鉄鋼の街
ノルスタニアの王都を目指し進むアレイシャ達。
その道中でも情報を得られないかと考える。
とりあえずは道なりに進み次の街へと移動する。
次の街は製鉄が盛んな街のようだった。
「ここが製鉄の街なの?」
「そうよ、別名鉄鋼の街、この国に流通する鉄や鋼の主要生産地ね」
「それでどうするの?」
「とりあえず情報を集めますか」
そうして街を散策し始める。
街の中は製鉄所なども多く独特な臭いが立ち込めていた。
「臭いが鼻を突くわね」
「仕方ないわよ、そういう街なんだから」
「でもそんな建物の熱なのか暖かいわよね」
「ええ、製鉄所などから熱が発せられています」
とりあえずは宿や酒場などに行き情報を集める。
すると二年前にそんな名前のメイドが訪ねてきたと聞いた。
行き先を聞くと東にある工場の街に行ったという。
とはいえ二年前の話だ、今から行っても会えるとは思えない。
それでも情報を追いかけるために行く事にした。
「東の方角ね、あそこは幻惑の森があるのよ」
「幻惑の森?」
「迷いの森的なものかしら」
「その森を抜けないと東の街には行けないと」
エロイーズ曰くその森は磁場が狂っているらしい。
それにより方向感覚がおかしくなり迷いやすいという。
幻惑の森などという名前がついたのもそういう理由だそうだ。
「だとしたらどうするの?」
「磁場を正常にする特殊な石があるの、それを手に入れれば」
「でも貴重品なんじゃないの?」
「同意です、そんな簡単に手に入るものなんですか」
エロイーズの話ではそもそも徒歩でその森を抜ける業界人はいないという。
基本的に空輸が主流のこの国で徒歩による輸送は非効率とされているのだ。
「そういえばそうだったわ」
「だとしたら手に入るのでしょうか」
「一応扱ってるお店はあるし覗いてみる?」
「まあ行くだけ行ってみるべきよね、行くわよ」
そうしてエロイーズにその店に連れて行ってもらう。
「磁鉄?今は品切れだよ、今年は不作らしくて値段も高騰してるぜ」
どうやらその磁鉄は今年は不作で高騰しているという。
それでもなんとかしたくどうにかならないか訊いてみる。
「なら磁鉄鉱の原石を手に入れてこい、そうしたら加工してやる」
「どこで採れるの?」
「街の南東にある鉱山ね、あそこは磁鉄鉱の産地だから」
その磁鉄鉱の採れる鉱山は南東だという。
不作の年とはいえそれでも行く事に決める。
「あー、それとなんか強い魔物が住み着いてるらしいから気をつけろよ」
「ええ、ありがとう」
強い魔物、それも気になる話だ。
最初に浮かぶのはあの運命の日になったときの黒竜。
他にもこの世界にはそういう魔物が生息している。
人里が襲われない理由としては、彼らは人工的な臭いを嫌うからだそうだ。
「一応薬とか買っていった方がいいかしら」
「そうね、その強い魔物に遭遇したときの事も想定しないと」
「なら薬屋ですね」
「手持ちはあまりないけどね」
とりあえずは薬屋向かう。
この世界における傷薬は俗に言う魔法薬だ。
独自の材料に治癒の魔力を込めたものが薬となる。
アレイシャ達はそんな薬屋で面白いものを見つける。
「なにかしら、薬の保存に最適な魔法の水筒?」
「それは薬を多く入れられるものよ、普段は瓶一つだけどそれなら複数回分入るわ」
「ふーん、でもお高いわね、今の手持ちじゃ買えないわ」
その水筒の値段は六千ほど。
今の手持ちでは手が届かない金額だ。
「これって飲み薬を店でその場で入れるの?」
「そうよ、水筒自体は何度でも使えるから各地の店で頼めば補給可能よ」
「面白いですね、とはいえ今の手持ちでは買えそうにないです」
仕方ないので今は諦める事に。
とりあえず今買える薬を必要と思われるだけ買う。
そうして店を出て南東の鉱山に向かう事にした。
「おっと、失礼した」
「いえ、こちらこそ」
それなりに高貴そうな身分の人とぶつかってしまった。
その人は謝ったらそのまま街に消えていった。
「なんなのかしら、あの人」
「あの顔…間違いない…」
エロイーズは何か知っているようだった。
とりあえず今は鉱山に向かう。
今が戦争中だと知る事になるのはもう少し先の話である。