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共存の難しさ

ミクダニア国内を旅するアレイシャ達。

現在は小国の一つヘンリャルに来ている。

この国は多民族国家である。

この国が外から見たら凄い国であると改めて思うのだった。


「んー、この国って安定してていいわね」

「でも過去の国の事もあるし」

「ですね、油断はしない方がいいかと」

「何か隠してるの?」


セクネスとアナスティアにはエロイーズの事は隠してある。

とはいえ他のメンバーにはすでにバレているが。


「でもこの国って共存が当たり前でなんか凄いわよね」

「多民族国家ですからね、本来は難しいものをやっていますよ」

「それも歴史の関係なのよね」

「歴史、複数の勢力に分かれていたというあれですか」


元々は複数の勢力に分かれていたミクダニア。

それが統一され今の共存国家になった。


とはいえ国民のほとんどがミクダニア人とエルベリア人ではある。

この二つの国の民族が八割なので多民族と言うほどでもないのか。


なんにしても割合上は少ない民族も含めれば多民族だ。

ミクダニアとエルベリア以外は割合が少ないだけの話である。


「まあ隣国とも上手く付き合ってるしこの国はやり手よね」

「ええ、少なくとも政治家は有能なんだと思いますよ」

「政治家が有能な国って意外と珍しい気もするわね」

「政治家はグレーな生き物、まあよく言ったものよね」


アレイシャも言ってくれるものだ。

政治家はグレーな生き物、それは世界の全ての政治家への皮肉なのか。


自分達は法を犯しても平気だと思い込む傲慢さ。

そんな政治家を皮肉っているのか。


「そもそも立法だって自分達の首を絞める法律なんか作らないわよ」

「アレイシャって本当に変なとこがひねくれてるわよねぇ」

「ですがそれも満更でもないのですよ、世の中というのは」

「アレイシャは戻ってきてからどこか皮肉っぽくなりましたよね」


母国の戦争の背景なども見ている。

そして自分の命を奪った背景も知っている。


少しひねくれてしまうのも当然と言うべきか。

生きていたのではなく生き返ったというのが正しいのだから。


「なんにしてもこの国は共存の難しさを教えてくれてるわよね」

「そうですね、外国では移民を排他する活動などもありますから」

「なんで移民ってそんな嫌われるのよ」

「恩恵にタダ乗りして権利ばかり主張するからじゃないの?」


アナスティアの的確な一撃。

だがそれが移民が嫌われる理由としては充分すぎるのである。


「権利ばかり主張していたら普通に嫌われますよね」

「外国から来て文句ばかり垂れるなら帰ればいいじゃない、って事よ」

「アナスティアって辛辣よねぇ」

「普段は軽いイメージなのに変なところで現実的よね」


セクネスとアナスティアは元孤児という事もあるのだろう。

世の中の嫌な部分をたくさん見ているからこういう言葉が出る。


生きるだけで精一杯だった過去があるからこそだ。

世の中は優しくなんかないという事も知っている。


だからそういう人達には嫌悪感を持つのだろう。

生きる事の苦しさも知らない人たちに対して。


「結局そういう人達は何を言っても聞かないんですよ、そんなものです」

「そんなに文句を垂れるのに恩恵だけは欲しいとか最高に馬鹿な話よね」

「この二人って普段は穏やかなのに凄い現実主義的な一面があるというか」

「仕方ないのかもしれないわね、二人が私と出会うまでどうやって生きてきたかよ」


セクネスとアナスティアはどちらかと言えば現実主義なのだろう。

憧れなどは抱きつつも夢でご飯は食べられないと知っているのだ。


だからこそ自分の力で稼げるようになりたい。

そういう考えも元々あったからアレイシャは教会に預けた。


そこなら稼ぎもきちんとあるからだ。

正当な報酬があるからこそ教会でここまで育ったのだから。


「さて、今日はここで宿を取りますか」

「そうね、次の小国には明日よ」

「了解、そんじゃ適当に時間潰すわ」

「体も休めておかないとね」


セクネスとアナスティアは辛辣な部分がある。

だがそれは世の中を生き抜くために仕方がないのか。


貧しさと苦しさを知る二人の心の底には生きるという覚悟がある。

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