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ふかふかのもふもふ


「良かった、ご無事で何よりです。

えっと、水帝竜様と・・・アルス様、なのですか?」


一番見られたくない姿を晒してしまたアルスは声も出す事が出来ず、口をパクパクしながら頭の中でどう言い訳しようかフル回転させていた。


『ティーネさん! 迷子になっていた所を助けたとでも言っーーーー』


「そうですが、今は魔力を使いすぎ人の姿になれないようです。しばらくすれば人になれますよ」


この言葉でアルスの頭は真っ白になってしまい思考停止した。


「やはりそうだったのですね。

何となくですが気づいていました。アルス様、もう隠さなくてもいいのですよ?」


気づかれてたのか。仲間の元に帰ったみたいな事を言ったあの時から気づいていたなら、相当恥ずかしい。あぁ、穴があったら飛び込むから誰か埋めて欲しい。


ふわふわの毛に包まれた手で顔を隠しながらブンブンと首を振り、最後にはうなだれる姿にくすりと笑うギルティ。


「皆さんはこの街の中にある隠れ家に集まっておられますので、話はそこで致しましょう」


どうやら街の中に隠れ家があり、そこから地下へと降りて行けるみたいだ。

帝国もまだこの騒ぎの元が街中にいるとは思わないだろう。灯台下暗して所だな。


エーレムの部下も一緒に探してくれていたようで、五人程が後から合流して来た。他にもいるみたいだが、大人数で動くと不審に思われるので、後から向かうとの事だ。

なので、ギルティとティーネ、自分の三人で夜明け近くの街中へとこっそりと戻り、路地裏を抜けて行く。


自分で歩くと伝えたものの、抱き抱えて歩く方が速いからと言われてしまい、挙げ句の果てには今の姿のアルス様を触ってみたいと言われ、渋々ギルティに抱えられていた。

早く魔力回復して欲しい。


「よく私達があそこにいる事が分かりましたね」


「はい、エーレムさんがアルス様が何処から出て来るのか分からないので、門近くに何人かお仲間さんを配置して下さったのです。

左腕に白のバンドを付けていますのですぐに分かるはずだと。

でも私の場所に出て来てくれて良かったです。その姿では誰も気が付かないと思いますので」


確かにそれは不幸中の幸いだった。

まぁ、左腕に白のバンドを付けてくれているなら、別の場所に出ていたとしても気づけるだろう。

やはり先導者としてエーレムは実力がある。


路地裏を進むにつれ、アルスは何故か急に眠気に襲われる。


昨日から動きっぱなしだったアルス。

ジャファールとの戦闘で夜も眠れず、辺りも明るくなり始めもうすぐ日が昇る時間に差し掛かろうとしていた。


ギルティ達も一睡もしていないはずだ。俺がこんな所で眠ってしまう訳にはーーーー


「アルス様?」


ギルティの腕の中でスヤスヤと眠ってしまったアルス。

ツンツンと突いてみたり、頭を撫でてみるが、それでもアルスは起きなかった。


「あれだけ魔力を使っていましたし、早く回復する為に身体が強制的に休んでしまったみたいね」


ギルティは起こさないようにしながらも、もふもふと頭アルスのを撫でながらエーレム達の避難した場所へと向かうのだった。




気がつくと、アルスはふかふかのクッションの上に乗せられていた。

部屋に窓はなく、魔法石で作られたランプが部屋を明るくてらしていた。

グッと伸びをしてから大きな欠伸をしたアルス。


よく眠ったな・・・じゃない!!

今は何時だ? この部屋は? 隠れ家に着いたのか?


辺りをキョロキョロ見回すと、丁度ドアが開かれ入って来た若い男と目が合った。

丁度良かったとクッションから飛び降り、トテトテと近づくが、男は顔を青くさせ悲鳴をあげた


「ひゃあああああ!?

ど、ドラゴンが目を覚ましたぞ!! 誰か、誰か来てくれえっ!!」


男の様子にアルスは安堵する。

王子、おはよう御座います。よく眠れましたでしょうか? 何て言われなくて良かった。この反応が本当だよな。


声を聞いたギルティが慌てて部屋へと入って来ると、いきなりアルスを抱き抱えた。


「大丈夫です。ほら、噛みませんから。牙もこんなに小さくて可愛いですし、爪も鋭くないですよ? 肉球だってあります!」


いきなり部屋に入って来たと思ったら、頬を引っ張られ手を掴まれ言いたい放題言われるアルス。


もう、もう許して下さい。


アルスが涙目になりながらギルティを見上げる姿に、ハッと我に返る。


「ほ、ほら触っても大丈夫ですよね? アルス様ーーーじゃなくて、王子ーーーでもなくて、えーっと・・・白いから、シロ?」


その言葉が一番深くアルスの心を突き刺す事になるとは思いもよらず、ギルティはアルスを男へと近づける。


「ほ、本当ですか?」


男は言われるがままそっと手を伸ばして来たので、アルスは頭を撫でさせる振りをしてから、そのままパクリと男の手を食べた。


「うぎゃああああ!! 手ガァあああ!」


慌てて飛びのき、噛まれた手を押さえながらゴロンゴロンと転がる男。

牙も突き立てない程度の甘噛みだったのだが、あまりの反応にアルスもやり過ぎたかと少し反省する。


「もう、意地悪しないであげて下さい!

後は私が致しますので、ゆっくりと休んで下さい」


男をなだめながら部屋の外へと連れ出していった。


こっちの方が傷ついたんだけどな。

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