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フドルの言動


フドルが治めるシャトラナの領土でドラゴンが暴れていると通達を受けた竜騎士ガナドーラは、シャトラナへと到着した。

そこで目にしたのは、森の中央が海岸から焼け焦げ消失している光景だった。


「これは一体どうなっている・・・」


目の前の光景に息を呑み、さらなる情報を求め街へと降り立つ。

皆門の外に避難しており、黒煙の上がるフドルの屋敷を見ていたが、竜騎士が現れた事で皆青ざめて後退る。

その人混みの中をかき分け、兵士が竜騎士の一人、ガナドーラへと駆け寄る。


「大まかでいい、状況を報告せよ」


「はっ、フドル様の屋敷で結婚を祝う為の前夜祭が行われていたのですが、その前夜祭が終わった後に反逆者達が謀反を起こしたようです。

そして、その後三匹のドラゴンが街に現れて暴れ回ったようでして、今は何処かへ行ってしまいました」


「謀反だと? 前に報告があった閃光の魔女か。それよりも、三匹もドラゴンが現れた? こんな街中で縄張り争いなどあり得ない」


ドラゴン同士が縄張りを巡って争い合う事は珍しくはないが、このような人の多い場所に現れる事はない。

普通はドラゴンにとって居心地の良い山岳や森林などを、どちらが住むか決める為に奪い合う。人の多い街を縄張りにしても、ドラゴンにとってなんの特にもならないのだ。


「そのドラゴンなのですが、真っ赤に燃え盛るような真紅の色をした四本角のドラゴンと、淡く青に染まった色の捻れた一本角のドラゴン、全身白銀色で鳥の様な翼を持つドラゴンが確認されております」


その言葉を聞いた竜騎士達がざわつき始める。


子どもでも知っている。四本角で真紅のドラゴンと言えば炎を司る炎帝竜だ。

そして青いドラゴンの特徴を考えれば水帝竜に間違いないが、お互いが争うなど聞いた事がない。

そして、どの帝竜とも特徴が一致しない新たな白いドラゴン。

これは今一度帰還し、対応を検討しなければならない。


「ところで、領主は無事なのか?」


「無事と言えば無事なのですが、お会いになった方が分かるかと」


ガナドーラはドラゴンを他の竜騎士に任せ、フドルが擁護されている場所へと向かう。


街の人々を避難させる為に作られた簡易のテントが集まる避難所の一番奥のテントにフドルはいた。

毛布に包まれ、まるで小動物のように震える姿を見たガナドーラは、ただ事ではないと悟る。


「ご無事でなりよりです。しかし、一体何があったのですか?」


ゆっくりと近づき語りかけるガナドーラだが、フドルは毛布に包まったまま虚ろな目で一点だけを見つめており、ガナドーラに反応すらしない。


ぶつぶつと小声で何かを話しているのを見て、ガナドーラは耳を澄ましてみる。


「ーー許してくれ、我が悪かった。

もう、許してくれ、そんな目で見るな。我は言われた通りに動いただけなのだ。あぁ、消えない、死人の顔が消えない、我を許してくれ、お許し下さい、どうか、お許し下さいーーー」


「これはーー」


「地下牢に兵士や使用人と一緒に閉じ込められていたようです。

その後にドラゴンが暴れたらしいのですが、地下牢に入れられる時にはこのようになっていたと報告がありました」


「ふむ、これでは詳しく話を聞くのは難しいか。反逆と帝竜騒ぎとはまた面倒な事だ。

しかし、今は構っている時間はない。これを街中に配ってくれ」


ガナドーラが差し出した紙を受け取った兵士は紙に書かれた内容を見てゴクリと唾を飲み込む。


「早急にシュトラールの王子を引きずり出さなければ、我々の首が飛ぶ事になる。

皇帝ヴェルゲイド様には時間がない、急ぐの

だ」


「はっ」


兵士は敬礼しテントを出て行った。


「我ではない、お主を殺したのは我ではない、許してくれーー」


震えながら許しをこうフドルを哀れに思いながら、その場を離れようとした時だった。


「我ではないのだ。信じてくれ、シュトラールの王子ーー」


ガナドーラはハッとして振り返る。


「今、なんと仰いましたか?」


しかし、フドルはまた許してくれと同じ言葉を繰り返すだけとなり、ガナドーラは舌打ちする。


「くそっ、役立たずが」


ガナドーラはテントを出て竜騎士達の元に戻ると、竜騎士達の他に兵士も集めた。


「今回の反逆の件は王子が関わっていた可能性がある。我々は街の上空からの捜索と街の周辺を探す。お前達は街の中を隅々まで探せ。後、捜索用の魔物も通常よりも多く導入しておけ」


「はっ!」


兵士達が街の中へと入って行き、竜騎士達はガナドーラの掛け声と共に上空へと飛び立って行った。

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