卑劣な男たちの末路
今回は残虐な表現が含まれています。
「そう遠くまで行ってないはずだが、見つからないな」
茶色い髪の男が辺りを見渡しながら呟き、額に傷のある男は髪をかき上げながらため息をつく。
「はぁ、お前が目を離すからだ。せっかく見つけた上物を逃がしちまってよ」
「悪かったよ、この森は結構強い魔物がいるんだろ? もう諦めて別の奴探さないか?」
「馬鹿、買い手がついたのに諦められっか。金貨十枚だぞ?他の良い奴隷でも金貨一枚からなんだ。そう簡単に諦めてたまるかっての」
二人が辺りを見回していた時だった。
バサッと木の上から物音が聞こえ、二人が上を見上げた瞬間、それは舞い降りた。
ズシンと大地が揺れ、鳥や動物が一斉に逃げ出す。
「な、なんだっ!?」
土煙の中に見える大きな黒い影が人では無いことを物語る。
二人は動けずその場に立ち尽くしていると、ズシン、ズシンと煙の中からゆっくりと現れた者に二人は驚愕し、額に傷のある男は足に力が入らず尻餅をつく。
目の前に現れたのは雪原を思わせるような白銀の身体に、こちらを睨む目は吸い込まれそうなほど綺麗な青い瞳。手には鋭い爪があり、今にも二人の体を引き裂こうと存在を主張している。
魔物よりも恐ろしく、一度暴れ出すと手をつけられない相手が目の前にいる事に、冷や汗が額から止まらず流れ落ちる。
「ど、ドラ、ゴ、ン」
声が震えてうまく話せない。
二人は顔を見合わせゴクリと唾を飲み込む。
『今すぐ出て行け』
頭に直接響く声に恐怖しながらも額に傷のある男はある事を思い出す。
話せるドラゴンは知性を持つ。つまりこのドラゴンは話が通じる。ならば交渉する事が出来れば助かるかもしれない。
恐怖を抑え込み、祈りながら話し始める。
「俺たち、は逃げた獲物を探していまして、そいつが見つかり次第出て行きます、のでーー」
爪を二人に向けて振り上げると、ひっと声を上げる。
『もう一度言う、今すぐこの森を立ち去れ』
「お、俺達もその獲物を捕まえないと帰れないんだ。だから少しの時間でいい、この森に入る許可をくれないか」
ドラゴンは鼻息を荒くし、牙を剥きだしながら二人へと顔を近づける。
『血の匂いがする。それも二人分』
その言葉で二人が苦虫を噛み潰したような顔をしたその瞬間、勢いよくアルスの爪が二人の喉元にに突きつけられる。二人は反応する事も出来ず、首から血がつっと流れ落ちる。
『少女の両親を殺したのはお前たちなんだな。何処で殺した』
黙り込む二人の首に爪がグッと食い込む。
「む、向こうの林の中にぃっ!」
「は、ひっ、こ、殺さないでくれぇ! 命だけは、命だけはあああっ!」
涙を流して必死に命乞いをする二人を蔑みながら、アルスは卑劣な二人を見下ろす。
『少女の両親も同じ事を言ったはずだ。娘が待っている、助けて、殺さないでと。
だが、お前たちは助けなかったのだろう?』
「やめーー」
ヒュンという音とともに二人の頭が地面へと転がり落ちる。
『魔物の餌になってろ』
アルスはそう吐き捨て林の中へと姿を消した。
男が言っていた林を探してみると、男の言った通り、遺体が無造作に転がっていた。土が掘り返された跡があるので魔物が掘り返したのだろう。
その光景に心が痛み、爪を地面へと突き立てる。
アルスはローブを被り人化すると「アースフォール」と詠唱し、遺体を地面深くへと埋める。
これで魔物が掘り返す事も無いだろう。
「娘さんは俺が無事に送り届けます」
一輪の花を添えてアルスはドラゴンへと戻ると空高く舞い上がった。
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