文化の受け入れ
ミクダニア国内を旅するアレイシャ達。
現在は小国の一つストリシャに来ている。
多民族国家のこの国では異なる文化もよく見る。
それがこの国の象徴なのだと改めて知るのだった。
「この国って多民族国家だけはあるわよね」
「そうね、エルベリアとかトネオの文化もちょくちょく見るわ」
「やっぱり多民族国家なんですね、この国は」
「でもなんか難しい事をやってるって感じがして素敵よね」
セクネスとアナスティアもこの国の凄さは認めているようだ。
多民族の共存が難しいのはアレイシャ達もよく分かっている。
「とはいえそう簡単な話でもなかったのですよね」
「そうね、歴史はそう簡単でもないけど、今がこれなのよ」
「ある意味結果論なのかしら」
「そんな気はするわね」
結果論だというのもなんとなく納得である。
とはいえ過程があるからこそ結果もある。
歴史という過程を経て今のミクダニアという結果があるのだ。
それでもそう至った事が凄いとアレイシャは思う。
「ですが以前も話したようにミクダニアの歴史は複雑なんですよ」
「今でこそこうなっているけれどね」
「世界は広いものですね、私の知らない事がたくさんある」
「そうね、あたしも本でしか知らない世界の現実の中にいるもの」
セクネスとアナスティアは教育こそ受けているが、それは座学が多い。
そもそも外国の現地に学びに行くほどお金もなかった。
だから結果として本などで外国はこんな国という知識だけは得ていた。
そんな現実を見た二人もアレイシャもその世界の広大さを知ったのだ。
旅自体は始まって間もない。
日数ではなく立ち寄った国の数ではだ。
この先もっと多くの国を見るだろう。
そのとき何を感じ何を知るのだろうか。
「んで、多民族になった結果文化も共存するようになったと」
「そうなりますね、文化を受け入れたという事ですよ」
「本来異なる文化の受け入れって大変な事なのにね」
「異なる文化って言うならば異物なのよね」
異なる文化は異物。
アレイシャのその言葉はある意味的を射ている。
人は排外主義的な生き物だ。
異なる文化を受け入れるというのは簡単な事ではない。
だがヒルデ曰く世の中には外国の文化を受け入れ、それを昇華させる国もあるとか。
文化とは外国に渡り進化をしていくものだとヒルデは言う。
最初に発明された国から違う国に渡りその発明は進化する。
そういうケースは歴史の中に多数あるのだそうだ。
「世の中にある便利なものは大抵は進化を遂げたものです、エロイーズの銃のように」
「私の銃?」
「それ早撃ちに特化した銃よね?本来銃って一撃で装甲を破るようなものなのよ」
「そうなんですか?」
エイルの言う銃の話。
本来銃とは殺傷力に特化していたものだという。
獣などを確実に仕留めるために開発されそれが世界に渡り異なる進化を遂げた。
軍用に進化したものもあれば個人向けに進化したものもある。
とはいえ今の時代の銃になるまではもっと面倒な仕組みだったそうな。
それが世界に渡り改良され様々な形に分かれて進化したのだという。
「銃って鉄の装甲とかも簡単に貫通するでしょ?軍隊の革命なのよね」
「ですが今の世の中でも銃兵を多数抱える軍隊は少ないですよ」
「つまり銃自体が今でも高級品って事かしら」
「そうだと思います、以前護身用の銃が売っているのを見ましたがとても高いですよ」
そんな高級品を持たせてもらえる辺りエメラダ教の資金力なのか。
なんにしても銃は高級品という事らしい。
飛空艇などに取り付けるのが主流で個人や軍隊で持つのはコストがかかるそうな。
つまり大型を一つ作る方が軍隊全員に行き渡らせるより安いという事らしい。
「さて、それじゃそろそろ次の小国に行く?いつでも行けるわよ」
「そうね、なら頼もうかしら」
「では次の小国へ飛び立ちますか」
「決まりね、エイル、頼むわよ」
そうして次の小国へと向けて飛び立つ。
この国で見たものは文化を受け入れるという事。
簡単に見えて難しいその国は人は排外主義なのだと改めて感じる事でもあった。