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北ルートの事情

エルベリア国内を旅するアレイシャ達。

今は西の海を目指して進んでいる。

現在は小国の一つパルテに来ている。

海のある小国まではもう少しである。


「晴れてきたわね」

「ええ、このまま天気が崩れなければ問題はないかと」

「それにしてもバカンスなんていいのかしら」

「たまには休みも必要よ」


そんな西の海でのバカンス。

それは今まで息抜きも大して出来ていなかったのである。


「なんにしても水着は現地でいいですかね」

「水着…いいじゃない」

「アナスティアはそういうの好きそうですよね」

「ふふっ、セクネスは嫌かしら」


なんにしても西の海は目の前である。

そういう意味でも今は気楽に行こう。


そういえばと北ルートの話を思い出す。

紛争地帯などが多く抜けるのが危険な地帯だ。


「北ルートってやっぱり危険なのよね」

「そうですね、少なくとも安全に抜けられはしないかと」

「陸路でも危険だし空路でも撃墜されかねないわよ」

「そんなおっかないのね」


北ルートの危険性。

それは陸路は武装した人に襲われる可能性が強いという。


そして空路でも怪しいと判断され撃墜される可能性はあるそうだ。

それが争いを続ける地域を通るという事なのだろう。


改めてそれの危険性を理解する。

やはり海越えが正解なのだという事も。


「おっかないルートよねぇ」

「でもそれがこの近くの国の事情なのよ」

「ええ、昔から争いが続いていますからね」

「嫌なものですね、人はどうして争うのでしょう」


その答えは自分の幸せのためだとヒルデは言う。

他人のためなどというのは大義名分にすぎないと。


「人は一切れのパンのために人を殺すんですよ、そういうものです」

「たったそれだけ…とも言えないのが悲しいのよね」

「そうですね、それが国家レベルともなればなおさらですよ」

「実際資源を止められた事が理由で戦争に至った、なんて話もあるもの」


生きるためには食べるものが必要であり資源が必要だ。

それを手に入れるために争いを起こす、間違ってはいないのも悲しい話だ。


だがそれで負けてしまえば未来永劫悪者にされる。

歴史とは勝者が作るものなのだから。


生きるために戦う、守るために戦う、争いにはそういう理由もある。

だがそれが正当化される事は決してないだろう、悲しいが。


「どんなに正当な理由があっても負けた者は悪なのです、それが戦いですよ」

「負けたけど正しかった、それなら最初から戦争なんか起こるわけないものね」

「ですね、負けたけど自分達は間違ってなかった、そんな理屈は通りません」

「その理屈が通るなら最初から争いなんか起こるわけがないのよ、そうよね」


負けたけど正しかった、間違ってなかった。

そんな馬鹿な理屈はこの世の中で通る事は決してない。


小さな争いでも大規模な戦争でも勝者こそが絶対の正義。

それは世の常であり歴史をそうやって作ってきたからである。


「だけどどんなに正しい事を主張しても敗者の言う事は信じてくれない、よね」

「そうですよ、歴史とはそういうものです」

「北ルートの争いもそんな自分達は正しいと主張する人達が続けているのよ」

「醜いわよね、でもそれが人の業なのかしら」


戦争は正義を掲げた国が起こすもの。

虐殺は正義だと信じた人達が起こすもの。


正義という思想はそれだけ恐ろしさも含むのだ。

ブレーキのない思想、それが正義なのだとヒルデは言う。


「まあ世の中の理不尽さは嫌でも分かりますよ、現実を見れば」

「なんかヒルデってそういう物言いがあれよね」

「そうね、なんか世の中を悟ってるっていうか」

「どこか皮肉めいた事も言うし世の中の嫌な事を直接見たような」


なんにしてもそんなヒルデの見た現実はなんだったのか。

本人は語ろうとしないが、その言葉には世の中に愛想を尽かしたような感じがする。


「さて、それじゃ海までもう少しだから一気に行くわよ」

「ええ、次の小国にね」

「宿は海に着いてからでいいわね」

「では参りますか」


そうして海を目指して飛び立つ。

ヒルデのどこか斜めに見たその物言い。


彼女の瞳に映るものは。

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