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再戦


グオアアアアアッ!!と咆哮を上げ、深紅の鱗に四本の角が特徴的なドラゴン、炎帝竜ジャファールがアルスの前へと降り立つ。

右の胸にはアルスのライトグングニールによって作られた大きな傷跡がくっきりと残っていた。


いつでも動けるようにライトグングニールを両手に構える。


それを見たジャファールは顔をしかめながら、念話をする。


『忌々しいものを持ちやがって。お前の中にある黒い炎が印として残っている限り、お前はおれから逃げる事はできねえぞ』


「逃げていたんじゃない。国の民たちを助ける為に戻って来たんだ」


アルスの言葉に呆れたようなそぶりを見せる。


『まだそんな甘ったれたことを抜かしやがるか。お前のその姿は、国を潰したドラゴンだろ? お前を受け入れてくれる場所なんざもう無えんだよ。あれから全然成長していねえなら、再教育が必要みたいだな』


ジャファールの振るった爪がアルスへと襲いかかる。槍で受け止めるが、後ろへと吹き飛ばされてしまい、受け身を取り体勢を立て直す。


『面白え、いつまでその姿でいられるか試してやる』


口から灼熱の炎が吐き出される。

それをリフレクションで防ぎ耐えるアルスだったが、炎が目の前を覆い尽くしている間にジャファールに背後を取られてしまう。


大きい割りに素早いっ。


アイシクルフリーズと唱え先の尖った氷が、ジャファールへと放たれるが、難なく身体に炎を纏わせ突っ切って来たジャファールは、大口を開けアルスの結界へと迫る。


出来るだけ魔力消費を抑えようと、それほど大きな結界を作っていなかったアルスは、そのまま結界ごと喰いつかれてしまった。


アルスを咥え、逃げ場のない空へとジャファールは舞い上がる。


『前のようにこのまま落としてやろうか? それとも噛み砕いてやろうか?』


ギリギリと噛む力を強めていくジャファール。しかし、焦りを見せないアルスに違和感を覚える。


アルスが結界を張ったままライトグングニールを喉へ打ち込もうとしているのを察知したジャファールは、アルスを空中へと放り投げた。


放り投げられたと同時に、ライトグングニールをジャファールへと放つ。


一直線に放たれた槍は、ジャファールの腕を掠め地面へと突き刺さると、そのまま光となって消えた。


気が短くプライドの高いジャファールにとって自分の身体を傷つけられるのは腹立たしい事である。

それも同じ相手から二回目となると、怒り狂わせるには十分だった。


『二度も俺に傷を負わせやがってっ!!』


グルアアアアアアッ!!


咆哮を上げアルス目掛けて突っ込んで来る。

それをアルスは見逃さなかった、と言うより待っていた。


ジャファールを切れさせれば、怒りで我を忘れ何も考えずに飛び混んで来る。

そう踏んでいたアルスは、ブリーズを唱え自分の身体を風魔法を使って押し上げると、ジャファールを闘牛を交わすかのように避ける。


そして、すれ違いざまに勢いよくジャファールの背中へと槍を深く突き立てしがみついた。


ギャガアアアア!?


背中の痛みで我に戻ったジャファールは、アルスを振り落とそうと身体を回転させたり、上昇してから急降下を繰り返す。


『てめえっ、いつまでそうしているつもりだっ! さっさと離れやがれっ』


急降下したジャファールは、森の中を突っ切りながら何とか振り落そうとするが、それでもアルスは離れない。


そこで、岩肌にぶつけようと岩へ突進する。

流石にまずいと、アルスは岩肌に当たるギリギリの所でジャファールから離れた。


お互いに距離を取り体勢を立て直すと、ジャファールは背中に刺さった槍を抜き地面へと吐き捨てる。


『ちょこまかと動きやがってこのガキが』


前よりも成長しているのもあるが、前はセルノラとその騎竜と戦っていた最中だったので、当然魔力も体力も万全ではなかった。

しかし、今回は万全と言っても良いほど身体も軽く動きやすく感じた。


だから気を緩めてしまい、ついこんな事を口にしてしまう。


「この戦いはお互いに無意味だ。前にも話したが、帝国との争いが終わった後にいくらでも協力する。だから今はーーー」


その言葉がジャファールを本気にさせる引き金となる。


『そう言うところがラグシルドと被って気に食わねえんだよっ!!』


ジャファールが勢いよく地面を一踏みすると同時に亀裂が入っていき、マグマが噴水の如く溢れ出てきた。

それはうねりながら次第に蛇の形へと姿を変え、次々とアルスへと襲い掛かる。


数には数で押し通す。


「【アニマクラフト】!」


狼たちが次々と炎の蛇に噛み付き炎を消すが、次から次へと炎の蛇が現れきりがない。アルスはリフレクションと唱えると、大地の裂け目を塞ぐように結界を張り巡らせた。


何とか止めたのはいいが、次は炎が森へと引火し始めた。


まずい、このまま燃え広がればギルティたちのいる街にまで被害が及ぶ可能性がある。


結界を張ったまま次は氷魔法を使いこれ以上炎が引火しないように炎の周りの木ごと氷で覆い尽くすが、止めていられるのも時間の問題だ。


「ジャファールっ、無関係の人を巻き込む攻撃はするなっ!」


『フン、どうせ他人だろ。何故そこまで必死になってんだ。この先に仲間でもいるのかよ?』


気づかれないように平常心を保つようにしていたが、一瞬見せたアルスの挙動をジャファールは見逃さなかった。


『なるほど、この先に仲間がーー』


言い終わる前よりも先にアルスは行かせまいと先手を取る為に動く。

ギルティたちがいる場所へ行かせてしまえば、間違いなく森どころか街さえも火の海と化す。それだけは避けなければならない。


『焦ったな』


地面にヒビが入っていくのを見たアルスは、マグマが吹き出すと思い、慌てて下方向へとリフレクションを張る。


しかし、それはジャファールの罠だった。

気づいた時には、結界のない上方向から深紅に染まった爪が振り降ろされていた。


「っ!?」


咄嗟に身体を捻って直撃は免れたものの、左腕に爪が当たってしまい、傷口から血が流れ出す。

次の結界を張る間も与えず、ジャファールの角がアルスを空高くへと突き上げた。


「がはっ」


一瞬気を失いかけ、大地の裂け目を塞いでいた結界が解かれてしまった。

一気に吹き上がるマグマがアルスへと襲い掛かる。


アイシクルフリーズだけではこのマグマを凍らせる事が難しい。

もっと威力を上げるには・・・そうだ、二つの魔法を組み合わせれば威力が上がるはずだ。


「【ブリザードミストラル】」


氷と風の魔法をお互いに組み合わせる事で、全てを凍てつかせる猛吹雪が辺り一面を覆い尽くす。


バリバリッ! と音を立てながらマグマは瞬く間に冷えて固まり、ジャファールも飛んでいる事が出来ずに地面へと降り立つ。


冷えて固まったマグマを足場にして着地したアルスだったが、立て続けに魔力を使った事によって体力を消耗しており、立っているのも辛い状態だった。

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