指令再び
ミクダニア国内を旅するアレイシャ達。
現在は小国の一つベルソムに来ている。
この小国で再びエメラダ教が接触しようとしていた。
ミクダニアでする事になる任務とは…。
「ふぅ、にしてもあっつい」
「季節的に今は夏ですからね、無理もないかと」
「それに近隣の国から考えてもね」
「ああ、確かに砂漠の国とかあるものね」
とはいえこの国は涼しい方である。
以前の砂漠の国とかともなれば昼間はそれこそ灼熱地獄なのだ。
「冬は着込めば暖かいけど夏は何枚脱いでも暑いのよねぇ」
「仕方ないですよ、寒さは防げますが暑さは防げないのが世の理不尽です」
「アナスティアは意外と涼しそうよね」
「でも夜は意外と冷えるのよ?」
こういうときはラフな格好のアナスティアが羨ましく見える。
とはいえ脱ぐわけにもいかないので耐えるのみである。
冬は着込めば暖かくなるが夏は何枚脱いでも暑い。
エロイーズの言葉が季節の理不尽さを語る。
「この国氷とかないのかしら」
「隣国の関係でアイスぐらいならあると思うわよ」
「でもすぐに解けそうね」
「アイスよりキンキンに冷えた飲み物の方がこの場合嬉しいかしら」
というわけでキンキンに冷えた飲み物を探す事にした。
適当な露店でキンキンに冷えた飲み物を買う。
この国では主にソルトウォーターが売られているようだ。
暑さ対策としては水分だけでは駄目なのは分かっているらしい。
「っかぁ~、癒やされるわねぇ」
「エロイーズはおっさん臭いです」
「見た目はミステリアス美少女なのに中身はおっさんですね」
「二人とも容赦ないですね…」
まあ確かにエロイーズはおっさん臭い一面はある。
この若さでそうなってしまうとは…ナムサン!
「って誰がおっさんよ」
「エロイーズって若年寄なのかしら」
「それは見た目より年寄りという事ですね」
「ゼスフィもエイルも容赦なさすぎよね」
そんな中建物の影に例のマントの女が見えた。
エロイーズ達は適当に誤魔化しその場を離れる。
「また出たわね、今回は何をしろっていうのかしら」
「今回の任務は首都にあるバンギ農園の焼き討ちよ」
「農園の焼き討ち?屋外の仕事なの?」
バンギ農園の焼き討ちが今回の任務らしい。
だがそうなると国の捜査権限があっても事後処理はどうするのか。
「今までも事後処理は国に任せてきたけど、本当に焼き討ちでいいの?」
「ああ、国には根回しをすでに済ませてある」
「あんた何者なのよ、まあ私は別にいいんだけど」
国に根回しを済ませてあるというマントの女。
エメラダ教のスパイの規模を考えればそれぐらいは容易いのだろうか。
「でもエメラダ教のスパイって本当に凄いのね」
「世界中の国の内部に入り込んでいるからな、ある程度の根回しは軽い」
「ふーん、まあとりあえず首都にあるバンギ農園の焼き討ちでいいのね」
マントの女の話ではその農園では麻薬の原料になるものを作っているという。
それを全て焼き払えというのが今回の指令らしい。
「麻薬の原料、それなら確かにやらなきゃ駄目かしら」
「ええ、首都に着いたら好きなタイミングでやっていいわよ」
「分かったわ、そんじゃ確かに任務を受けたから」
そうしてマントの女は去っていった。
エロイーズ達も仲間の下へと戻る。
「何をしていたんですか」
「少し食べ物の調達よ、ほら、ソルトキャンディー」
「エメラダ教からの指令ですよね?」
「ええ、二人には内緒にね」
ヒルデには前の国の一件ですでにバレている。
小声でやり取りをしてそれを確認する。
「さてっと、首都まではあとどれぐらいかしら」
「えっと、小国で四つぐらいね」
「ならそんな時間はかからないわね」
「とりあえず今日はここで宿を取りましょうか」
そういう事で今回はここの小国で宿を取る事に。
首都の前までは一気に行く事になる。
「では宿は確保しておきますね」
「頼むわよ」
「この国の首都、ね」
「何が待っているのでしょうか」
そうしてそのままこの国で今日は休息である。
首都にある農園の焼き討ちという任務。
天使様の名はまた出てくるのだろうかとも思いつつ夜は更けていく。