福な人間はきちんとした教育を受ける余裕もある事から人格が養われるとか。
とはいえ全てがそうでもなくあくまでもそういう教育を受けた人間の話だ。
なので世間知らずな金持ちも物知りな貧民も当然いるという事になる。
「結局精神的な余裕が物を言うのです、それが世界ですよ」
「その通りね、お金持ちも悪い事はするし貧民が人助けもするもの」
「つまりそれを型にはめるのが創作脳という事ですか」
「現実はそんな事全くないわよね」
それはこのメンバーがそれを証明している。
貴族のアレイシャは騎士時代に悪事を働いた事はない。
貧しかったセクネスとアナスティアも犯罪にだけは決して手を染めなかった。
そういうのをレッテル貼りなのだとヒルデは言う。
そもそもその理論が通ってしまうと国を支える富裕層は全て豚箱行きだからである。
そんな事になったら国の維持どころか運営にすら支障をきたしてしまう。
この国でも犯罪は当然起こるし、それは平民の犯罪もある。
国を支える政治家にも犯罪者はいるかもしれない。
ヒルデはそういった決めつけこそが差別の原因となると言う。
エイルが言うにはどうでもいい事で叩かれる政治家は基本的に正しいと言う。
「結局叩く要素がない人はどうでもいい事で叩かれてしまうのよね」
「例えばどんな事で?」
「文字の読み間違いやハンバーガーの値段を知らないとかですよ」
「うわ、本当に文字通りの粗探しね」
落ち度がないから叩けない。
ならばどんな些細な事でもいいから理由にして叩けばいい。
それこそが差別に繋がり国を崩壊へ導くのだという。
そしてその叩きの内容がほとんどシロなのも落ち度のない政治家の特徴らしい。
「世の中はおっかないですね、それ実話なんですか?」
「例え話ですよ、ですが落ち度がないとこういう事で批判されかねないという事です」
「つまりその政治家が仕事をしているのがそれだけ困るという事よね」
「そうね、少なくとも叩いてる人達からしたら困る話なんじゃない?」
ヒルデとエイルの話はたまに妙な生々しさがある。
それこそが世の中を見てきたから言える例え話なのだろう。
改めて二人の妙な生々しさを怖いと思った。
嘘なのか本当なのか分からない例え話だけにである。
「さて、首都に行く前に体調は万全にしましょ」
「観光とかもあるものね」
「ですね、暑いからといってお腹を出して冷やしたりとか」
「分かってるわよ、あたしもそんなヤワじゃないもの」
そうして首都に行く前に何かと英気を養う事に。
首都でするのはエスナダ教会の地下へ行く事だ。
その教会の地下に何が待ち受けているのか、今回も天使様の名前が出るのだろうか?