家庭的な味
エルベリア国内を旅するアレイシャ達。
現在は首都を目指して北上中だ。
首都まで二つ前の小国に今は来ている。
そんな中料理の味について少し気になっていた。
「はぁ、美味しかったわ」
「エイルさんは相変わらず規格外に食べますね」
「あれだけの量がどこへ消えているのかしら」
「胃袋に異次元ホールでも空いてるんじゃないの?」
相変わらず根も葉もない事を言うエロイーズ。
とはいえそう思いたくなるぐらいエイルは食べるのだ。
「でも思ったんだけどお店の味ってなんていうのか大衆向けの味よね」
「そうですね、少なくとも客商売ですし大衆受けしないと意味がありません」
「つまり料理屋の料理は誰が食べても基本的に美味しいと感じる味ですか」
「そういう事よね、家庭の味って家によって違うからお店じゃ難しいのよ」
家庭の味、それは家によって同じ料理でも味が違う。
だからそれを店で出すのは難しいとヒルデは言う。
「ちなみにですが軍隊や学生食堂などは大衆向けに作られているのですよ」
「分かります、私も騎士時代の食事は大多数が美味しいと言っていましたから」
「学生食堂は納得なんだけど、軍隊もそういうものなの?」
「そうね、共通するのはどっちもエネルギーを使うからって事なのよ」
エイル曰く軍隊も学生もエネルギーの消費が大きいのだという。
そのため安く美味しいものをたくさん食べられるように作るらしい。
それによってたくさん食べられる料理がメインになる傾向にあるそうだ。
それは軍隊経験者のエイルだから知る内部事情なのだろう。
「経験はあると思いますよ、同じ料理でも他人の作るものはなぜか口に合わないと」
「そういえばあるわね、アナスティアとセクネスに同じものを作らせても味が違うわ」
「あれってなんでなのかしら?レシピは守って作ってるはずよね?」
「家庭の味というのは不可思議な事が起こるものですね」
ヒルデ曰く家庭の味は同じ料理でも調味料の分量などが微妙に違うからという。
大衆向けの料理でも同じ料理が店によって微妙にレシピは異なるものらしい。
例えて言うならトネオ料理も本国と他国で食べるものでは味が微妙に違うそうだ。
料理の奥深さはまさにそこなのだとヒルデは言う。
「要するにです、商売にするのなら大衆向けにしないと難しいのですよ」
「なんかそう聞いていると家の味が懐かしいわ、お母様の焼くオレンジパイが」
「アレイシャの家庭の味はオレンジパイなのね」
「あたしとセクネスは貧しい時期も長いから家庭の味だとどうしてもね」
料理の奥深さを知ったアレイシャ達。
料理屋の料理が美味しい理由は大衆向けにレシピが作られているかららしい。
商売にするからには客を満足させリピーターにする事が求められる。
それが大衆向けのレシピというものを生み出したのだろう。
「ちなみにですが軍隊や学生食堂などは一般開放している国もあるのですよ」
「マジ?つまり軍人や学生以外もその食堂が使える国があるの?」
「とはいえ基本的には先進国が多いわね、次に行くイハレアなんかはあるはずよ」
「一度そういうところで食べてみたいものですね」
セクネスもなんだかんだでよく食べる方である。
騎士として鍛える上できちんと食べる事も大切だかららしい。
「あと大きな病院で食堂を一般開放してたりするケースもあるわよ」
「エイルはそういうの詳しいわね、そういうのをやってた国の出身なのかしら」
「でも病院とか軍隊とか学校とか食堂の一般開放なんて素敵よね」
「お金はきちんと取るにしてもそういうところは安く済ませられますからね」
思わぬ料理に関する知識を得てしまった一行。
それはヒルデとエイルだからこそ知っている国の機関のやり方なのだろう。
「さて、では次の小国へ飛びますか」
「お腹も膨れたしね、首都前で一度宿になるけど」
「こっちも焦ってないし構わないわよ」
「それでは頼みましたよ、エイル」
そうして次の小国へ向けて飛び立つ。
学校などの国の機関の食堂の一般開放は一度利用してみたいと思った。
お腹を満たしたのにまたお腹を鳴らせつつ次へと向かうのである。