西の文化
エルベリア国内の旅を始めたアレイシャ達。
まずは小国の一つヘッツィに来ていた。
エルベリアという国がどんな国なのか。
それをこれから学んでいく事となる。
「ここがヘッツィね」
「いい感じの国よね、ここって」
「そうね、でも国に入った時に言ってたけど文化が解禁されたの最近なのよね」
「そうですよ、なので隣国の文化が主になるでしょうね」
隣国の文化、海を越えた先にある国やミクダニアなどだ。
特に多くが入ったのは海を越えた先にあるイハレアという国の文化らしい。
「そういえばルートだけど、首都を目指してそこから海越えよね」
「ええ、だからまずは首都を目指すのよ」
「そこからは西へ飛んで海越えね」
「海を越えるというのも楽しみですね」
そんなこの国の歴史などについても訊いてみた。
ヒルデやエイルなどは知っているはずだ。
「この国は過去に経済をやられているのですよ」
「そうなんですか?何をやられたんですか?」
「国民の資産のほとんどを大規模な詐欺でね、そこから立て直したとか」
「なんか凄い話ね、詐欺で経済を破壊するなんて」
この国の歴史、それは詐欺による経済破壊。
そこから立て直したのも政治家の本気が窺える。
そんな大規模な詐欺がされるぐらいこの国は狙われたのか。
それとも国内の内部犯なのか。
「詐欺というのはその気になれば国すらも騙せるのですよ」
「はぁ~、おっそろしい話ねぇ」
「実際国を騙した詐欺の話はこの国だけじゃなくあるのよね」
「つまり国民性さえ理解してしまえば国ごと騙せる、ですか」
エイルの言う国を騙した詐欺の歴史。
それは世界でも過去に何度かあるのだという。
その場合は主に国民性を利用してのケースが多いそうだ。
その結果国の税金を大量に持っていかれるケースもあったらしい。
「だから国を騙して恐ろしい金額を盗み取る詐欺は確実に存在するのよ」
「そんな事が出来るなんて悪人も知恵が回るのね」
「悪事を働く人は悪知恵だけは異様に回るのですよ、その熱意を別に向ければいいものを」
「ヒルデさんの言う通りですね」
悪人の悪知恵。
それは巧みに相手を騙そうとする巧妙さが目立つ。
だがどこか抜けているものが多いのもそんな悪人なのだとヒルデは言う。
本当の悪人とはもっと計画を綿密に練り上げるのだそうだ。
「詐欺というのはどこか不審な点が必ずあります、そこに気づけるか否かですよ」
「それでも騙されるのが人間の性なのかしら」
「そんな気もするわね、思考を停止させる手口こそが詐欺の基本だもの」
「つまり相手の弱みを知ってその手口を使うわけですか」
本当に賢い悪人はそこらの馬鹿な詐欺師とは比較にすらならないらしい。
詐欺に限らず頭のいい悪人にこそ騙される人は多いのだから。
国を騙すというのは個人の情報を扱うのではない。
国民性を理解した上でその国を狙うのだ。
「結局暴力的な殺人犯より頭脳明晰な詐欺師の方が厄介なのですよ」
「おっかない話ねぇ」
「頭脳は血を流さずに人や組織、下手したら国すらも殺せるのよ」
「まさにインテリの戦争ってところかしら」
頭のいい人は血を流さずに国を滅ぼせる。
それは国を騙し内部から確実に破壊するからだ。
基本的に国が滅ぶときは侵略や戦争が多いもの。
だが流血のない滅亡は確かに存在する。
それは賢い者が知恵を駆使して国を破滅に追いやる内部からの破壊。
情報で国は滅ぼせるという事でもある。
「この国もそんな知恵によって滅亡寸前に追いやられたという事ですね」
「なんか壮絶な話でついていけないわね…」
「それが歴史なのよ、忘れちゃ駄目よ」
「ですね、覚えておきます」
エルベリアの歴史の壮絶さにある意味絶句である。
だがそんな歴史が今のエルベリアを作り上げたのだろう。
「さて、では次の小国に向かいますか」
「首都を目指すルートは構築済みよ」
「ならそれは任せるわね」
「では参るとしますか」
そうして次の小国に向けて飛び立つ。
国の歴史の興味深さも改めて実感する。
本当に賢い悪は国すらも騙してしまうという恐ろしい話だった。