表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/70

予知夢


三人をベッドへと運んだ後、アルスはクアイに別室で話がしたいと伝え、二人になったところでヴォルフ王が動き出した理由を聞く。が、クアイはやれやれと肩をすくめる。


「三人を助けた恩人だとしてもそれは教えられない。それに君と何の関係があるのかな? これは僕たちの国の事であって、あまり首を突っ込まない方がいい。と言いたいけど、どうして君はこの情報を知りたいのかな」


「簡単に言えば、帝国からシュトラールを取り戻し、そして帝国をこの手で潰す為。ですかね」


それを聞いたクアイは呆気にとられ口をぽかんと開けていたが、ふと我に帰るといきなり笑い出した。


「あはははっ君面白い冗談を言うね! そう、くふふ、いやすまない。君には悪いけど信じられない話だよ」


どこの誰かも分からない奴に、帝国を潰すと言われても、誰だって冗談だと捉えるだろう。危険なのは承知の上だが、信じてもらうにはこれしかない。


「今からの事は誰にも他言しないと約束してくれますか」


アルスの雰囲気が変わり、全身の毛が逆立つような空気に先ほどまで笑っていたクアイは静かに答える。


「あぁ、約束しよう。獣人族の牙と爪にかけてね」


牙と爪、それは獣人にとっての武器であり誇りでもある。それをかけると言うクアイの覚悟が感じられる。


アルスはそれに答えるように頷くと、頭から顔全体を覆っているフードに手を伸ばす。


フードを取り露わになったのは、目が釘付けになってしまうほど美しい白銀の髪。

そしてゆっくりと仮面を外すと、綺麗な顔立ちに、吸い込まれそうな程青い目がクアイを映した。


クアイは目の前に現れた人物に言葉を詰まらせ動揺する。


「これは・・・まさか君が、でもどうしてこんな所に・・・」


「詳しくは言えませんが、俺は帝国を潰す為ならどんな事でもするつもりです。ヴォルフ王が俺を見つけようとしているのは何故ですか? 」


クアイは腕を組みながらしばらく考えていたが、尻尾をダラリと垂らし、君がそこまで本気なら仕方がないと首を振り、盗み聞きされないよう小さな声で話し始めた。


「ヴォルフ陛下は、最悪の事態を防がなければならないと仰られていました。

陛下のご息女であるリアンヌ姫様は予知夢を見る事ができ、そして帝国の恐ろしい計画を知ったんだ」


「予知夢で見た恐ろしい計画? 」


「ええ、リアンヌ様が見た予知夢は、かつて世界を焼き尽くし、そのあまりの力に恐れられた【災厄レムレス】の復活です」


災厄レムレス。

伝説として語られる程の昔、一匹のドラゴンが暴れ回り、世界を焼き尽くした。しかし、結界魔法に長けた者が現れた事によってレムレスは封じられ、今も世界のどこかで眠っていると言われている。


もしそれが復活したなら、帝国どころかこの世界全てが破壊されてしまう。


災厄レムレスの封印には誰も破る事が出来ないほど強力な結界が使われたと言われている。だから俺の持つ【ライトグングニール】の力が必要だったのか。


「君が復活の要となる事を怖れた国王は、僕たちに王子を見つけ出し、手を貸すと言って油断させ、城へと招き入れたところで亡き者にしろって言ってたけどね」


「計画を知られた今、城に連れて行く必要はない。すぐにあの世に送ってやるなんて言わないですよね」


緊迫した空気にアルスはいつでも剣が取り出せるように構えるが、クアイはニッと牙を見せながら笑う。


「いいや、そんな事はしないよ。仲間を助けてもらった恩は返さなければならないし、それに牙と爪をかけたのだから、噛み付く事も引き裂く事も出来ないよ」


呆気にとられているアルスを見てケラケラと笑いながらクアイは話を続ける。


「さあ、時間が無いよ。検問が厳しくなる前に早く街を出ないとね」


クアイは部屋の本棚をコンコンと叩く。すると本棚がゆっくりと横へ動き、その裏から隠し扉が現れた。


「逃したのがバレたらギルドマスター剥奪の上厳しい罰がある。本当に逃しても良いんですか? 」


「そんなヘマはしないし今回だけだよ。次に会ったら、僕も本気で君と戦わないといけないからその時は覚悟してね」


アルスはフッと笑い、それは避けたいなとクアイに言い残し、扉へと入って行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ